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記事2004年11月13日 1958号 (8面) 
【特集】 普及時代迎えたテレビ会議システム
共同研究スタイルの変革も

森 健策氏


平野 俊夫氏

これまで教育分野におけるテレビ会議システムの活用シーンは、遠隔講義が主なものであったが、映像配信技術の急速な進歩に伴って価格面、機能面、操作性に著しい改善が行われるようになった。これにより、他のキャンパスとの情報交換やコミュニケーション、研究室レベルで他の大学や公的研究機関、あるいは企業との共同研究の場で利用されるケースなどテレビ会議システムの活用領域が拡大している。また、教育機関によっては学習・研究面への活用だけでなく事務方の業務コミュニケーションへの応用という事例も出現し始めている。テレビ会議システムの普及にはこれら、機器の改良とともにネットワーク環境の整備も大きな要因であるといえる。ブロードバンドや光ネットワークの学校現場への導入が一般的になるとともに学内のネットワーク整備も進んでいる。これによって学内のさまざまな場所から高速通信が可能となり、映像や音声データを安定して送受信できるようになったことが大きい。このようにテレビ会議システムは飛躍的に普及しているが、ソニー製のシステム(ソニーの呼称・「ビデオ会議システム」以下同じ)を利用して成果を挙げている二つの国立大学の事例とメーカーのコメントを紹介する。
【共同研究の活性化とコスト削減】

打ち合わせ、データ取得に
名古屋・札幌だけでなく多地点利用も

名古屋大学大学院情報科学研究科助教授・工学博士 森 健策 氏

 森助教授が所属する情報科学研究科では特定領域研究として、北海道の札幌医科大学医学部との共同研究を行っている。
研究に伴う会議や打ち合わせは、これまで飛行機を使って森助教授が札幌まで行く、あるいは先方のスタッフが名古屋まで来るなどしていたが、当然のことながら経費と時間がかかる。しかし、同助教授も先方のスタッフも時間はいくらあっても足りないくらい忙しいので、双方が自分の研究室にいながら会議のできるシステムの導入を十年くらい前から検討していたということだ。
 しかし、当時の機器は大変高価なうえに性能面も十分満足できるようなものではなかったため、導入が見送られていた。ところが、昨年になって学内の同僚から安くて性能の良いテレビ会議システムがあるので、検討してみたらどうかと薦められたのがソニーの「ビデオ会議システム」PCS―1だった。
 森助教授が携わっている研究は、人体のさまざまな部分の病理をコンピュータで画像処理して、どのような治療が有効か、また、病理変化を追跡しながら治療にどう役立てるかというものと、気管支鏡のナビゲーション・システムの開発。このような研究を行うためには日常的に細かなデータを取得したり、打ち合わせをしたりする必要があるので、共同で研究を行う機関が遠隔地にある場合は情報の交換やコミュニケーションに「ビデオ会議システム」は大きな威力を発揮する。
 同助教授は「PCS―1はメモリースティックに登録したアドレスを簡単に呼び出すことができ、電話のように手軽に使えて大変便利です。また、カメラの操作もリモコンだけで操作できるので非常に使いやすい。それとコストが一番安いということも導入した理由として挙げられます」と語る。
 また、「ISDNのテレビ電話なども検討したことがありますが、ようやく安定した、コストパフォーマンスのよいシステムがでてきたと思います。現在はテスト段階ですがナット(NAT・プライベートアドレスをグローバルに変換する)対応の機能が装備されているので設定も簡単でわれわれとしてはかなり使いやすいと思います。画像もきれいで、ズーム機能も便利です。現在行っている活用シーンは札幌医科大学と五対三のコミュニケーション(名古屋五、札幌三)ですが、今後は中京大学に転出した同僚も交えた一対一対一ぐらいの多地点利用も考えています」とも語っている。
【大学研究室と公的研究機関の連携】

大阪と横浜の研究チームで情報交換
会議システムが研究一体化

大阪大学大学院生命機能研究科長・医学系研究科教授・医学博士 平野 俊夫 氏

 平野教授は現在、大阪大学大学院で生命機能研究と医学系研究科の教授として細胞内におけるシグナル伝送についての研究を行っているが、この研究事業は横浜にある独立行政法人理化学研究所の免疫アレルギー科学総合センターとの共同研究事業となっている。平野教授の立場も、大阪大学大学院生命機能研究科長であると同時に理化学研究所の「免疫アレルギー科学総合研究センター」内の「サイトカイン制御研究グループ」の責任者でもあり、研究室も大阪と横浜の双方にある。
 研究活動は双方のチームが一体となって取り組んでいるので、日常的に情報交換やディスカッションを行う必要がある。コミュニケーションの手段としては電話やファクス、電子メールなどを活用しているが、お互いに顔を見ながら、またパワーポイントの資料を表示しながら会議ができるシステムの必要性を感じ、PCS―1の導入に至った。
 現在、大阪の教授研究室に一台と隣接するセミナー室に一台、横浜の研究室に一台の計三台のPCS―1がありほとんど毎日使用している状態だ。具体的には双方のスタッフが資料を表示しながら順次自分の研究論文を紹介するセミナーを週二回、定期的に行っている。また、研究の打ち合わせでは必要に応じて毎日のようにPCS―1を活用し、あたかも一つの研究所のような活動を実現しているという。
 平野教授は「PCS―1を使って同じテーマで研究をしている双方の人と毎日ディスカッションしています。月に二、三回は横浜に行きますが、横浜にいても大阪とコミュニケーションがとれるのがありがたいですね。家にも設置したらもっと便利かもしれないとも思います。私としてはこの『ビデオ会議システム』を利用することによって二つの研究室を一体として結びつけ、一プラス一を三にも四にもしたい。このシステムを利用するといろいろなアイデアが双方からでてくる。それは双方にメリットがあると考えています」と語る。
 そして「実際に横浜に行って直接話をすることも大切です。また、このシステムだけでなく電子メール、電話、ファクスも使います。それぞれの媒体で使いやすい特徴があるので状況に応じて使い分けることが大切です」とも語る。
 同研究室では二年程前からテレビ会議システムの導入を検討してきたが当時のシステムは高価であった。PCS―1は価格も低廉で映像・音声の伝送だけでなく双方向で資料のやりとりができるので導入を決断したという。映像のクオリティや操作性に対する評価も高く、理化学研究所の他の研究室からも利用を検討したいとの声が複数あがっているようだ。
【「ビデオ会議システム」PCSシリーズをメーカーに聞く】

小型化とコストダウンを実現
パソコン内のデータも共有

ソニーマーケティング(株)シニアマーケティングマネジャー 武田 有正 氏

 私どもソニーでは「テレビ会議システム」を草創期から手がけ、十数年の歴史があります。電話回線を使っていた当時は、一時間使えば、それだけで数万円かかってしまいます。現在は、インターネットの常時接続が普通になりましたので、いくら使っても通信費は変わらず、ランニングコストは百分の一程度に圧縮されています。機器の価格も当時一千万円したものがPCS―1では七十万円まで大幅にコストダウンしました。このコストパフォーマンスの飛躍的な向上が、普及の要因ではないかと思います。
 機器の重さもPCS―1では二・五キログラムですから専用の部屋を必要とせず、いつでもどこでも使えます。
 また、昔は映像と音声しかやりとりできませんでしたが、今ではパソコンのデータも共有することができます。さらにホワイトボードに書いたものを遠隔地に伝えられます。つまり、打ち合わせをするときに必要なツールが一通りそろっているのです。リアルな空間でしていたことが、バーチャルで可能になりました。
 それから、昔は一対一でのコミュニケーションでしたが、今は多地点の同時会議が可能になりました。これも大きな変革です。
 PCSシリーズは「だれでも簡単に」というコンセプトで、携帯電話並みにスリーアクションで操作が可能です。もっとも優れているのは本体にメモリースティックを差せるようになっていて、プライベートアドレス帳機能があり、これを差し込むだけで、登録した接続先へ自動発信が可能です。
 このように操作も簡単になったことで普及に拍車がかかったといえるでしょう。このように、時代のニーズの変化に伴う新たなコンセプトのもと、ソニーでは「テレビ会議システム」という呼称を「ビデオ会議システム」と改めて、ビジネス展開しています。
 PCSシリーズは装置が非常に小さくなり、コストダウンしたことで、学校現場でも使い勝手が向上しました。以前は遠隔講義でも専門の講義室でメディアセンターの方が手伝ったりして接続する複雑なシステムでしたが、同シリーズの場合は設置場所が特別な教室である必要はなく、インターネットに接続できる環境であれば、どこでも、だれでも手軽に設置・操作できるという特徴があります。
 例えば、明治学院大学では教育現場や学生生活への情報提供や対応を均一的に提供するため、事務局員間のコミュニケーションツールとしても活用されるなど、設置・操作に特別な技術を必要としないPCSシリーズは、講義や研究目的だけでなく事務部門での利用も広がっています。
 当社では名古屋大学と大阪大学へ納入したカメラ、モニター分離型のPCS―1のほか同型の廉価版であるPCS―11に加え、新製品としてカメラ、マイク、スピーカーと液晶ディスプレイを一体化したPCS―TL50を発売しました。これまでは教室や研究室での使用を基準に考えていましたが、これからは事務方の打ち合わせや学生支援の窓口での使用も増加する傾向にあり、ビデオ会議システムの活用領域はさらに拡大していくと考えられます。
 当社はニーズに対応したラインナップと操作性に優れたコストパフォーマンスの高い製品で、ビデオ会議システムの普及に貢献したいと考えています。


森研究室のPCS―1


共同研究に伴う会議や打ち合わせに活用


セミナー室に置かれたPCS―1とモニター


横浜の理化学研究所と毎日ディスカッション

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