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記事2004年10月13日 1952号 (3面) 
教育に手を抜いた瞬間 国としてのビジョン失われる
日本私立小学校連合会会長 平野 吉三氏
 先日、インドネシアから独立した東チモールの先生たち十六人が私の学校にやってきました。独立してまだ二年余りの若い国からの訪問でした。長年弾圧されてきた東チモールは独立を勝ち得て民主化の道を歩みだしたところです。教員の一人は「私たちの国は若くて貧しい国、国家予算もままならぬが、子どもの教育には投資を惜しまない。将来国を左右するのは子どもたちだからです」。教育政策は百年の計であり、どこの国においても教育は国家の財産となり、国力につながることはいうまでもありません。独立間もない国であろうが、歴史を積み重ねてきた国であろうが、教育に手を抜いた瞬間、国としてのビジョンが失われていきます。今、国と地方の税財政を見直す行財政の三位一体改革で、全国知事会が総額三・二兆円の補助金削減案をまとめ、うち八千五百億円を義務教育費の国庫負担金が占めた。これでは一般財源化によって地域間の教育格差が拡大しかねません。これまで一定の教育水準を維持してきたからこそ、小国日本も人的資源が担保できたのです。GDP(国内総生産)に対する初等教育費を比率でみると、アメリカ三・五%、フランス四・〇%、イギリス三・四%、ドイツ二・九%、韓国三・三%であるのに対し日本はわずか二・七%にすぎません。このように低い数字にもかかわらず教育国家として今日まで維持できたのは、親の教育費負担に負うところが大きかったからではないでしょうか。岩國哲人氏は今回の問題に「教育費の国家負担を軽減しようなどというおろかな発想、これでは教育そっちのけの数字合わせの論議でしかない」と指摘している。方向性の見えない急いだ改革は避けてもらいたいですね。
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