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記事2004年1月3日 1921号 (3面) 
21世紀大学経営協会が発足
高等教育機関の質的向上を支援
資産運用、評価方法 早大など39法人、企業21社等が参加
理事長に宮内義彦氏(オリックス(株)会長)就任

宮内理事長

 昨年十二月四日、高等教育機関の経営等への支援を目的に、「21世紀大学経営協会」が発足。同日、青山学院大学(深町正信院長、東京・渋谷区)の渋谷キャンパスで設立総会と記念セミナーおよび懇親会が行われた。理事長には宮内義彦・オリックス株式会社会長が就任した。宮内氏は政府の総合規制改革会議議長を務めている。副理事長に關昭太郎・早稲田大学副総長のほか、理事十五人、監事二人が就任した。法人会員は三十九学校法人と二十一企業、個人会員は百四十七人。事務局は東京・渋谷区の紀伊國屋書店内に置かれる。

 21世紀大学経営協会は、少子化による定員割れなど大学はじめ高等教育機関の経営環境の悪化が顕在化していることから、その目的を、日本の大学等高等教育機関が諸機能の質的向上を図ることを支援するための調査研究および諸事業を行う、としている。
 事業内容については、(1)年四〜五回の研究会の開催(2)年一〜二回のセミナーの開催(3)経営コンサルティング(経営問題とりわけ資産運用に関するもの)の実施(4)大学事務職員の研修会・人材紹介(5)経営的側面を中心とする大学の評価方法および評価システムへの提言、を挙げている。
 会員名簿によれば、学校法人会員としては早稲田大学や青山学院など三十九法人が、企業では清水建設、紀伊國屋書店、大和証券、三井住友銀行、電通、モルガン・スタンレー証券など二十一社が参加している。個人会員百四十七人のうち、学校関係者では事務局長や経理部・課長など実務担当者の加入が目立った。
 設立総会では、初めに宮内理事長があいさつに立ち、「経済界の知見を借り、大学の改革を実現していく。高等教育の責務は大きい。社会に大きな提案を行うとともに変化へのきっかけをつくる機関にしたい」と設立宣言を行った。
 来賓として出席した合田隆史・文部科学省高等教育局高等教育企画課長は、「経営的側面を重視して設立されており、時宜を得たものであり期待している」と祝辞を述べた。
 引き続いて、記念セミナーとして「大学経営改革 今、何が問われているのか」をテーマにパネルディスカッションが行われた。発題者に宮内会長、パネリストは永田眞三郎・前関西大学学長、野中ともよ氏(ジャーナリスト)、小島明・日本経済新聞社専務で、司会は西田一郎・ICU財務理事。
 キーノートスピーチの中で宮内会長は、「企業経営には目的があり、その目的のために有限な経営資源を投入する。大学も、自分の大学ではどういう人材をつくり出そうとしているのか、きちんと議論すること。そしてそのため(目的)にプランを作り、やってみて検証し、検証した結果、少しずつ微調整をすること。経営資源や評価を見るためにガバナンス(統治機構)が必要だ。企業におけるガバナンスは株主総会であり、取締役会がチェック・アンド・バランスを行っている。しかし、学校ではだれがそれをやっているのか分からない。ガバナンスを作り、人事権が発揮できる組織にしなければいけない」と話した。
 野中氏は、このままでよいと思っている人は一人もいないとして、「パラダイムチェンジが起こっている。インターネットでMIT(マサチューセッツ工科大学)の授業を受けることができる時代となり、世界中、どこにいても学べる。だからこの大学に行きたいと言ってもらえるような大学にする、そういう意識を持たないかぎり、消えていく。偏差値もブランドも何の意味もない。日本の人材を革新していくという意識が必要だ。企業体も変化しようとしている。危機感を持ち、情熱をもってやる人をどう育てるかが問われている」と述べた。

学生、保護者の論理入れた改革
ガバナンスの評価を


 永田前学長は、学長としての経験を話しながら「変えなければならないものが多すぎる。戦後、繰り返し、大学は改革をしてきた。しかし、それは大学側の論理であり教員組織の論理だった。それが改革のブレーキになっている。学生側や保護者の論理を取り入れての改革は最近になってである。これまで大学に経営はなかった。経営と教学は分かれる必要があり、理事長は経営を、学長は教学を担当する、あるいはCEO(最高経営責任者)やCOO(最高執行責任者)を置くこと、理念、方針、目標を設定して経営していくことが必要だ。21世紀大学経営協会には、ガバナンスの評価を期待したい」と述べ、さらに「基礎的学問に市場価値はないが、それに対する評価も重要だ」と基礎研究に対する正当な評価を期待していた。
 小島専務は、「内外の環境が激変している。変わるために必要なのは危機意識。先進工業国時代も冷戦も終わり、世界は改革競争に突入した。従来の産業構造では、均一・画一的な人材が大量に必要だったが、今後は創造性や個性を重視する社会にシフトしていく。これまでは均質な人材を育ててもらうために大学等に国が補助金を投入してきたが、十年以内には税金に依存できなくなるだろう。日本がバブル経済の時代、ハーバード大学などでは人材を探して大学改革を行った結果、よい人材が集まり、成果が出て、寄付が集まった。大学は、大義や使命感だけでは生き残れない。成果がなければ淘(とう)汰(た)される。世界の学長協会が世界の大学の格付けをしようとしているが、日本の大学は裸のまま比べられようとしている。大学は成人人口を忘れている、十八歳人口だけを議論していては困る」と苦言を呈した。
 最後に、司会の西田・財務理事から、大学をどう変えるか、その仕掛けについて問われた宮内会長は、「文部科学省の関与を排除すること、教授会をやめること、学部長に人事権を与え目標設定をやること、適切な学部長を探してくること」と提言した。


大学経営の課題が話し合われたパネル討議

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