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記事2004年12月13日 1963号 (8面) 
第二回大学改革トップセミナー 本紙主催
大学改革の具体的施策

株式会社インボイス代表取締役 木村 育生氏


日本経済新聞社 販売局次長 鈴木 健司氏

 「企業が求める人材の育成プログラム実施における大学改革」をテーマに第二回大学改革トップセミナーが十一月十九日、(主催)全私学新聞、(協力)株式会社プロシード・日本経済新聞販売局、(後援)株式会社オデッセイ コミュニケーションズ・特定非営利活動法人自己啓発支援機構・株式会社ウェストフィールドで、東京・六本木の株式会社プロシードのセミナールームを会場に開催された。四十九大学五十二人の参加。セミナーは第一部が「企業が求める人材の素養と適性」をテーマに三人の講師が、また「IC3・Bpassについて」をテーマに二人の講師が講演した。第二部はIC3とBpassのワークショップが開かれた。その概要を報告する。

【 第一部 その一「企業が求める人材の素養と適性」 】

企業はし烈な競争下に 発想力、判断力が必要
演題 「企業の人材雇用を変える」

株式会社インボイス代表取締役  木村 育生氏

 いま、企業はし烈な競争に巻き込まれている。そのことの善しあしはともかく、企業は競争に打ち勝っていかなければならない。果たして学校は、競争心を生み出す努力をしているだろうか。学校は学生に、自分が何に向いているか自己発見させる努力をしているのか、人の上に立つことを教えているのか、先輩への礼儀を教えているのだろうか。競争に巻き込まれて社会があるのに、それをしない教育でいいのか。早く得意なものを見つけてそれを伸ばす。そして、その個性を持った人を企業はほしい。学校のブランドは企業にとってはまったく関係ない。高卒か大卒かも仕事の上では関係ない。
 逆に言えば、私の会社にとって、何々大学の学生はぜひ取りたいと思うような、個性的な学生の集団、あの大学の学生はどの人も必ず光るものを持っているというように、学校に大きな特徴があれば、その学校から学生を採用したいと思うようになってくるのではないか。
 個性を探すのは高校まで。大学ではその個性を伸ばし、就職というキーワードを意識させて、勉強させてほしい。
 例えば、うちの学校は食品メーカーへの就職が抜群にいいとか、あるいはIT系にたくさん就職しているとか、学生に響くような教育、自分の道を方向づけるようなこともしてほしい。
 社会へ出て企業で働くときに、記憶力というものはほとんど必要ない。記憶力はコンピューターが代替しているから。では、社員に何を求めているかというと、新しく何かを発想する力、何かを解く力、リスクを予測する力、将来を見極める力、上司が何か言ったときに瞬時に理解する力、何か事が起きたときに問題を感じる力、ときには馬鹿な上司に盾突く力、困っている同僚を助ける力、フェアに競争する力、といったものが特に求められている。つまり、学校でそういうことを教えられるかということだ。
 この二、三年内に上場した企業は、まったく新しい技術を持っている。それらの企業を見ると、だれもやっていなかったことをビジネスにして上場した会社はほんの一、二%、残りは既存のビジネスを形を変えて顧客に提案しやすい形にして展開した会社だ。競争の中で小さな会社、小さな店がつぶれ、そうやって大きくなった会社をみんなが称賛している。いいか悪いかではなく、それが現実だということを、学生にもう少し早い段階で伝えていければと思う。
 企業としては、目の輝いている新卒者がほしい。それを育ててくださるのは、学校だと思っている。

演題 「人材と大学のキャリア教育」
日本経済新聞社販売局次長   鈴木 健司氏

 大学がなぜいまキャリア教育なのか。学生が就職を希望しても、満足な形で内定をもらえないからではないか。
 かつての就職協定がなくなり、試験日がばらけてきて、しかもパソコンで簡単にエントリーできるため、どの企業も競争倍率が高い。しかも選考の工夫もあまりないため、一人の人が何社も内定をもらう半面、一社も内定をもらえない人もいる。
 学生の就職活動の方法にも問題がある。パソコン画面とにらめっこしながらという学生が多い。現場を見ない、OBに会わない、その結果、会社研究が不十分なまま、パソコンでエントリーしてたくさんの企業を受けている。
 それ以前に、やりたい仕事がわからない学生が大変多い。
 フリーターが増えていることについては、学生自身にも責任があるが、企業の雇用構造が変化していることにも原因がある。雇用が流動化して、新卒より即戦力の中途採用が増加している。また、雇用形態の多様化も進み、パート、契約社員、派遣社員も増えている。
 そういう意味では、四年制大卒が全員正社員として雇用される時代は終わったのかなと思う。
 しかし、企業もコアになる人材は採用していこうと考えている。
 ではコアとなる社員に何を求めるか。それは問題発見能力と創造力だと思う。雇用振興協会が「今後の若手コア社員に求められる具体的な能力」を調査したところ、第一位は問題発見能力と問題解決能力、二位は担当分野の専門知識と業務処理能力、三位は新しいアイデアおよび創造性だった。ところが、大学からはそういう人材が輩出されてこない。
 その大きな原因として、受験勉強の付けが出てきているのではないか。現在の高校までの教育は受動的な、正解を教え込む教育だ。自分で考える訓練ができていない。「内容知」の豊富な人間は育ててきたが、答えを出す方法を自分自身で発見していく力である「方法知」ができていない。
 いずれにしても、受験教育で入ってきた大学生をいかにして企業が求めるような人材としていくかが重要だ。もっと学び方の工夫・多様性が必要ではないか。知識の獲得、情報収集の仕方、学習成果の発表方法をもっと考えていく。
 そして、自分の頭で考えるキャリア教育を目指していただきたい。
 最終目標は就職試験にうまくパスすることではなく、入社してからほんとうに活躍し、評価される人材を送り出すことではないかと思う。

演題 「情報教育の目標と検定の有効性」

文教大学付属中学高校情報科教諭   堀 恵子氏

 学習指導要領による情報教育の目標は、小学校から高等学校まで一貫して、「情報活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」の三つであり、これによって、高校卒業までにはパンコンを自由自在に使えるだろうということだ。
 中学・高校の教科書の内容を見ると、中学「技術」では、パソコン、情報に関する知識で、高校の教科「情報」は、教科書自体が多数の会社から出版され、執筆者によって内容もかなり異なる。学習指導要領で示された範囲の知識・技能が、浅く広い内容となっている。
 このため、高校において教科「情報」での学習成果を英語検定のような形で検定を行うことは有効である。習得した知識が社会でどの程度に評価されるのか試す機会となり、情報教科を学習する際の大きな目標の一つとなるだろう。
 例えば、中学生や高校生が受験できる情報検定としては、情報処理活用能力検定(J検)、パソコン検定試験(P検)があり、そのほか、CG検定やグラフィック関係のものやパソコン入力コンクールといったものがある。
 今後期待されるものとして、IC3(アイシースリー:Internet and Computing Core Certification)がある。IC3はコンピューターやインターネットに関する知識・スキルを判定する資格で、二〇〇二年より米英、欧州、アジアなど世界各国で実施されている、コンピューターの基礎力を測る認定試験である。
 IC3はコンピューター・リテラシー「コンピューティングファンダメンタルズ」「キーアプリケーション」「リビングオンライン」の三つの分野を網羅し、試験を通じて総合的に判断し、能力認定を行うものである。
 検定試験としては、教科「情報」の授業範囲を越える内容だが、情報関連志望や興味ある生徒にとっては、やりがいがある目標となる。この三つのうち「キーアプリケーション」は練習時間の確保が課題となるが、その他は、一部を除き、机上学習も可能である。世界八十カ国以上で実施されている検定であり、英検に対するTOEICのような位置づけが期待される。

【 第一部 その二「IC3・Bpassについて」 】


演題 「IC3とIC3トレーニング教材とは」
株式会社ウェストフィールド取締役   小松崎 道夫氏

 IC3はコンピューターの基礎、リテラシーレベルの学習について、世界十九カ国で話し合ってつくられたもので、国際的な標準の資格である。この資格を取るとアメリカに行っても通用する。IC3の資格をとるためのIC3トレーニング教材は、基礎だけでなく、段階的にいろいろなものを学んでいけるようになっている。
 では、それを学ぶにはどうしたらいいのかというと、当社で作っているIC3教材は、パソコン上で実践するもので、ホームページを使って行う。学校で集合型で実施することもできるし、個人で学習することもできる。また一部の学習については携帯電話でも可能となっている。もともと当社は携帯電話がコミュニケーションツールだけではなく、ラーニングツールとして活用できるのではないかということで、さまざまな開発を行ってきている。
 まず、管理者・学習者それぞれにID、パスワードが貸し出される。eラーニングというと先生はいらないようなイメージがあるが、先生に管理者となっていただき、管理者はただ教えるだけでなく、学習者の理解度や進ちょく度を確認して、アドバイスをする。
 IC3は、さきほど堀先生のお話にあったように、コースが「コンピューティングファンダメンタルズ」「キーアプリケーション」「リビングオンライン」と三つある。例えば五択問題を解答して、解答状況、採点を自分で見ることもできる。IC3資格取得のためには非常に有効な学習方法である。
 大学の入学時に入学者のコンピューター・リテラシーを一定にするためにはIC3資格を取得することはとても効果的である。大学の合格後、入学までの期間を有効に活用して取得すべきである。

演題 「Bpassとは…」
特定非営利活動法人自己啓発支援機構理事代表 与謝野 肇氏

 いまわが国には大きな労働環境の変化が起きている。企業は終身雇用体制との決別を図っており、転職が一般的になると、最初のキャリアプランが非常に重要になる。充実した人生のためには、自らの強みを発揮でき、自らも情熱を燃やして取り組める仕事の発見が重要だ。
 学生になるべく早い時期から、いかなる人生を自分は送りたいのか、やりたい仕事は何か、そのために自分はどういう能力を備えるべきか、というテーマに取り組んでもらう必要がある。「やりたいこと(wILL)が分かれば能力(SKILL)はついてくる」。そのウィルを見つけるために、私どもはビジネスパスポート・テストとして「Bpassサーベイ」「問題解決能力テスト」「ビジネス基礎知識テスト」の三つを用意した。
 「Bpassサーベイ」は適性診断だ。特徴は、ビジネス上の特性を理解する項目があることで、例えば、ビジネス基礎力、マネジメントポテンシャル、事業構築ポテンシャル、起業ポテンシャルなどが、診断の結果分かるようにしてあることだ。
 「問題解決能力テスト」は、問題解決能力が試されるもので、原因分析問題三問と選択決定問題三問の計六問から成っている。「ビジネス基礎知識テスト」は就職をする、あるいは社会人になるために、最低これくらいの知識が必要だと思われる問題となっている。
 これは、企業にとっても有効で、現在、ビジネスパスポート・テストを採用試験に活用している企業が十四社ほどある。
 企業のニーズと個人のウィルがマッチングすれば、お互いに幸せになるし、日本が元気になる。ぜひ、早い時期から、人生についての問題意識を経験していただきたい。

【 第二部ワークショップ 】

IC3 学生と企業のマッチングが可能に
Bpass 情報リテラシー修得のための教材と資格

 会場を移して行われた「IC3ワークショップ」では、講師として堀恵子教諭、日本大学法学部の橋詰正治講師、株式会社オデッセイコミュニケーションズの中村誠一氏が、また技術サポートとして株式会社デジタルジャケットから川島幸夫・代表取締役と大楽佳世氏が参加。
 進行役として全私学新聞の宮本幸雄が出席。実際の画面を見ながら、IC3トレーニング教材やIC3試験についての説明が行われた。
 また、「Bpassワークショップ」では、講師として鈴木健司氏、持丸聡・ボーズ株式会社常務役員営業本部長、木名瀬武・アメリカン・エクスプレス・インターナショナル株式会社バイス・プレジデント、与謝野肇氏、木村育生氏、清國幸恵・株式会社エイチ・アイ・エス人事部係長、進行役として小松崎道夫氏が出席。
 実際にBpassを活用している企業の紹介と導入した理由などについて、各講師が意見を述べた。Bpassを活用することによって、企業が人を選別するのではなく、人が企業を選別することができるようになる。つまり学生が自分に適した企業と出会うことができ、結果的に適職に就くことが可能となるという説明があった後、これからの大学がすべきことなど会場からも質問が飛んだ。


第一部全体会では5人の講師が発表


第二部「IC3ワークショップ」では試験などについて説明


第二部「Bpassワークショップ」での討議

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