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記事2003年9月3日 1902号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
【大学分科会】
短大、準学士の位置づけ
地域での生涯学習のあり方など


 中央教育審議会の大学分科会(分科会長=佐々木毅・東京大学長)は八月二十八日、東京・霞が関の文部科学省分館で第二十四回分科会を開いた。前回に引き続き高等教育の将来構想(グランドデザイン)についての論点を整理した。また、短期大学や専門学校などのあり方を検討する「制度部会」と「大学院部会」の再開を了承した。
 このうち「制度部会」では(1)大学など研究教育の活性化のための教員組織(2)学部教育(3)短期大学・高等専門学校等のあり方を検討する。
 (1)は▽各大学などの自主性・自律性を基本とした教員組織▽社会のニーズの多様化に対応した教員組織▽若手研究者の育成にふさわしいキャリアパスのあり方を検討項目とする。助教授や助手の位置付けや、意欲・能力のある若手研究者を育成するための多様なキャリアパスなどを検討する。
 (2)は高等学校教育の多様化や大学院進学者の拡大などを踏まえた学部教育の位置付けや修業年限のあり方を検討項目とする。学部での基盤的な教育内容や教養教育・専門教育のあり方、授業方法の改善、専門職大学院での教育との関係などを扱う。
 (3)は短期大学、高等専門学校、専門学校のあり方を検討項目とする。
 具体的には「短期大学」について、女子の四年制大学志向の高まりなど社会および時代の変化に対応した位置付けや、地域に根ざしたコミュニティー教育・教養教育、地域での生涯学習の場としてのあり方、準学士の位置付けなどを検討する。
 「高等専門学校」は、専攻科および大学への進学・編入学を踏まえた位置付けや、実践的な技術者養成という設置目的を考慮した今後のあり方、準学士の位置付けなどを検討する。
 「専門学校」については、ダブルスクールや大学卒業者の入学の増加を考慮し、職業専門機関としての役割も担う今後の方向性などを検討する。
 「大学院部会」では(1)大学院での人材育成機能の強化(2)高度な教育研究拠点の育成を検討する。
 (1)は研究者養成、高度専門職業人養成、学位授与のあり方を検討項目とする。これまでの大学改革の成果を検証し、特に人材育成機能の改善すべき点などを検討する。
 (2)は▽海外の大学を含む多様な大学等との連携の促進▽外国人教員・学生など多様な人材を受け入れる先端的拠点の整備を検討項目とする。
 委員からは「(大学院部会では)論文博士と課程博士について考えるべきだ」「大学は定員をなかなか変更しない。教員や船員などの需要は減っているのに依然と養成している。人材の育成という点から検討してほしい」などの意見があった。


【スポーツ・青少年分科会】
栄養教諭創設の必要性確認
学校内外で食指導の中核に


 中央教育審議会のスポーツ・青少年分科会(分科会長=奥島孝康・早稲田大学学事顧問)は八月十九日、東京・虎ノ門の会館で二十一回目の会合を開き、同分科会内の「食に関する指導体制部会」(部会長=浅見俊雄・国立スポーツ科学センター長)が八月七日にまとめた「食に関する指導体制の整備について」と題する中間報告案を審議した。今回の報告案の柱である栄養教諭制度の創設に関しては、一部委員から反対の声も上がったが、最終的には創設を容認。今後、養成課程等については初等中等教育分科会教員養成部会が検討する。中間報告案に関しては国民の意見を聞いた後、最終報告に向けさらに検討を続けることを確認した。この日は、少年の問題行動への対応策も討議した。
 近年、食生活の乱れが深刻な状況で、健全な食習慣の形成は国民的な課題となっていることから、中間報告案は、学校栄養職員の持つ食に関する専門性に加えて、教育に関する資質を身に付けた者が食に関する指導を担えるよう「栄養教諭」制度の創設を求めたもの。
 栄養教諭の職務としては、(1)食に関する指導▽児童生徒に対して個別的な相談指導(偏食傾向や肥満傾向、食物アレルギー、家庭への支援・働きかけ)▽学級担任や教科担任と連携しつつ、児童生徒への教科・特別活動等における教育指導▽食に関する教育指導の連携・調整(学校内外を通じ食に関する教育のコーディネーター)(2)学校給食の管理(3)食に関する指導と学校給食の管理の一体的な展開としている。
 また栄養教諭に関しては、新たな免許状の創設を検討すべきで、栄養に関する専門性については、原則として管理栄養士に相当する程度の専門性を確保できる制度を考慮し、教育に関する資質は教職に関する科目の履修を検討するよう求めている。現職の学校栄養職員に関しても一定の要件の下、栄養教諭の免許状を取得できるような措置の検討も提言している。栄養教諭に関する免許状に関しては、中教審の初等中等教育分科会の教員養成部会が検討する。栄養教諭の配置に関しては、義務的なものとはせず設置者の判断に任せる。栄養教諭が配置されない学校に関しては、近隣の学校の栄養教諭の活用などで食の指導充実を図る。栄養教諭の身分等に関しては、教育公務員特例法の適用を受け、不断に資質向上に努める必要がある、などを求めている。
 こうした説明に対して「資格付与しなくても報告書にあるようなことは達成できる」と、栄養教諭創設に反対する意見も聞かれたが、大半の委員は「中心になる人がいないと教職員の協力体制はできない」など創設を支持、教員養成部会を抱える初等中等教育分科会に中間報告に関する意見伺いをすることを決めた。
 一方、少年非行問題に関しては、「大人の倫理観・モラルの低下が大きい。皆が自分自身の問題として考えてほしい。教師は自分自身を磨いてほしい」といった意見が聞かれた。


【初等中等教育分科会】
学習意欲の喚起求める
栄養教諭問題は更に検討


 中央教育審議会の初等中等教育分科会(分科会長=木村孟・大学評価・学位授与機構長)は、八月二十六日、都内の会館で第十一回会合を開き、同分科会内の部会での審議状況等について話し合った。この中では(1)教育課程部会(木村孟部会長)が八月七日にまとめた「初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について」と題する「審議の中間まとめ」(8月13・23日合併号に詳報)(2)教育行財政部会(木村孟部会長)の審議状況が報告されたほか、(3)スポーツ・青少年分科会が八月十九日にまとめた「食に関する指導体制の整備について」と題する「中間報告案」が説明された。食の指導に関する中間報告案は、食に関する指導充実のために新たに栄養教諭を創設しようというものだが、免許制度は初等中等教育分科会教員養成部会の所管事項のため意見を求めたもの。
 これら三報告に関して初等中等教育分科会で審議した結果、(1)に関しては「基礎・基本の充実策をもっとはっきり打ち出すべきだ」「焦点の絞り方に多少工夫が必要と思う。大事なことがたくさん入っているが、結局、優先順位の問題だ」「学習意欲が低下している。学習の動機付け、学習意欲喚起の方法を一項目設けてもいい」などの意見が出された。(2)に関しては、特に目立った意見はなかった。(3)に関しては、食に関する指導の充実の必要性に関して特に異論はなかったものの、具体策として栄養教諭を創設することに関しては、推進を求める意見の委員がいた半面、「技術的に免許を整理するだけなのか。理念も含めて免許制度の中で取り組むべきなのか。教育行財政部会とも絡む問題だ」などとさらに幅広い検討を求める声が複数の委員から上がった。また中教審の鳥居泰彦会長も「初等中等教育分科会とスポーツ・青少年分科会が一緒に議論する場が必要だった」とし、またスポーツ・青少年分科会内で今回の中間報告案をまとめた「食に関する指導体制部会」の浅見俊雄部会長も「鳥居会長のリーダーシップで総合的な議論の場を設けてほしい」とした。
 これら三つの報告は、九月十日の次期総会で改めて議論される。
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