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記事2004年12月23日 1964号 (8面) 
ユニーク教育 (138) ―― 同志社香里中学・高等学校
自ら学び考える力を
「経済を学ぼう」テーマに特別授業

生井校長

十一月二十日、同志社香里中学・高等学校(生井武世校長、大阪府寝屋川市)で中学三年生四十人を対象に「暮らしとアジア」をテーマに土曜講座「特別授業―経済を学ぼう」が行われた。講師は阿部茂行・同志社大学教授。阿部教授はアジアの中で日本がどのように理解されているのか、日本の暮らしの中にどのくらいアジアのものが入り込んでいるのか、スライドを通してアジア各国の様子を紹介した。
 「土曜講座は自ら学ぶ力をはぐくみ、また早い段階から自分の進路・将来について考える意欲を持たせようという試みの一環で、今年から試行的に行っています」と、西山啓一教頭は土曜講座の取り組みについて話す。
 同校の生徒は卒業後、ほとんどが内部推薦入学制度で同志社大学へ進学するのが通常だったので、進路指導部はなかった。進路指導委員会を立ち上げたのも昨年からで、生徒に進路について考えてもらいたいという願いが込められている。
 昨年、高校三年生を対象に十回ほど「高大連携講座」の中で簿記の講座を大学で実施したが、生徒からは好評で六十数人の応募があった。「機会を与えれば、生徒たちは取り組むのだということが分かり、自信を深めました」と西山教頭。
 平成十七年度から中高一貫教育の利点を生かした新カリキュラムを導入し、週五日制の学習内容を一層充実させ、「自由自治の精神を大切にして個性を伸ばす」ために、本格的に土曜講座を開設する。
 現在、土曜講座は「アドバンス講座」「ステップアップ講座」「資格取得講座」「教養文化講座」「高大連携講座」が開講されている。
 「アドバンス講座」は国公立大学など他大学や、同志社大学に希望する学部がなく他大学の受験を希望する生徒のための、「ステップアップ講座」はより深く学び、学力アップを図りたい生徒のための講座だ。「資格取得講座」では英語・漢字・数学の検定試験やTOEICなどを目指す。「教養文化講座」では特に中学生を対象に、自分の興味・関心がある講義を受けることができる。また、「高大連携講座」では同志社大学、同志社女子大学に出向いて学部長の授業を受講できるというものだ。
 また、「特別授業―経済を学ぼう」では十月二十日に、当時の竹中平蔵・金融 経済財政担当大臣(現・経済財政 郵政民営化大臣)が、中学三年生と高校生八十人を対象に、「暮らしと経済」をテーマに授業を行った。
 この講座を担当しているのは特定非営利活動法人経済知力フォーラム(跡田直澄理事長=慶應義塾大学商学部教授、事務局=東京都港区)で、「経済知力」の社会教育の一環として、各界のトップで活躍している講師を招き経済の話を通じて、生徒が自ら考える力をつけていくことを目的としている。
 この日の阿部教授の話は、中国、韓国、東南アジアを中心に、吉野屋、ホンダ、トヨタ、ユニクロ、外国人労働者、鳥インフルエンザなど――さまざまな視点から易しく解説が行われた。
 「将来の日本の暮らしはどうなるのかを考えれば、日本だけでは生きていくことはできないのだから、相互依存のネットワークづくり、そして多文化共生の考え方を取り入れていく必要がある」と結論した。その上で、「人間が独自の文化を持っていることを理解し、一緒に生きていかなければならない。その点、日本はまだまだアジアに開放されていないのではないか」と述べた。
 生徒たちは熱心にメモを取りながら、阿部教授の話に聞き入っていた。「話が具体的で、分かりやすかった」「(狂牛病問題で、日本では牛肉輸入禁止の措置が取られたが)タイにあった牛丼屋はどうなったのか、教えてほしいな」など、生徒は感想を話してくれた。その後、グループに分かれて、文化、相互依存、共生、国際機関などについて活発な議論が行われた。


阿部教授の話を熱心に聞く生徒

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