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記事2004年12月3日 1962号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
高等教育の将来像中間報告
「大学とは何か」に活発意見


【大学分科会】
 中央教育審議会の大学分科会は、十一月十八日、千代田区の学術総合センターで第四十三回会合を開き、これまで審議を重ねてきた「我が国の高等教育の将来像(審議の概要)」を中間まとめにするための話し合いを行った。
 同分科会では、九月に審議の概要を発表したあと、日本私立大学団体連合会などの関係団体を始め、産業界や有識者からも意見を聞いてきた。この日の会合で事務局から出された中間報告のたたき台は、これらの意見発表を反映させたうえに、制度部会や大学院部会等の審議を踏まえて記述を追加したもの。また、意見発表で指摘の多かった「高等教育が四年制大学のみを指している部分と、短期大学や専門学校なども含めた高等教育全体を示している部分が混在している」ことについては、記述の修正も行われていた。
 文科省はこれについて三回程度の審議を経て中間まとめとする考えで、この日は、追加・修正された記述に対する指摘だけでなく、将来像のあり方そのものへの意見も含めて、活発な議論となった。
 財政面に関する記述は、将来像全体にかかわる重要な内容であることから「もう少し前にもってきたほうがよいのではないか」との意見、「大学とは」に関する記述の中で、フンボルトやオルテガなど外国の学者の名前が並ぶことについて「それよりも、明治から現在まで、日本の大学改革がどのように進んだかを記述すべきではないか」との意見もあった。
 さらに「すべての意見を盛り込もうとするからあいまいになる。切り捨てるべきものは切り捨てて、すっきりさせたほうが、伝わりやすいのではないか」と指摘する委員もいた。次回の会合は、十二月一日の予定で、今回の会合での指摘を受け、定義のはっきりしないカタカナ語の修正などを行ったうえで、中間報告に向けた審議を行う。

人社、理工、医療系から報告
現代的ニーズに適した教育必要


【大学分科会大学院部会】
 中央教育審議会大学分科会の大学院部会は、十一月十五日、都内で第二十七回会合を開き、学問分野別のワーキンググループから審議の中間的な報告を受け、それを踏まえて今後審議するべき事項を整理した。
 同部会では、課程制大学院の趣旨に沿った教育課程や研究指導の確立、研究者養成機能の充実、実効性ある大学院評価の確立などについては、学問分野別に審議する必要があるとして、三つのワーキンググループ(以下WG)、人社系(伊藤文雄座長=青山学院大学大学院国際マネジメント研究科長)、理工農系(相澤益男座長=東京工業大学長)、医療系(井村裕夫座長=科学技術振興機構顧問・京都大学名誉教授)を設置し、個別に審議を行っている。
 人社系WGでは、大学教員の指導力強化方策についてもさまざまな意見が述べられているほか、研究者として必要な高度な素養の涵養(かんよう)のあり方として、日本の教養人の育成や人生観の涵養に当たるべきとする意見がある一方で、現代的ニーズに適合した教育の実施も必要との考え方などが示されている。
 理工農系WGでは、学士・修士六年一貫プログラムについて意見交換もされたが、これについては、高度専門職業人養成の観点から肯定する意見がある一方、学生の流動性・国際化の推進などの観点で反対意見もある。また、社会のニーズと大学院教育のマッチング方策として、インターンシップをはじめとするさまざまな手法により、社会との関係を意識する必要性を指摘する意見が多い。
 医療系WGでは、臨床系の大学院生が大学病院において大きな労働力になっているという現状について、臨床医学の大学院生は労働者なのか修学者なのかという点についての議論が必要との指摘などがある。
 各WGからこれらの報告を受けたうえで、同部会では、分野別の第三者評価のあり方などについて引き続き審議する。

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