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記事2004年11月3日 1956号 (1面) 
三位一体改革で地方6団体が国庫補助廃止要求
経常費補助等私学助成の必要性を強調
文科省が地方6団体案に拒否
教育条件の低下招く
三位一体の改革に絡んで地方六団体が策定した国庫補助負担金廃止案をのむか、のまないかの回答を内閣官房から求められていた八府省は十月二十八日までに回答書を首相官邸に提出した。このうち義務教育費国庫負担金(中学校分)や私立高等学校等経常費助成費補助金など総額一兆一千四百五十八億円の補助負担金の廃止を求められている文部科学省は、それら補助負担金の廃止には同意できないと回答、一部を除いて地方六団体案に替わる代替削減案の提示も見送った。文科省以外の府省も地方六団体案を拒否。与党・自由民主党でも党の頭越しに進められる三位一体の改革に不満が噴出、独自の改革案を検討する方針で、三位一体改革の行方はますます不透明となった。

 文部科学省が十月二十八日に提出した回答書では廃止対象とされた私立高等学校等経常費助成費補助金(約九百九十七億円)を廃止できない理由について、「同補助金が昭和五十年に議員立法により成立した私立学校振興助成法に基づき、私立高校等の教育条件の維持向上、修学上の経済的負担軽減等を目的に行われてきたもので、都道府県における私学助成の核として、その水準を引き上げる役割を果たしてきたこと、都道府県の財政事情等により私学助成が縮小された場合には、学費の値上げや教育条件の低下、更なる公私間格差、都道府県格差の拡大を招く懸念があり、引き続いての私学振興は必要不可欠であること。したがってその取り扱いは、初等中等教育全体に対する公私立を含めた国の政策推進の観点から総合的に検討し、教育論に立った国と地方の役割などを踏まえて判断する必要がある」とし、同補助金はあくまで必要と主張している。また幼稚園就園奨励費補助金(約百八十一億円)に関しては、「市町村の財政事情等により、就園奨励事業が縮小された場合、保護者負担が増大し、幼児の就園機会が失われ、小学校以降の教育に重大な影響を及ぼすことが懸念される」として就園機会を保障することの必要性を強調、そのうえで、初等中等教育全体に対する公私立を含めた国の政策推進の観点から総合的に検討、教育論に立った判断の必要性を廃止できない理由に挙げている。
 さらに義務教育費国庫負担金及び公立養護学校教育費国庫負担金(中学校教職員分)(約八千五百億円)に関しては、憲法の要請に基づく義務教育の根幹(教育の機会均等、水準の維持向上、無償制)を保障するために必要不可欠なものであり、平成十四年十二月に総務・財務・文部科学の三大臣が合意した、中央教育審議会の検討結果も踏まえ平成十八年度末までに結論を出すとの方針等に沿って三大臣を含む関係閣僚会議の設置を求めている。また廃止できない場合の代替案として現行の総額裁量制の更なる改善を提案している。
 このほか公立学校等施設整備費補助金等については廃止できないとしながらも、地方の裁量度を高め自主性を大幅に拡大する「公立文教施設整備交付金(仮称)」の創設を検討する、としている。
 こうした中で政府は十一月十八日には三位一体改革の全体像をまとめたいとしているが、本質論議を抜きに見直しを急ぐ三位一体改革への不満は高まるばかりだ。
 三位一体の改革に関しては細田博之官房長官の下で九月から十月にかけて関係閣僚と地方六団体代表による懇談会が四回開かれ、十月十二日には私学助成等が取り上げられた。この中で中山成彬文科相は、「これ(私学に関する国庫補助)が一般財源化されれば、地方交付税での十分な調整が期待されない中、財政状況の厳しい都道府県を中心に助成水準の低下や教育条件の低下につながる恐れがある」と指摘。
 一方、梶原拓・全国知事会長(岐阜県知事)は、「私立高校等補助金の補助率は約六分の一と非常に低率で、決定的な役割を果たしているとは思えない」と反論している。
 三位一体の改革の中で地方交付税改革の検討も経済財政諮問会議等で進んでいるが総務省と財務省の綱引きも激しさを増しており、こちらも先行き不透明だ。

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