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記事2004年12月13日 1963号 (1面) 
株式会社による学校設置の全国化 文科省は弊害検証まだ困難と回答
特区本部教育部会 問題ないと判断
特区研究開発学校も争点に
構造改革特別区域推進本部の評価委員会(委員長=八代尚宏・財団法人日本経済研究センター理事長)は十二月十日、都内で教育関係等の専門部会を開き、特区に限り認められている株式会社による学校設置事業等の特例措置について、所管庁である文部科学省と評価委員会双方が行った調査報告書をもとに、全国化の弊害の有無等を検討した。株式会社による学校設置事業について同省は実施例が四件と少なく、今年四月または九月に開校したばかりで弊害の十分な検証は困難と回答したが、教育専門部会では弊害はないと判断、近く評価委員会に全国化実施を報告する方針だ。

 この日の評価委員会専門部会は「教育」と「医療・福祉・労働」の二部会合同で進められ、構造改革特区研究開発学校設置事業(=学習指導要領に関係なく自由なカリキュラム編成ができる)、同事業での教科書早期給与特例事業、市町村採用教員に係る免許状授与手続きの簡素化事業、学校設置会社による学校設置事業、校地・校舎の自己所有を要しない大学等設置事業、幼稚園における幼稚園児及び保育所児等の合同活動事業等の特例措置について全国化の是非を検討した。
 このうち構造改革特区研究開発学校設置事業について同省は、(特区を申請した)自治体への調査結果では「成果があった」「少しは成果があった」との回答が多いものの、学校への調査では、「現時点ではわからない」との回答が多く、学校によっては「教科の新設に伴い、従来教科の授業時数が削減されることで従来できていた学習活動ができない」等の問題点も挙げられている、と指摘。最終的には「現時点では弊害の発生の有無は判断できない。さらに時間が必要」と回答した。一方、評価委員会は、同事業を実施中の自治体の六五%で「英語の教師の指導力が向上する」「保護者の学校教育全体に対する関心・理解が深まった」などの効果が見られたと報告した。これに関して一部委員から「(英語の学習量の増加等による)他の教科の圧縮・削減への影響は問題。総合的な学習の時間で対応できる。他の教科の削減のリスクはだれが取れるのか」との意見が出されたが、「その点については文部科学省が(弊害を)立証していなければ考える必要はない」と事務局(構造改革特区推進室)が回答する場面も見られた。
 学校設置会社による学校設置事業については、「開校したばかりで卒業生も出ていないことなどから全国展開の弊害の発生の有無について十分な検証ができない。地方公共団体からも、株式会社を学校の設置主体と認めることについて慎重な意見が多い」と回答。一方の評価委員会は、東京・千代田区など実施中の事業ですべて効果が出ていたと回答。また設置会社の倒産など万一に備え自治体に課せられているセーフティーネットに自治体は強い負担感を感じていることなども紹介した。
 この事業に関して評価委員会は学校の実地調査も実施。調査に参加した一部の委員は、「教育内容が非常に規格化・標準化されており、(教学面で)独立性ある管理組織が全くない。大学として扱うことのメリットがあるのか」とし、また別の学校については、「教員の給与が非常に低くボランティアのようだ。プロフィット・インタレストが働いていない」と基本的疑問を投げかけた。これに対し別の委員からは「大学とは何かは、社会などが決めるもの。(いい加減な学校は)市場によって選ばれない」とし、また別の委員は「(視察した大学の学生は)慶應義塾の大学院生よりも活発だ。しかし教授は企業の一部門のようで学問の自由をもっと持たせるべきだ。ガバナンスを少ししっかりしてほしい」と注文をつけた。これらの事業について、教育専門部会の野中ともよ部会長は、親委員会である評価委員会に全国化の弊害はないと報告する考えを示した。このほか「市町村採用教員に係る特別免許状授与手続きの迅速化事業」「市町村採用教員に係る免許状授与手続きの簡素化事業」について同省は「弊害はない」と回答、全国化の見通し。「校地・校舎の自己所有を要しない小学校等設置事業」と「同大学等設置事業」の全国化には「なお時間をかけた検証が必要」と回答した。

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