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記事2003年7月13日 1898号 (2面) 
韓国専門大学学長招きフォーラム 全国大学・短大実務教育協
時代の変化に 柔軟な対応が奏効
専門大学の課題探る
高等職業教育の中心的存在
  全国大学・短期大学実務教育協会(和野内崇弘会長=札幌国際大学理事長)は五月二十六日、東京・市ヶ谷の私学会館で「韓国専門大学学長招聘(しょうへい)フォーラム」を開催した。これは同協会が創立三十周年記念事業の一環として開いたもので、協会加盟校の約八〇%を占める短期大学の振興策を探ろうと、韓国で脚光を浴びている短期高等教育機関である「専門大学」の学長を招き、その現状と課題を探った。韓国からは羅商均・蔚山科学大学長らが出席した。

 フォーラムは、羅学長の「韓国の専門大学の現況と課題」と題する基調講演に続き、馬越徹・桜美林大学大学院教授が問題提起を行い、その後、パネルディスカッションに移った。
 韓国の専門大学は一九七〇年代、同国近代化のために主に中堅職業人養成を目的として設立された、二、三年課程の高等教育機関。現在では教育目的を専門職業人養成へとシフトさせているが、設立以来三十年間で、約三百万人の職業人を輩出しており、高等職業技術教育を担う中心的役割を果たしている。その多くを私学が占める。
 羅学長は専門大学がこれまで果たしてきた役割について、@専門大学の量的拡大によって高等教育の大衆化に寄与したA産業界からの要請を受けたオーダーメード方式の教育、企業からの委託教育の実現によって、企業の現場で即戦力として対応できる専門職業技術教育を展開してきたB機械、建築、土木、電気・電子、化学工業といった国家の基幹産業に必要な専門職業人の供給源として、その発展に寄与した――の三点を挙げた。その上で、学齢人口の減少、私立大学の授業料依存度が高く、財務構造が脆弱(ぜいじゃく)であること、実業高校と専門大学との教育連携が不十分であることなど、日本の私立大学と同様の危機に直面している現状を指摘。この危機を克服する基本的方向性として、▽定員削減、学科の統廃合などの構造改革の実施▽企業の現場に対応した職業教育の強化▽生涯教育機能の強化▽学科によっては教育課程を三年に延長するなど弾力的な学事運営を通じた職業技術教育の活性化――といった対策を挙げた。
 馬越教授は世界の短期高等教育機関と比較しても韓国の専門大学が成功した理由として、時代の変化に敏感に対応したことや四年制大学よりも柔軟性のある教育システムを挙げた。学齢人口の減少に対しては専門大学教育評議会を通じて自主的に定員を削減、組織的な危機への対応に努めていることを評価。今後についてはあくまでも専門大学に徹する大学、四年制大学への昇格を目指す大学、リカレント型の多様で柔軟な発展が期待できるとした。
 パネルディスカッションでは、菅野英孝・同協会総合企画委員長(福島学院大学理事長)が日韓両国の大学設置基準の比較をデータに基づき行った。韓国では学科新設の場合でも教員の資格審査は大学が自主的に決定できることや総定員の範囲内であれば系列、科、専攻間での定員調整も原則的に大学が自律的に決定できることなど規制が少ないことを指摘し、日本の短期大学に比べ、総じてチャレンジングなシステムになっていることを評価した。
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