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記事2003年9月3日 1902号 (3面) 
大学の「知」ビジネス化 (8)
東京電機大学産官学交流センター
モーターなど接触の摩耗なくす
センサレス磁気浮上装置など発明
  東京電機大学は産業界や国・地方自治体などとの学術交流を図る目的で平成九年四月に産官学交流センターを発足させた。その後十二年六月にTLO(技術移転機関)が文部省と通産省から承認されたのに伴い、同センターが学内の研究成果を産業界に移転する窓口として一本化された。そのほか学術交流を中心とした社会との接点として、測定や試験・分析・検査、基礎や応用の技術相談、セミナーや講演会、講師派遣紹介などさまざまな相談や問い合わせの窓口ともなっている。こうした活動から受託研究や共同研究、企業に対する技術指導やコンサルティングへと発展することもある。
 東京電機大学の発明内容は現在特許申請中のものも含めて『TDU特許シーズ』という冊子に約三十件がまとめられている。
 モーターなどの軸受けを磁力線で浮かして接触による摩耗をなくす「センサレス磁気浮上装置」。棒の両端と真ん中の三カ所に装着したカメラでスポーツ選手の動きを撮影して、スローモーションで解析する「三次元画像計測装置」。空港管制塔のレーダー監視カメラに映る機影が雨や雪の反射で薄れる影響を少なくしはっきり見えるようにした「レーダー受信画像信号の改良装置」。すでにこういった発明が産業界へ移転され契約が成立した例は七件にのぼる。
 特許の前段階にある研究も三百人の教員全員について学部・学科ごとに『東京電機大学教員の研究内容』として冊子にまとめられ、産業界に共同研究や技術相談のヒントを提供している。これを見て「詳しい話を聞かせてほしい」という相談は月に十件くらいきている。
 研究情報の提供を望む企業、民間事業者、団体や技術移転にかかわる人はだれでも産官学交流センターに登録すれば、特許出願してから一カ月以内に情報提供が開始され、三カ月間にわたって情報提供を受けられる。登録料は無料。登録者への情報提供開始から三カ月経過するまでに登録者からの研究成果活用希望が出なかった場合には、登録していない人へ一般公開する。
 企業のニーズと大学のシーズが結びついた場合、出願中のものも含めすでに特許として形になっているシーズについては、共同開発や実施許諾の手続きが行われることになるが、その前段階のもので共同研究や受託研究に発展するものもある。これによって新たな発明が生じた場合は職務発明として大学が権利を取得し、大学の新たなシーズとなる。特許を取得する場合、出願から権利化までの費用は大学が全部負担する。特許について大学が技術使用料を取得した場合には、その三分の一が発明者である教員に還元される。

交渉の窓口も産官学交流センター
寄付受け入れ、売り込みなど専門家で


 こうした交渉の窓口が産官学交流センターであり、センター長の下に課長一人のほか、職員はTLOの技術移転関係専門家が一人、共同研究、寄付受け入れ、補助金申請などの業務担当者が一人の合計三人。さらに経済産業省と文部科学省から国費で派遣されてきた発明に詳しいアドバイザーなどが一人ずつ、研究内容を企業等へ売り込む助っ人もいる。
 交流会や講演会の開催、セミナー派遣講師の紹介も産官学交流センターの業務の一つである。地域との交流としては、埼玉県鳩山町にキャンパスのある理工学部が埼玉県内の企業と「TDU産学交流会」をつくって技術相談に乗っている。都内の葛飾区や大田区では産業イベントへ出展。関東や東北など国の経済局管轄ブロックごとに開催している特許流通フェアにも出展している。学内では年に二回程度、産学連携技術セミナーを開いている。
 今年三月のセミナーではメッキ廃液から重金属を取り除く特許など注目された三つの研究の説明がいずれも発明者自身演壇に立って行われ話題になった。
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