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記事2004年11月3日 1956号 (6面) 
「子ども心理学入門」
18歳未満の成長過程を心理学的に研究
鎌倉女子大学子ども心理学科 初の概説書刊行
二〇〇二年四月、鎌倉女子大学児童学部に子ども心理学科が開設された。この学科は日本で初めて創設された、十八歳未満の子どもの成長過程を心理学的アプローチから研究しようとする学科である。近年「子ども」を冠した学部や学科の開設が全国の大学で目立つ。こうした動きは時代の要請に対応したものであることはもちろんだが、鎌倉女子大学の子ども心理学科が先鞭(せんべん)をつけたと言いうるのである。
 子どもをめぐる問題が頻発している現在、子ども心理学科の教育に対する社会的期待も高まっているが、このほど同学科が子ども心理学に関する初の概説書として『子ども心理学入門』を北樹出版から刊行した。新しい学問分野だけに学科内容を表現する学問体系がなければならないとして、同大学の福井一光副学長が発刊を企図し、執筆には専攻分野の異なる子ども心理学科の教員七人が当たった。
 全四章からなる本書は、第一章、第二章で子ども心理学創設の学問的背景、社会的背景が説かれ、第三章で子ども心理学の理論的基盤が明らかにされている。その上で第四章では具体的に子どもの理解と支援のためのアプローチを学ぶことができる仕組みになっている。子ども心理学科には「子ども心理学」をはじめ「発達心理学」などの専門科目を開講しているが、それらの領域はすべてこの一冊でカバーしている。従って本書をテキストとして使用することによって同学科の教員は、他の専門科目の教員がどういう講義を展開しているのか把握することができ、自分が受け持つ科目と他の科目との関係付けを授業の中で明確にしていくことができる、と本書の編集・執筆を担当した柴山真琴学科長・教授は話している。もちろん学生にとっても複数の科目の内容を咀嚼(そしゃく)しつつ、それぞれの知見を統合しやすい。
 本書の底流に流れる思想は大きく三点に集約される。第一に、子どもを「子どもの権利条約」で規定されている十八歳未満の子どもを対象として捉えようとしていること。第二に子どもの行動を社会的・歴史的文脈の中で捉えようとしていること。第三に発達心理学、教育心理学、臨床心理学を念頭に置き、子どもを多面的・通時的に理解しようとしていることである。もちろん言うまでもなく、こうした方向性が子ども心理学科の目指すものにほかならない。
 柴山学科長によれば、子ども心理学科の教育内容にかかわる準備、それと並行しての本書の編集準備は○一年秋から始まり、以後何度も会合を持ったという。そうした本書の制作過程そのものが子ども心理学とは何かを教員たち自身が再考する機会になり、いい学びの場であったと柴山学科長は振り返る。
 心理学および子どもをめぐる諸問題に関心を持つ多くの人々に手にしてほしい労作である。
 (鎌倉女子大学子ども心理学科編、北樹出版刊、本体価格二、四〇〇円+税)



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