こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2004年10月23日号二ュース >> VIEW

記事2004年10月23日 1954号 (1面) 
神奈川県私中高協、県教委を提訴
教委が公立高定員削減の合意破棄
学費公私立間格差は5倍強
県民に学校選択自由閉ざす
 平成十七年度の公私立高校入学定員について県教育委員会と話し合いを進めていた神奈川県私立中学高等学校協会(堀井基章理事長=堀井学園理事長)は、二年前に県教委と交わした約束が守られないことが確実になったとして、十月四日、県教委を相手取って来年度の全日制公立高校の入学定員を一方的に決定しないよう横浜地方裁判所に提訴した。

 今回の提訴について中高協会では「譲歩すべき点は譲歩し、誠意を持って粘り強く合意の順守をお願いしてきたが、県教委は私たちとの合意を無視した決定を強行する姿勢を変えようとはしていない。県教育の最高責任者であり教育者の手本となるべき教育長が約束を守らないということは許されないことだ。公費の違いにより学納金の格差が公私間で五・二五倍、高校三年間の額にして百四十九万円も違うという不公平な状況下で、県教委が双方の合意を平気で破る姿勢を続けるならば神奈川県内の私学は公教育の舞台から姿を消していくことになる。同時に県民等の学校選択自由への道を閉ざすもの」と話しており、「十月二十八日に予定されている公立高校の定員発表までに解決の道筋が見えなければ本訴に持ち込まざるを得ない」とも話している。
 事の発端は、県教委側が二年前の十五年度入学定員を決める設置者会議(公私協)の席上、公立高校枠を三百十五人増やし、私立枠を六百人減少するという計画を提示、私学側に了承を求めたこと。生徒減少期の中で厳しい経営を続けている私学側にとって県教委の提案はとても納得できるものではなかったが、十六・十七年度については公立側が前年度からの減少分に加え四百人程度の減少を引き受けるとの約束をしたことから両者間で合意が成立した。
 しかし十六年度、両者間の合意は完全履行されず、十七年度についても合意が反故(ほご)にされる状況となったため、中高協会側は最終の手段として提訴に持ち込んだという。
 中高協会の提訴発表後、県教委に動きが見られた。曽根秀敏教育長は十月八日の県議会文教常任委員会で「公私立の定員配分と私学助成の二つの問題をトータルで話し合う仕組みを作りたい」との考えを示している。
 高校入学定員枠をめぐる公私間の協議は、各都道府県で行われているが、就学人口の減少が長引くにつれ、話し合いがこう着あるいは厳しいやり取りが展開されている地域は少なくない。私学側が決められた定員枠を満たす生徒数を取れなかったことを理由に教委側が定員枠の増加を求めることもあるが、私学の場合、公立との学費格差が生徒募集の大きな足かせとなっている。学費の格差は、約四倍の公費支出額の違いによるもので、入学定員をめぐる協議はこうした問題を避けて通れないというのが私学関係者の共通認識だ。
 それだけに中高協会の堀井理事長も「安易な妥協はしたくない」と話している。

【解 説】
学費格差解消、県をあげて検討を


 神奈川県教育庁は、私学側との約束を順守しない理由については、今春の入試で公立高校全日制の定員を絞ったことで公立に入れず、しかも学費の面から私立にも入れない生徒が多数出たためと説明する。
 しかしそうしたことは二年前、中高協会と県教委が約束を結んだ時点で、十分予測できたはずだし、私学側が長年要望し県民の願いでもある、「学費格差の解消」が進展すれば私立高校に進む生徒が増え、生徒収容問題は解決へと向かうのではないか。
 公立高校全日制に入れない生徒が多く出ると、公立高校枠の拡大、計画進学率の引き上げといった話が持ち上がることが多い。
 しかし神奈川県の場合で言えば、「神奈川の高校教育に関する県民意識調査」(平成九年七月、県民部県民課調査)の結果から県民は学費という障壁がなければ私立高校への進学を強く望んでいる。もっと早く私学の声に耳を傾け県民が自由に学校選択の出来る仕組みを、県をあげて検討すべきだったといえる。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞