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記事2004年10月13日 1952号 (2面) 
座談会 教育の観点から「三位一体の改革」を考える
国は「私学教育」に対する意思と責任明確に
国庫補助を廃止すれば 私学教育の活力衰退へ

 政府による「三位一体の改革」が大詰めの段階を迎えている。この改革は、地方分権をさらに推し進めるため国からの補助金や負担金を廃止、代わって各都道府県など地方に税源を移譲し、地方の裁量を高めようというもの。同時に地方交付税措置の見直しも行う。
 今年は改革二年目。昨年は約一兆円の国庫補助等を削減したが、それに見合う税源移譲が行われず、地方交付税措置も削減されたため各都道府県は政府に強い不信感を募らせた。そうした背景の中で二年目の今年、小泉総理は国庫補助負担金の削減案を全国知事会など地方六団体に依頼、地方六団体は激論の末に義務教育費国庫負担金の中学校分(約八千五百億円)を含む三兆二千億円の国庫補助金等の削減案をとりまとめた。その中には私立高等学校等経常費助成費補助金(約一千億円)も含まれていた。この三位一体の改革は、政府の経済財政諮問会議を主舞台に検討されているが、義務教育にしても私学教育にしてもほとんど教育論議をすることなく、財政論の観点から進められてきた。こうした点から「数合わせ」との批判の声も聞かれる。
 万一、国庫補助金が廃止された場合、各都道府県が行っている私学助成や私学教育はどうなるのか――。知事の中には国庫補助がなくなっても私学振興の姿勢は変わらないという人がいる。しかし三位一体の改革が財政再建の側面も併せ持っていることを忘れてはならない。
 国庫補助等の廃止と引き換えに受け取れる税源は一部を除いて八割程度とされており、また税源移譲は個人住民税を使って行われるといわれているが、県によっては今までの私学助成の半分程度しか税源が来ないことも分かり始めている。さらに税源移譲による落ち込みを穴埋めするものとして知事らの期待の高い地方交付税に関しては、削減の方向に進んでおり、各都道府県の私学助成の財源は非常に厳しい状況だ。
 そこで与党・自由民主党の保利耕輔・文教制度調査会長と日本私立中学高等学校連合会の田村哲夫会長らにご出席頂き、教育、私学振興の観点から三位一体の改革を話し合って頂いた。(編集部)
【座談会出席者】
 保利 耕輔
 自由民主党文教制度調査会会長・衆議院議員
 田村 哲夫
 日本私立中学高等学校連合会会長
 吉田  晋  =司会=
 日本私立中学高等学校連合会副会長 
 近藤 彰郎
 日本私立中学高等学校連合会常任理事
(敬称略・順不同)

私立高校等の教育に国が支援
米英など世界的な趨勢


 吉田 私ども私立学校といたしましては、三位一体の改革により、私立学校を選択しようとしている子供たちに危機が来るのではないかと心配しております。そこで、今日は、保利耕輔先生のご意見をうかがいながら、私ども私立学校と、父母の願いをお話しさせていただきたいと思います。最初に、田村先生から、お願いします。
 田村 三位一体改革という国の改革のための試みを、私どもは高く評価していますが、教育に対する対応の仕方が間違っている、というのがわれわれの主張です。現在、国が私立の高等学校以下の教育に対してなんらかの支援をするということは、今世界がやろうとしている流れそのものだと思います。例えば、アメリカではブッシュ教育改革の柱が「ノー・チャイルド・レフト・ビハインド(NCLB:すべての子供を助ける)法」という仕組みの法律でして、地方の権限が非常に強いアメリカでも、高校以下の学校に対して連邦政府が教育のテーマについて、きめ細かく援助するという法律です。
 イギリスでも、地方分権・学校自治が強いところなのですが、ナショナルカリキュラムということで、いろいろな誘導的措置を工夫してやっています。ドイツでは、地方分権がいき過ぎて国として大問題だというので、国全体の教育の質の低下ということもありまして、今、分権をどう直すか、国がどう関与するかが議論されています。
 こうした中で、私学助成という国の仕組みをなくすということが、三位一体の改革の中に入っていることは、世界の流れからいうと逆の方向である。なんとかこれは残していただきたい。
 保利先生は正に自民党政権の教育・文教についての基本的な考えを立てられる立場ですので、これについて具体的にご意見をいただければと思います。

3兆円の補助金削減
切りやすい教育を狙い撃ち


 保利 三位一体改革の問題については、一つの考え方としていいのではないかと思いますが、やり方については疑問を持たざるを得ません。特に、法案の修正や廃止という問題にからんでくることもありますので、まず与党に対してご相談があって、その上で補助金整理の内容を政府と与党で決めるのが筋ではないかと思うのです。
 まず三兆円の補助金カットという総額部分を決めて、その内容は知事さん方が決めてくださいという、そういう投げかけ方をしたこと自体に疑問を持っています。結局、一番切りやすいのは、教育ということで強引にとりまとめをされた。もちろん反対意見が相当ありましたし、知事会のみなさん方は相当ご苦労なさったと思います。
 その中に、教育関係が十五項目、一兆一千五百億くらいの数字になって、この補助金をカットしてよろしいです、というのが知事会。そしてそれが広がって地方六団体、つまり知事会、県議長会、市長会、市議会議長会、町村長会、町村議長会の共同の形で政府に提言されたということです。その中に、私立高等学校等の政府からの補助金は廃止の対象にしてよろしいということを言っておられるわけです。
 とはいえ、教育の問題ですから、知事さん方はおろそかには扱わないだろうという考え方も分からないではありませんが、実際、地方の財政状況はそんな甘いものではなくて、背に腹はかえられないという思いで高校以下の県の補助を切っていくことが考えられますので、私どもは、知事会が決めたからといって鵜呑(うの)みにするわけにはいかない。
 まして、法案の修正作業あるいは予算の審議等で国会にこの問題が掛かってきたときに、知事さんのおっしゃることだからと鵜呑みにしたら、国会というのは一体なんなんだということになりますし、政府の言いなりに国会が動くという姿というか、国会に相談なしに政府が決めたことを国会が丸飲みにするということであれば、それは国会の権威が全く失われることになる。
 そういう意味で、まず与党に相談すべきが筋だと思います。
 約一千億円を上回る高等学校等以下の私学助成をどうやって守るかが、今後の大きな課題であります。自民党の中の文教制度調査会、文部科学部会等々で会議を開き、こうした問題についてきちんと討議したいし、これから予算編制時期にかけて、新大臣と協力をして私学助成を守りたいと思っております。
 非常に難しい状況で、私は土俵際に追い詰められているような感じがするのですけれども、これは国民の声で跳ね返していかなくてはならないと思っております。

都道府県で格差拡大
教育水準維持は国の責任


 近藤 ただ、これから先のことを考えても、私立学校振興助成法ができて、いままでの三十年の流れ、私学助成の意味といったことを政府の中で分かっていらっしゃるのでしょうか。
 保利 私学助成については、予算の折衝項目の中では非常に大きな項目の一つになっていて、ということはそれだけ政治的関心が高いということですから、私学助成が大事だということはみんなよく分かっているはずです。三位一体問題がこれから党の中でどういう展開になるかちょっと分かりませんけれども、かなり各論反対的な動きは出てくるだろうと思います。
 例えば、治山治水にかかわる問題などは、全国のほとんどの市町村長さんから補助金廃止反対の陳情が来ています。
 吉田 われわれが一番危惧しているのは、私学助成の基本となる経常費助成費補助金がなくなったときに、各都道府県で格差が広がってくるのではないか。
 都道府県の財政が厳しくなってきたときには、公立学校は県が運営しているので当然優先されますので、どうしても私学は二の次になってくるのではないか、ということです。ナショナルスタンダードというか、日本の教育の水準がある程度維持されるためには、基本的部分はやはり国が責任を持たなくてはいけないのではないか。教育の最低限の基準をどこが守るのだろうか、という疑問を抱いてしまうのですが。

教育の多面性から
私学の存在大事


 保利 三兆円の税源が移譲されるけれども、都道府県単位で、どういうふうに配分されるのかについては、データとして出ていない。
 だから、切られたら、八割あるいは十割来ると思い込むのは大間違いであって、塊(かたまり)で来た税源の中から教育費を知事さんがねん出しなければならない。
 今までの実績とは関係なしに、いらないと思ったら切る、大事だと思ったらほかをカットして付ける、それは知事さんの自由であると。知事さんが、われわれの自由にやらせてくださいというのは、そこなんですね。
 さらにうちの県にはいくら税源が来るのか、それで何と何を措置しなければならないのか、そういう議論なしにこの数字を出しちゃったということは、非常に大きな問題だと私は思いますね。
 教育の多面性を考えると、私学の存在は非常に大事だと思っているのですけれども、だから、それを国として保護していく、あるいは助成をしていくために、私立学校振興助成法に基づいて、五〇%まではいかないけれども、ある程度の助成ができている。それに基づいて私学が活発に活動することができる。その意味というのを、非常に大事にとらえなければいけないだろうと、私はそう思っています。
 ただ、私学はまあ一千億円じゃないかと、置いていかれる可能性がある。
 そこをどう存在感を出していくかというのは、非常に難しい。義務教育の方でも、言っていることは分かるのだけれども、しようがないじゃないかという雰囲気があるものですから、その上に私学の高校以下だと一千億円ということで、どうやってこの重要性を表現するか、ここら辺はわれわれの悩みです。

教育論はしっかり
全国大会など開き国民運動へ


 田村 この問題を跳ね返すために教育論をしつこく言って、運動をしていくことが大事だと思っていますので、この座談会記事をきっかけに、署名運動から始めて、全国集会を十一月五日に向けて準備を始めているのですけれども、大衆運動まで広げていこうと考えて、始めています。
 吉田 地方交付税不交付である東京の立場で、近藤先生はいかがお考えですか。
 近藤 東京は、高校でいうと私立が二百四十校、公立が百九十数校、要するに公私が一体とならないと教育を賄えないという状況があります。
 その中で、九月二十二日の総決起大会で、保利先生が私学振興助成法第一条「目的」を読み上げられましたけれども、大会に参加していたわれわれ教職員も父母も非常に感銘を受けたと言っておりました。それは、この法律に書かれていることがすべてなんですね。いわゆる父母負担の軽減ということもはっきりとうたわれていて、われわれはそれに沿って、補助金をいただいて、掛かる費用をできるだけ抑えて、父母負担の部分をずっと抑えてきているわけです。それでも、現在、公立と比べて五倍から六倍の教育費を保護者は払わなければならない。これが、国庫補助制度がなくなった場合、確かな保証はなくなる。
 そうするとこれ以上の、いわゆる地域格差だけでなく、公立私立間格差も生まれてきてしまうのではないかという危惧があります。そうした場合に、いい教育を求めて、私学を選択したくても、経済的理由で全く選べないという人たちが増えてしまう。
 これはやはり日本の社会にとって公平感を欠く。同じ教育を受けられるような状況にするべきだと思います。

国の補助が核、地方で肉付け

 近藤 では公立で全部やればいいじゃないかというと、現実には公立で全部やった方が東京都はお金がかかる。私学助成は、フレーム、核なんですね。国の補助が核にあるので、それに各地方の状況で肉付けをして私学が守られているということなんです。ぜひこれは、お金の問題だけではなくて、お金の問題が子供たちの学校選択に影響してくるところまで行くということをみなさんに理解していただきたいと思っています。

47都道府県体制では本格的地方分権無理

 保利 その理解を各議員に求めるということが非常に難しい。自民党の総務会の中で、教育問題について発言させてくださいと総務会長に頼んで、特別に許されて発言をするときに、たぶん許される時間は十分くらいだと思いますが、そのうちの、おそらく一分間で私学助成の話をしなくてはならない。その時にどういうセリフを使えば一番ぐさっと来るか、並んでいる議員の先生方に、ほんとうに「なるほど」と思わせることができるか、それを考えなければならない。
 みなさん方にぜひお願いしたいのは、各(議員の)先生方は大変忙しいですから、長くやったら駄目です、ズバッと一分間、あるいは二分間、長くても三分間で、問題点が何であって、どういう点が困るか、言葉数は少なくていいから、ぐさっと来るように話をすることがポイントです。そういう戦術をお考えになって、(議員の)先生方の頭の中にたたき込んでいくということが大切です。
 もう一つは僕ら議員が党の最高意思決定機関である総務会などで、(議員の)先生方に分かってくださいと言うしかない。
 そうはいっても仕方がないじゃないか、賛成しろよというのが今までの自民党の動きですけれども、この三位一体に関する限りは、やり方が、知事会に相談なさったところから、ちょっとボタンを掛け違っていると僕は思うのです。この問題というのは、国民のためにならないと思うんですね。そこら辺の理屈付けというのはまだ私も不十分です。「やってみなければ分からないじゃないか」という言葉が必ず出てきそうですから。
 吉田 地方で知事がやるといっているからいいじゃないか、と言われれば終わってしまう、と。
 保利 だけど、それは国会を軽視した言い方ですね。この裏には、地方分権改革推進会議からの意見が影響していると思います。
 ただ、今の四十七都道府県体制ではバランスが取れてない。百万人もいないような県だってあるわけで、そういうところの財政力は極めて弱いですから。道州くらいの大きさになってきたときに初めて本格的地方分権が論じられるのだと思います。今の四十七都道府県体制では本格的地方分権は無理だと思いますね。
 田村 私も全く同じ意見です。分権にした方が教育にお金がいっぱい行くんだなんてことを(議員の)先生方はおっしゃるけれども、実際に知事さんがそんなことをやろうと思っても、できないんですよ、お金がないですから。

国庫補助 国の精神的支えに
助成法以降、私学が元気に


 近藤 全く議論がなされていないまま、財政面だけで判断をされては、われわれは教育を支えていかなければいけないという義務を負っていますが、その責任を果たしえない。首長がそれを全部引き受けるからいいというところもありますけれども、その首長も、いつ代わるか分からない、考え方が違う首長が来られる場合もありますから、担保されるものがない。
 教育は国家百年の大計だと、みなさん感じているわけですから、そのことを基軸に考えていただいたら、私学振興助成法にのっとってやるということは大事なことではないかと思います。
 吉田 保利先生にはこれからも、私立学校の重要性に鑑(かんが)み、いい意味での国に対する応援と、より良き教育を求め子女を私立学校に通わせる父母に対しても、ぜひ応援していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 保利 こちらからも逆にお願いがあるんですけどね。われわれが意外に分かっていないところがある。それは私学の経常費補助の一千億円というのがどういう重みを持っているのか、これが分からない。仮に一千億円を失って、知事さんから八百億円が交付されるとすると、それが学校経営に致命的な影響を与えられるのかどうか、そこがわれわれは分からない。
 田村 二つあるんです。一つは精神的な面です。国が私立の高等学校以下の学校に対して直接考えているんだよという姿勢が、金額の多寡(たか)にかかわらず示されているということです。これは東京にいてはなかなかそういう話が出てこないのですが、地方にいるとよく分かります。私は、東京と千葉に学校がありますが、千葉の学校の立場で考えると、国がそういう姿勢を持っているかどうかというのはものすごく大きいです。というのは、地方の場合には県立優先ですから、私立はあってもなくてもいいみたいに扱われています。私学振興助成法ができて、国が面倒をみるよといってから、私立がやっぱり元気が出てきてどんどんよくなっているのは事実なんです。
 典型的な例でいえば、愛媛県はものすごく県立高校が強くて、甲子園で高校野球が始まって以来、夏の甲子園大会に県立校以外は出たことがない。ところがとうとう今年の春、済美高校が出ました。夏も済美高校が出て、準優勝しました。これなどは私学振興助成法がなかったら考えられないことです。国が支援してくれている、そのことが全体として多様な私立学校ができる刺激になっている。
 二点目はお金の問題です。国が出しているということで県も出さざるを得ないという姿勢が出てくる。これは東京と地方と圧倒的に違う影響ですね。このことは、ある県の知事さんに今年会いましたけどはっきり言っています。国(の補助)がなくなったらどうなるか分からない、と。

私学の方が財政負担少ない
県立増なら県教育費大幅拡大


 近藤 (国の補助は)建物でいえば大黒柱になっているということではないですかね。いくら周りを固めても芯(しん)がしっかりしてないと崩れさってしまうということです。
 保利 おっしゃっている意味は分かるのですけれども、議論というのは情緒論だけでは駄目なんですね。ここが難しいところで。私学助成の十数%がなければ、私立の高等学校以下は全部死んでしまうと、極端な言い方をすればね。(ほかの議員から)そんなことありませんよ、と言われるような気がしてしようがないですね。ですから、あえてそこのところはよく言葉を練っておいていただきたい。ただの情緒論だったら負けます、昨今の経済財政諮問会議等、閣議では。だから、これがないと、極端にいえば、高等学校以下の私学は死ぬという論証をもっと強化していかないと。
 田村 例えば、県立高校は生徒一人当たり百万円以上かけているけれども、私学助成は三十万で済んでいる。それも、生徒は県立があるにもかかわらず私立に入っているわけです。その選択を大事にしてやる。私立は三十万、県立は百万以上かかる、どっちを維持したほうが財政的にいいかといえば、三十万の方がいいに決まっています。私学助成を外せば、仮にその分私立の学費が高くなって、いままで私立に来ていた生徒も県立に行かざるを得ない。そうなったら県立を増やさざるを得ない、結果、県の教育費が膨大になっていく。
 保利 国の私学助成は知事さん方の提案のように切られたとしても、ゼロになるわけじゃない。県を通して出ていくというストーリーで組み立てができているわけで、「だから私学は困ることはないんですよ」という議論が出てくる。現に細川内閣のときに切ったけれども、交付税でちゃんと面倒みていますから。
 今度の場合も私学助成がゼロになるというのではない。そこが難しい。では、それを県費でどう保証してくれるのかと言うと、その「保証」という言葉の裏には、私学助成を廃止することはやむを得ないけれども、どう助成金額を保証してくれるのかという、廃止が前提に立った議論になる。そこは非常に難しい。
 近藤 国庫補助も切られて、県からの補助もそれに見合うものがないものだから、やむを得ず高くします、高くしても私学へ来たい人は来てください、そういう選択をしなければならなくなる。
 保利 すればいいじゃないか、との議論になる。

私学でなければできない教育
三位一体の改革でつぶれる恐れ


 田村 それは国として、私立学校をどう考えるかということにつながる考え方です。ですから、私学は授業料が高くてもいい学校だけが残ればいいと。いい教育をしていて、私立学校でなければならない教育がある。例えば私立学校には問題を抱えた生徒だけを集めて懇切丁寧に教育をしている学校がある。ここには補助金が出てこの教育を支えています。これはまさに私立学校の特徴を発揮して県民の評価が高いということです。非常に高い授業料をとって成り立つものだけが私学ではない。私立でなければできない教育というのが現実にあります。では、そういう教育を公立がやるかというと、やらない。それを、私立は高い授業料を取るいわゆるグリーン車だと、だから行ける人だけ行けばいいという考え方だったら、今の小学校から高等学校までの教育の仕組みは崩壊してしまう。
 近藤 だから今度の三位一体の改革の中で、これが実行されていって、そういうものがつぶれるという事態が来るということになれば、それは知事の責任である、ということになるんですね。
 田村 ただし、そういう生徒は県内だけでなく、県を越えて来るわけです。ですから、そういうことを国がどうして配慮しないのかという声が上がってきますよ。

独自性豊かに発揮した私学
私学が減れば 日本は硬直化へ


 吉田 ですから、そうなればなるほどつぶれる学校が増える。
 田村 私立学校という仕組みは、公教育を支える重要な制度なんだということを国が認めているか認めていないかなんですね。かつては、私学は公教育とは公立の側からは言われなかった。公教育ではない、私教育だと。今はさすがにそんなことは言わなくなりました。その背景には私立学校振興助成法によって国が私立学校を認めて、国費で援助しているから、そういう考え方が普及してきたんです。それが、元へ戻ってしまう。
 保利 そこら辺を(議員の)先生方によく理解してもらうためには、やはり文教の合同会議で少し話をしていただいた方がいいですね。
 田村 それはぜひ、機会をつくっていただければ、喜んでとんでいきますので。
 近藤 全体でいえば、私学というのは、先見性をもって、多種多様、独自性、こういうものをほんとうに豊かに発揮してきた。その結果、私学のやり方が公立にも取り入れられて、学校改革が行われているのは事実です。中高一貫もそうですし、進学重点校もそうですし、帰国生もチャレンジスクールも全部そうです。私学がやって良かったことは全部公立がやる。それは決していけないことではない。私学が減っていったら、日本はもっと硬直化していくのじゃないかなと思います。
 吉田 私立学校がつぶれた場合にどうなるかということも、考えていただかないといけない。いま、ほんとうにそういう問題が切羽詰まってきているというのは事実じゃないかな、という気がするんですけど。
 保利 コップの中で騒いでいてもしようがないわけで、コップを割って外に出ていかないと。
 田村 頑張って、運動を展開していきますので、ご支援よろしくお願いいたします。
 吉田 今日は本当にありがとうございました。

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