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記事2004年12月23日 1964号 (3面) 
地域振興に貢献 (1) ―― 立教大学
大学や専門学校が地域と連携
新宿区と商工施策を協定
創業支援、経営支援講座開設



 大学や専門学校が地域と連携し、地域振興に取り組んでいるケースが増えている。大学などがその地域の活性化のために、企画・立案し、地域に提案などをする。大学や専門学校は地域貢献の場として、果たしている役割はますます大きくなっている。立教大学(押見輝男総長、東京都豊島区)では、新宿区と連携し、地域産業のために寄与している。廣江彰教授に同大学の地域連携、地域貢献に対する取り組みを伺った。



 平成十五年七月三十日、立教大学と新宿区は区が実施する商工施策について協力協定を結んだ。既存産業活性化や新産業の創出など、地域産業の発展に寄与するために相互協定を行うことが目的だという。
 立教大学の地域連携、地域貢献への取り組みを、廣江彰・同大学大学院ビジネスデザイン研究科教授、知的資源活用センター長、総長補佐はこのように説明する。
 「社会的な課題の解決に大学が協力する仕組みをつくるための試みです。大学は教育と研究のノウハウを持っているので、地域の課題を解決するアイディアや方法、さらに科学的な根拠を提供できます。逆に、大学が社会的な課題を解決することに協力して学び、教育や研究に生かせることもたくさんある。その意味で、協力関係は双方向的な性格を持っています」
 廣江教授が新宿区の基本構想策定委員会委員をしていたことがきっかけで、平成九年には新宿区が資金提供し経済学部に講義科目をつくった。商店街問題をどのように解決するかをテーマに、通産省(当時)の担当者、作家の森まゆみさん、電通のプランナーや神楽坂の商店主などがゲストスピーカーとして教壇に立ち、教室には学生と並んで新宿区の商店主が座った。専門家も学生も商店主も、いっしょになって商店街の問題解決を探るという実践講座だった。
 また、この講座では、学生が新宿区の商店で一カ月間インターンをしたり、受講生のアイディアを商店街でいっしょになって実行する、ということも行われた。
 このような関係が、後に新宿区との商工施策についての協力協定に結実した。協定でうたわれている中小企業活性化支援事業として、新宿区が昨年度から開設した「創業支援講座」、「経営支援講座」に立教大学ビジネスデザイン研究科が協力しているのもその一つ。
 新宿区の産業会館で開講しているこの講座には三十代から六十代までの区民が参加しているが、大学院ビジネスデザイン研究科の院生もアシスタントとして加わり、講座運営に当たっている。
 今年の「経営支援講座」では、業績の伸び著しい新宿地元の伊勢丹メンズ館を取り上げ、売り場ウォッチングや成功要因を分析したり、「創業支援講座」では公開特許情報をを使って新規ビジネスの企画なども行われている。
 「立教大学の特徴は、学生や院生が地域連携に意欲的に取り組んでいることです。大学の社会的な存在価値が何か、という点には多くの議論があると思いますが、大学が積極的に地域に出て行き、地域から学ぶという関係が構築され、そこに教職員だけでなく学生・院生が加わっていることが大切だと思います。立教大学では大学が生み出すあらゆる『知的資源』の社会性を重視しています。『知的資源』を絶えず創り出す営為を続け、同時にそれを積極的に社会に還元する努力を怠らないとうのは当然ですが、この『知的資源』をもって大学が地域や社会に出ること、それが地域や社会の発展にプラスとなり、地域や社会の問題解決から大学にフィードバックがある、という関係を恒常的に創りだすことが大事なのです。」と廣江教授は語る。
 今年の十月四日、「地域が変わる 学びの場が変わる――民学産官の協働ネットワークによるイノベーションに向けて――」と題し、公開講演会が行われ、押見輝男・立教大学総長、清原慶子・三鷹市長、佐藤芳孝・東京都立千早高校長が出席、地域と学びの場を変えていく相互協力の可能性を語り合った。
 押見総長は、大学にとっての地域連携、地域貢献の必要性、重要性を「大学の社会的存在責任を遂行することであり、大学は地域コミュニティーの活性化のために積極的に協力する使命があると考えるべきです。また、そこに参加する学生にとって教育効果が大きい」と語った。
 教育効果の例として押見総長が挙げるのは、学生が高齢者にパソコンを教える「パソコン講座」。最初四人の学生が始めた、豊島区の高齢者を対象とするこの講座には、平成十四年七月現在で二百十六人もの受講生が参加したこになる。講師の学生も五十人を超えた。押見総長は、この講座から学ぶことができた、高齢者とのコミュニケーションが生まれた、という学生の実感を高く評価している。
 押見総長が強調するのは、立教大学が人と人との協働による創造や変革を重視した大学であること。「真の地域連携とは人間性の向上に資するものでなければ続かない。立教大学の強みは人と人、組織と組織、人と組織というネットワークづくりにある」と、同大学の特徴を述べた。

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