こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2003年8月13日号二ュース >> VIEW

記事2003年8月13日 1901号 (4面) 
新世紀拓く教育 (8) ―― 東京女子学院中学高校(英語教育)
海外留学と同じ環境作り
「使える英語、考える英語」
  礼法・弦楽・華道などの感性教育や、英語・中国語・フランス語も含め充実した外国語教育を行い、国際的に活躍する女性リーダーの育成を行ってきた東京女子学院中学校・高等学校(酒井A校長、東京都練馬区)は、それをさらに推し進め、海外大学への進学なども見据えつつ、今春、「使える英語」「考える英語」の習得を掲げて中学校に新しい英語教育を大胆に導入した。
 この新しい英語教育とは、週六時間の「英語」の授業をすべて、ネイティブの教師が英語のみで行い、教室内に海外留学と同じ環境をつくり、そこで生徒たちに英語を学んでもらおうというものである。むろん、日本人教員のアシスタントなども付かない。授業を行う外国人教師は、「オセアニア教育財団法人」の指導のもとに授業の運営にあたる。「オセアニア教育財団法人」は、英語が母国語ではない外国人学生に英語を習得させる教授法をケンブリッジ大学から保証されている団体。単なる英会話ではなく、英文法も含めた総合的な英語教育となっており、新しいカリキュラムによって、中学校三年間であまり複雑ではない英語の映画やニュースをある程度理解でき、英語の本を読むことや簡単な議論ができる能力を開発していくことができる。
 具体的には、授業の進行を英語で行うだけでなく、テキストも英語だけで書かれている「SIDE BY SIDE BOOK」を使用。さらに自分の考えを英語で表現できる力を養うため、各学年ともテーマを決めて学習する。
 中学一年では、初めて英語に接する生徒のために英語がわからなくても理解できる身近な事柄を使い、5W1Hの質問と回答の連鎖で授業を展開させていく。まず、たくさん英語を聞いて、まねをするところから入り、話すという道筋をたどる。授業の中心となるのはネイティブ教師との対話や活動であり、テキストはあくまで一つの指針として使用する。学習の目標は、身近な生活を素材としながら簡単な英語表現ができることと、文法事項は中学三年間の約六〇%を使えるようにすることである。学習テーマとして予定されているのは「トピック」「世界の食物」「世界の料理」「世界のスポーツ」である。
 中学二年の授業では、ネイティブ教師との対話が中心となる。一年次と同じく5W1Hの質問と回答の連鎖で授業を展開していく。学習テーマは「トピック」「音楽」「美術」「時事問題」が予定されており、簡単な英語表現で、話す、聞く、読む、書くことを行う。学習の目標は、英語を通じて外国の文化を学ぶとともに、文法事項は中学で学ぶ項目のすべてを使えるようにする。
 中学三年では、学習テーマを「トピック」「環境問題」としており、ネイティブ教師と日本および世界レベルの時事問題や環境問題について調べて対話したり、聞く、読む、書くといったことを行う。同時に外国の文化を学ぶことによって視野を広め、コミュニケーションの大切さを体験する。またテキストとして海外のペーパーバックなどを原文のまま使用する。学習目標は、ペーパーバックが原文で読めるようになること、文法事項として英語検定二級へのチャレンジである。
 学習の評価は、小テストと定期考査の成績、オックスフォード・ケンブリッジテストによるレベル評価、授業協力度、発言の内容と積極性、Diaryの提出、小論文の内容などによって行う。
 こうしたカリキュラムによって、毎日英語を聞き、使う環境の中から、生徒たちは短期間のうちに英語を聞き取り、英語で考え、英語で話し、英語で書くという力がつき、自然に英語能力を向上させていくという。中学二・三年生はすでに従来の方法で英語の授業を受けていたこともあって、新しい方法になじめない生徒には、放課後、OGチューターによるサポートも行っている。
 中学校では新しい英語教育が全面的に導入されたが、高校でも徐々にこの英語教育を実施していく方針である。今年度は通常行われている英語の授業とは別に、七、八時間目に「Talk Talk」というネイティブ教師による英語クラスを設けた。この「Talk Talk」では使える英語力を育成するが、クラブ活動に近い、よりフランクなスタイルでの英語教育となっている。対象は高校生だけでなく中学生も含めた全生徒としている。ただ、中学生は必修だが、高校生は希望者のみ。クラス分けは学年の枠を取り払い、習熟度別に八グレードに分けている。教材はネイティブ教師が独自のものを用意する。クラスは固定化しないため、生徒たちのがんばり次第でどんどん進級するシステムだ。すでにあるクラスでは、ネイティブ教師のジョークに反応して生徒たちが笑うほどの進歩を見せているという。
 今後高校でも、大学進学に配慮しながら、新しい英語教育を順次導入していき、将来的には卒業時にTOEFLのスコア六〇〇、IELTS七・〇の取得を目指していく。また、大学入試センター試験に対応するだけの力を育成するだけでなく、海外の大学を志望する生徒のために、ニュージーランドのバーサリー(大学進学資格試験)にチャレンジできる力も養う。これを取得すればニュージーランドの大学はもちろん、英語圏の大学であれば入学が可能となる。バーサリーの合格レベルはAからCまであり、Aであればケンブリッジ大学への進学も可能だという。同校の新しい英語教育によって、グローバルアドミッション(海外大学への進路)の際の関門となっていた入学試験や、入学後に英語の授業についていけるかといった問題がかなり解消されるため、海外大学への道が大きく開かれることとなる。
 文部科学省は今年六月、平成十八年度の大学入試センター試験の出題教科・科目の英語の中にリスニング(聞き取り)テストを導入すると発表した。図らずも十八年度は東京女子学院の新しい英語教育を三年間受けた生徒たちがセンター試験を受ける年にあたる。同校の英語教育はこのリスニングテストにも十分対応できるものである。同校としても、海外大学進学への道が広がることと併せて、生徒たちの成長が楽しみだという。

今年度から中学校の英語の授業はすべてネイティブ教師が行う

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞