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記事2003年9月23日 1904号 (5面) 
他校との差別化学校教育改革 淑徳巣鴨中・高校
建学の精神にゆるがぬ基本線
基本は知的好奇心膨らませ 瞳を輝かせてやる
スポンサー講座 ブライト・サタデー・クラブ 東京キャンパス

中川校長

  「学校改革に取り組み、他校との差別化を図るために勢いのよい学校のやり方を積極的に取り入れ、頑張ったのに、気がついたらみな同じだった。よく見たら、どこの学校の施策(特色)も同じで、いわゆる金太郎飴(あめ)状態になっているのは残念です」。淑徳巣鴨中学・高等学校(東京都豊島区)の中川武夫校長はこう語る。学校改革を行う場合、「その大前提として、一つは建学の精神、一つは自分の学校の生徒のために、という基本線があるはずです。それを忘れるから、金太郎飴状態になってしまうのだと思います」と続ける。


 同校の、生徒のためになるという基本線は、人生の夢や目標を実現するための原動力となる知的好奇心を膨らませ、キラキラと瞳を輝かせてやることだ。そのためにつくった組織的なきっかけが、「スポンサー講座」であり「ブライト・サタデー・クラブ」(BSC)であり、そして「東京キャンパス構想」などだった。
 「スポンサー講座」は社会の第一線で活躍しているピカ一という人たちを招き、生徒たちに現場の声をぶつけるという考え方から生まれたものだ。
 「スポンサーとして、生徒に話を聞かせてやってほしい。ただし、広報担当の方ではなく、『これこそ本物』という人を派遣してください」と、学校は講師派遣を依頼する。
 つまり、同校のスポンサーになってもらい、話の内容は建前論やきれい事ではなく、本音を語ってもらうというもので、講演料は無料だ。この依頼に対して、承諾する団体や個人が続き、その後もスポンサーの輪が広がっている。このスポンサー講座をきっかけとして、生徒の中には目覚める生徒が現れてきた。
 「東京地方検察庁の検事の『法と犯罪』という話を聞くと、法学部に進学して司法試験を目指すという生徒がたくさん出てきました」
 講座を平成十年から実施しているが、大学教授をはじめ、銀行や新聞社などの企業、警察庁、警視庁、国際協力事業団、外務省などから派遣された講師が、それぞれ仕事の内容や今問題になっていることなどについて、興味深く話をしている。
 「ブライト・サタデー・クラブ」は、今週にやった勉強を、分からないまま次週に持ち越さずに、授業のない土曜日に希望者が参加して、その週の勉強はその週のうちに決着をつけようというものだ。担当しているのは、三十〜四十人の同校の優秀な卒業生で、現役の大学生(アシスタント・ティーチャー=AT)が当たる。ATは生徒が分かるまでマンツーマンで教えるので、生徒たちには好評だという。パソコン教室や理科実験のような企画も行われている。
 このメリハリをつけた方針は、「五学期制」の導入にも貫かれている。五学期制は三学期制の大枠を壊さず、年間五回の中間考査を期末考査にした。これによると、四―五月を一学期、六―八月までを二学期、九―十月を三学期、十一―十二月を四学期、一―三月までを五学期とする。
 「学期が終わると学校行事は全部その間に集中させ、行事が終われば次の学期が始まるので、学校生活全体にメリハリがついてきました」
 また、「東京キャンパス構想」は、生徒の将来へのきっかけをつくってあげたいという考えから生まれた。
 例えば、歴史の授業では史跡を訪ね、ほかにも美術館、博物館などさまざまな所へ同校を拠点として足を運ぶ。
 ある寺に行った生徒は「正座をしたり、写経をしたり、経を読んだり、疲れたけれど、淑徳巣鴨でしか体験できない、とてもよい経験になった」と感想を述べている。
 また国立美術館に行った生徒は、世界の多くの人たちの考えを知りたくなったと一念発起し、
「現在国際語である英語を頑張って学んでいる」。
 逓信総合博物館を見学に選んだ生徒は「中学のころ一度行って、とても楽しかったので、ぜひもう一度行きたいと思っていたので」と理由を語っている。
 このほど、新校舎が完成した。新校舎には“生徒のための”という思いが込められている。地下一階、地上七階建ての校舎は地下一階にはアリーナ、ダンス室、剣道場が、一階には視聴覚室、図書館が、二階には大会議室、進路指導室、選択兼多目的教室などが整備されている。さらに三階が中学教室、音楽室、コンピュータ室、四、五階が高校教室、六階が多目的ホール、七階が作法室、調理実習室、被服室、実験室などとなっている。同校は生徒の夢の実現に向かって確実に歩み始めている。


スポンサー講座(実施例)

平成12年度 
「琉球舞踊エイサーの実演」民族歌舞団「荒馬座」
「イギリスから学ぶ国際人のあり方」国際人をめざす会
「地球環境問題と日本のエネルギー問題を考える」日本原子力文化振興財団
「消費者問題に関する高校生講座」東京司法書士会
「水と化学(バケガク)―水の性質・水の効用」埼玉大学
「南北の和解と朝鮮半島の統一。そして日本の将来」在日本大韓民国民団中央部
「鑑別所の仕事」東京少年鑑別所
「異文化との出会い、また楽しからずや」中東博物館
「光と音でみる材料表面」東京都立大学大学院
「二十一世紀の日本・中国の友好」日本中国友好協会

平成13年度
「オカリナとフルートの演奏会」音楽演奏家 会田直子先生
「グローバル企業の人材育成」日本マクドナルド
「美しさの条件」東京美容専門学校
「いまイスラームを学ぶ」
 朝日新聞社総合研究センター研究員 鴨志田恵一先生、和光大学講師 村山和之先生
「地球の温暖化」三菱重工 濱本和子先生
「三味線を知ろう」稀音家康生先生
「ハイブリッド式太陽電池による太陽エネルギーの有効利用」
 神奈川工科大学助教授 矢田直之先生

平成14年度
「お菓子のできるまで」森永製菓相談役 松崎昭雄先生
「発想力を鍛えよう」ワイエスマネージメント代表取締役 岩佐 豊先生
「生物資源を知ろう」日本大学教授 奥 忠武先生

「法と犯罪」についての検事の講演


キメ細かい指導で成果も上げている

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