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記事2004年10月13日 1952号 (3面) 
私学3団体の要望
国庫補助廃止 教育の質低下招く
多様な教育機会も喪失
 私立の高等学校等(高等学校、中等教育学校、中学校、小学校及び幼稚園)は、国・公立の高等学校等とともにわが国の学校教育において極めて重要な役割を担っており、高校生の約三割、幼稚園児の約八割の教育を受け持つなど、それぞれの学校の教育に対する国民の期待や評価は年々高まっています。正に、その存在なくしてはわが国の公教育は成り立たないと言っても過言ではありません。
 「教育は国家百年の大計である」との言を俟つまでもなく、教育の最終責任は国が負うべきであり、その中で大学から幼稚園に至る「私学振興」は、行政上の所管に拘らず、国の教育施策の重要な柱の一つであります。
 今や、国民教育機関とも言うべき高等学校等において、子どもたちが、その個性や能力に応じて国・公・私立学校の別なく、自らにとって最適な学校教育を支障なく選択できる自由が実質的に確保されるよう、国及び地方公共団体においては、国・公・私立学校間で均衡のとれた適正な財政措置(公費支出)が講じられるべきであります。
 そのためには、まず、私立高等学校等に対する国庫補助制度(私立高等学校等経常費助成費補助金)の堅持及び一層の拡充が是非とも必要であり、それは同時に私立高等学校等教育の振興に対する国の意思と責任を明らかにすることになるのです。
 ところが、現在三位一体の改革が進められる中、教育上の検討も配慮もないまま当該補助金が廃止の対象として議論されていること自体、誠に遺憾と言わざるを得ません。つきましては、以下の理由から、標記の件について特段のご高配をお願いいたします。
 1.国は全国的に一定の教育水準の維持・向上を図るべきである。
 三位一体の改革において、「廃止すべき補助金」とは地方公共団体の裁量に委ねるべき事業に対する補助金である。一方、「廃止できない補助金」とは全国的な視点で大きな格差があってはならず、一定の水準維持の確保が必要な事業に対する補助金である。言うまでもなく、福祉、医療、教育などの分野は、地方公共団体毎にサービス水準の格差を設けることは適当でなく、国が最終責任を負うべき分野である。中でも、初等中等教育分野においては、全国的な教育水準の維持・向上は国の将来に係ることであり、国はそのための十分な財政支援措置を講じるべきである。
 2.国庫補助金の拡充は保護者の教育費負担の公私間格差是正に繋がる。
 現行の国庫補助金(私立高等学校等経常費助成費補助金)は、各都道府県が行う私学助成の核となってその水準を着実に引き上げており、その結果、私学教育の充実はもとより、保護者の教育費負担の公私間格差の拡大を抑制してきた。例えば、私立高等学校の初年度納付金は、近年公立高等学校の約五・八倍で推移している。しかし、格差の拡大は抑制しているものの是正するまでには至っておらず、当該補助金の一層の拡充が必要な状況である。
 3.国庫補助金の廃止は教育の質の低下を招き多様な教育の機会を失うことになる。
 仮に、現行の国庫補助金が廃止され一般財源化された場合、私学助成は都道府県の財政事情や私学教育への取り組み方の違いによる影響をまともに受けることとなり、助成水準にばらつきが生じることが予想される。助成水準の低下は、結果として授業料等生徒等納付金の上昇に繋がり、保護者の教育費負担の公私間格差は益々拡大する恐れがあり、また、教育内容の質の低下を招く恐れもある。その結果、全国的に多様な教育の機会を提供し、かつ、教育水準の維持・向上を図っていくという国としての責務が果たせなくなる。
 4.国庫補助金は私学教育に対する国の意思と責任を明確に示すものである。
 現行の国庫補助金は、私学教育に対する国の意思と責任を明確に示す唯一のメルクマールであり、制度の堅持はもとより、その内容の充実を図ることは教育立国として取るべき当然の措置である。

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