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記事2004年1月3日 1921号 (12面) 
ユニーク教育 (124) ―― 大森工業高等学校
「ISO14001」認証取得
地球環境守る学校づくり

井上校長

 大森工業高校(井上皓司校長、東京都大田区)は平成十五年十二月一日、東京・大森の大森東急インで「ISO14001認証取得祝賀会」を開催した。この日、同校が国際標準化機構ISO(International Organization for Standardization)の環境マネジメントシステムに関する規格「ISO14001」認証を取得するまでの報告などが行われ、同校にとっては新たな門出となった。「ISO14001」は学校や企業などのあらゆる面での活動について、環境への影響を評価・点検し、改善を進めるための国際的な基準で、この基準をクリアした団体に与えられる認証だ。同校は校訓「誠実・勤勉・協和・自立」の精神に基づき、「日本の工業を担い、更にこれを推進させることのできる技術者を養成することを目的」とし、工業教育を通して人間教育を実践している。この目標を達成するために、「観念的なことばかりを生徒に教えていては、人間教育、技術教育は実践できない。環境問題に対する知識と実践を備えた工業技術者となる生徒を養成し、未来の地球環境を守る学校づくりを目指す」(井上校長)という方針の下に、「ISO14001」を取得しようとした。
 五人から構成される「ISO推進事務局」が発足、学校挙げての本格的な取り組みが始まった。十四年十二月、井上校長から「ISOキックオフ」宣言が行われ、同校は環境に対する姿勢を示した。それまでも「ISO14001を取得するための産業廃棄物処理システム」を見学したり、企業の説明や講習会にも通ったりした。そして、環境に対する基本方針は決まった。(1)教育活動を通して電気・紙、ゴミの使用減量化に努め、省エネルギー、リサイクルの推進により省資源化に取り組む(2)校内すべての活動において関連法令、条例、協定その他の合意事項を遵守するとともに環境汚染の予防に努める(3)教職員や生徒に対し環境方針の周知を図るとともに文書化し、ボランティア活動を通じて地域の人々と積極的に環境教育に取り組む(4)事務用品・消耗品については、グリーン購入に努める(5)この環境方針は、インターネット(ホームページ)および必要に応じて文書で公開するとともに、環境マネジメントシステムを定期的に見直し、その継続的改善に努める――ことだ。
 同校は病院や特別養護老人ホームで使用されている車いすの整備・清掃、壊れたおもちゃを無料で修理する「おもちゃの病院」の開院、高齢者のためのインターネット教室などを通し、人間教育の場としてボランティア活動を積極的に進めている。
 「ISO14001認証を取得するまでには、コンサルタントを入れて取り組みを開始したが、英文の直訳のようなISOの文章を理解するのが難しいし、環境マネジメントマニュアル(第一―三版)作りが大変だった」(末吉辰教諭)。
 教職員や生徒の意識の面での啓発、また紙・ごみの出し方などでの実践面での訓練をする必要があった。毎日、電力使用量やごみ排出量を記録し、それを一カ月ごとにまとめ、目標値に対して実績値を比較してみる。同様に電力使用量を比較し記録を続け、改善の余地を探るのだ。
 「ISO14001」認証を取得することによって、学校の経費の節約にもなっているが、教職員や生徒の環境に対する意識が変わり始めてきた。
 「具体的な目標値を決めて進めるという方針は、授業面でも表れています。教員は授業を具体的によくしていこうという意識を持ち始めました。この取り組みをしたことで、学校全体が活性化されてきたと思います」と井上校長。同校はボランティア活動、環境に配慮した教育を通して、確実に変わり始めている。


ゴミをまとめている生徒

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