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全私学新聞

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記事2004年11月23日 1960号 (1面) 
一部の広域通信制高校に不適切な実態
全審連、文科省に改善要請へ
分校≠フ統一基準なく
風俗店隣接も 他県校へは指導権限及ばず
 広域通信制高校の一部で、いわゆるサポート校に教育を丸投げするなど不適切な実態がある問題で、全国私立学校審議会連合会(酒井竕長)は、十一月十一・十二の両日、滋賀県内で開いた総会でこれらの問題を協議・情報交換し、改めて文部科学省に指導の徹底等を求めていく方針を決めた。広域通信制高校は教育活動が複数の県にまたがるため、高校の設置を認可した県が遠方の面接指導(スクーリング)施設の実態を把握することは難しく、スクーリング施設があっても認可県以外には指導監督権がないなどの問題がある。一部の生徒は劣悪な環境での学習を余儀なくされている。

 この日の協議では、埼玉県、京都府、鹿児島県、大阪府、東京都等の私学審委員から広域通信制高校をめぐる問題点等が指摘されたほか、東京都と大阪府の行政担当者から通信制高校の実態や指導の現状等が報告された。
 東京都の行政からは、都で認可した広域通信制高校に関しては、他県に面接指導施設を作る場合、高校といった協力校か自前の教育施設等しか認めていないが、都以外で認可された広域通信制高校のスクーリング会場が都内に作られても、都に指導監督権限がないため、都内ではいわゆる風俗店に隣接するビルの一室をあてているケースや中華料理店の二階といったケースがあること、学習面でも通信制高校に提出する論文指導ではいわゆるサポート校の「教員」が見本を示し、生徒にそれと同じように書かせて卒業させているなどの実態が報告された。また大阪府の行政担当者は、分校の位置づけが明確ではないことから、本来、教育施設であるべきスクーリング施設が自己所有でなかったり、文部科学省の面積基準を下回ってたり、建築基準法を満たしていなかったりしており、万一の事故の際、広域通信制高校は責任を取れるのか、行政の責任という面でも不安だとした。
 全審連が広域通信制高校の問題を協議題に取り上げたのは今年で四年目。これまでに三度、文部科学省に改善を要請してきた。今春には高等学校通信教育規程が改正されたため、私学審関係者は面接指導(スクーリング)施設の全国統一基準や認可県か否かにかかわらず、面接指導施設がある県は域内の施設について一定の指導監督権を持つとの規定に期待を寄せていたが、そうした規定は見送られた。不登校者や全日制高校に適応できない生徒の増加等を背景に、広域通信制高校やそこに通う生徒は増加しており、政府も通信制高校の設置を奨励している。
 しかし同じ高校生でありながら一部の広域通信制高校の生徒は教育上好ましくない環境で勉学を続けている。再三の要請に文部科学省も一部の広域通信制高校に問題があることは把握しており、現在、都道府県関係者を通じて実態の把握に乗り出そうとしている。

東京都からの実態報告
 スクーリング会場として高校と同等の教育施設を持っている通信制もあるが、いわゆるサポート校に(教育を)丸投げをし、教員免許を持っている先生がいるのかどうか分からない中で、そこに通えば提携している高校の卒業証書がもらえるという状況になっているところがかなりある。サポート校の中には風俗店の隣のビルにあったり、中華料理屋の二階がスクーリング会場だといっているサポート校もある。サポート校がすべて悪いといっているのではないが、なかには論文はこう書けと見本を示し生徒に写させているところもある。都内にあるので東京都や私立中高協会に苦情が来る。認可した県を告げても、「私は都民で、東京都に税金を払っていて東京都にある学校に通っているのに」と言われる。基準が一定でない、(認可県以外は)指導権限がないのが問題。都庁の目の前のサポート校でも声をかけることすらできない。

大阪府からの実態報告
 スクーリング会場となってはいるが、分校としての位置づけが明確ではなく、多くは施設面積が文部科学省の基準を下回り、自己所有要件も満たしていない。建築基準法上の規定も満たしていないケースが多い。万一の際、学校法人として責任が取れるのか。

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