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全私学新聞

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記事2003年8月3日 1900号 (1面) 
全私連、文科相に16年度予算、税制改正を要望
国庫補助を堅持拡充 税制改正で寄付促進
大学、短大等公財政支出が脆弱
補助率の充実と増額を要請
  幼稚園から大学までの私学団体で組織する全私学連合(代表=安西祐一郎・日本私立大学団体連合会長、慶應義塾長)は七月二十三日、平成十六年度の私立学校関係政府予算と税制改正に関する要望書をまとめ、同二十八日、遠山敦子文部科学大臣に提出した。要望書では国公私立学校間の競争条件の同一化や国庫補助の堅持・拡充、学校法人に対する寄付促進のための税制改正等を要望している。例年通りの日程でいけば文部科学省は八月中にも来年度政府予算への予算要求(概算要求)等をまとめ、八月末に財務省に提出する。

 文部科学大臣への要望には安西代表をはじめ、日本私立短期大学協会の川並弘昭会長、日本私立中学高等学校連合会の堀越克明会長ら私学団体代表らが出席した。私学側の説明・要望に対して遠山大臣は「(要望の)趣旨は分かる。頑張っていきたい」としたうえで、我が国の高等教育に対する公財政支出が欧米に比べて脆弱(ぜいじゃく)なこと、地方分権論議では教育に携わっている人の意見を聞くことの大切さを指摘した。
 税制改正に関しては私学側から特に高校等では一万円以下の寄付金がほとんどにもかかわらず、一万円までは所得税控除の対象とならないこと、一万円以下でも全額控除の対象になれば私立学校へ寄付するムードが高まることなどが強調された。
 これに対して遠山大臣は寄付が増えれば予算が助かる面もあるとして財政当局に理解を求めていく考えを示唆した。
 このうち予算要望に関して、大学関係では、私立大学は我が国経済社会、国際社会の発展に大きく貢献しており、更なる教育研究事業の活性化には私立大学と国公立大学との競争条件のイコール・フッティングの早急な実現が緊急の課題だとしたうえで、具体的には「私立大学等経常費補助金」の中の「私立大学教育研究高度化推進特別補助」等の増額や「専門職大学院等支援経費」等の大幅増額を、施設・設備等関係では私立大学等における競争力の強化と予算機能の弾力化を高めるなど、インセンティブが働くよう補助率の充実と増額を要望。育英奨学事業に関しては、国公立大学と同等の条件による施策実現、正規の学生としての長期履修学生に対する奨学金制度並びに大学院学生に対する給付奨学金制度の創設を含めた学生支援機能の抜本的改善を求めている。
 また留学生政策に関しては国公立大学と同等の条件による施策、概算要求の段階から国の政府開発援助予算削減の影響を受けずに留学生予算を確保する仕組みの構築、「大学間交流協定等に基づく短期留学推進制度」に関して短期大学も利用可能な制度とすること、特色ある教育拠点育成のための重点的な支援、認証評価(第三者評価)機関の基盤整備のための支援、十六年度から誕生する法科大学院に関しては国家的プロジェクトであることから設置経費に関する補助(二分の一程度)や借入金による校地・校舎の取得、法科大学院生に対する特別な予約型貸与奨学金制度の創設等を要望している。

税制改正
企業等寄付金全額を損金扱いに
個人寄付の所得控除限度額も拡大


 来年度税制改正に関して全私学連合は、学校法人に対する寄付促進のための措置の拡大を要望の前面に掲げており、具体的には(1)企業等からの寄付金にかかる損金算入限度額の撤廃(全額を損金扱いに)(2)個人からの寄付金にかかる所得控除限度額の拡大等(所得控除限度額の上限を所得の二五%から五〇%に拡大、控除除外額一万円の廃止、年末調整による所得控除の実現)を求めている。同時に学校法人の資産運用収益に対する非課税措置など現行優遇税制の維持、教育費負担軽減のための税制上の配慮を要望している。

高校等予算
公私立別なく学校選択の自由
公私立学校間均衡のとれた財政措置を


 私立高校等に関しては、子供たちがその個性や能力に応じて公・私立学校の別なく、自らにとって最適な学校教育を支障なく選択できる自由が実質的に確保されるよう、国、地方公共団体において公・私立学校間の均衡のとれた適正な財政措置(公費支出)を求めている。そのためにはまず、私立高等学校等経常費助成費補助金の堅持・拡充がぜひとも必要で、それは同時に私立高校等の振興に対する国の意思表示になるものとしている。具体的には私立高等学校等経常費助成費補助金については一千億円をさらに超えての拡充強化を、すでに全都道府県で単独事業として行われている私立高等学校授業料軽減補助事業への国の補助制度の創設、私立高等学校等施設高機能化整備費補助金では公立学校と同等の整備が可能となるよう補助制度の抜本的改革を含めた拡充強化を、奨学金に関しては保護者の教育費負担の公私間格差の実態に応じた貸与内容の充実、日本私学教育研究所補助では特に十五年度から始まった十年経験者研修への補助金拡充を要望。私立幼稚園関係では経常費助成費補助金の増額、子育て支援事業推進への一層の財政支援、就園奨励費補助金の拡充等を要望している。

文科相に要望内容等を説明する私学団体代表

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