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記事2003年6月23日 1893号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向 指導要領の基準性明確化
【教育課程部会】
個に応じた指導充実
教育課程実施状況の調査も


 中央教育審議会初等中等教育分科会の第五回教育課程部会が六月十日、東京・千代田区の如水会館で開催された。この日は、事務局(文部科学省)から当面の具体的な検討事項例が提示された。それは、(1)学習指導要領の「基準性」の一層の明確化(2)必要な学習指導時間の確保(二学期制の導入や長期休業日の学校行事の活用や短縮等の工夫等)(3)「総合的な学習の時間」の一層の充実(総合的な学習の時間の実施状況の評価や、ねらいをよりよく実現するための指導上の留意点等)(4)「個に応じた指導」の一層の充実(小学校での習熟の程度に応じた指導の工夫や、補充的な学習、発展的な学習の工夫等)(5)全国的かつ総合的な学力調査の今後の在り方やその結果の活用の五項目。この検討事項例については、広く国民一般から意見を募集し、議論に反映させることとした。
 委員からは、議論すべき問題点がまだ不明確で、議論を進めるためのデータが必要だとの指摘があった。また、現場教師の委員は週五日制により授業時間数の確保が難しくなり、夏休みをどう活用するか、また「総合的な学習の時間」をどう活用し、評価していくのかが難しいと述べた。文科省は、この部会を常設することで、現場の声を集め、議論することで、指導上の課題を明らかにし、新学習指導要領のねらいの一層の実現を図りたいとした。文科省は今秋にも答申をとりまとめ、来年度の学習指導に生かしたい意向だ。さらに検討を進めるため、教科別専門部会に加え「総則等作業部会」を新設設置することとした。
 また、教育課程実施状況の調査として、小学校五・六年生の国語・社会・算数・理科、中学校は一〜三年生の国語・社会・数学・理科・外国語について、今年度末に平成十三年度と同一の方法で調査する。高校は十七年度以降の実施予定。

【留学生部会】
海外留学を国家的事業に

 中央教育審議会の留学生部会(部会長=木村孟・大学評価・学位授与機構長)は六月十一日、文部科学省分館で第八回部会を開き、「日本留学試験の普及、渡日前入学許可の推進」「日本語教育機関と就学生に対する支援」「日本人学生の海外留学支援」を中心に討議した。
 日本留学試験は、わが国への留学生の負担軽減のため渡日前の入学許可取得を目指し、国内十五都市、アジア地域の都市十都市程度で平成十四年度から実施しているが、昨年の利用大学三百六十一校のうち、渡日前入学許可実施校はわずか三十九校にとどまっていることから文科省は、各大学の入学選考への渡日前入学許可制度の取り入れ普及を図りたいとしている。これについて委員からは「面接重視の大学は導入しにくい」「インターネットの利用でインタラクティブな試験ができないか」などの指摘があった。また、試験科目への英語導入については「TOEFLで代用できるという議論もあるが、試験会場が限られており、負担を強いるため、英語導入は必要」とする意見などが出された。
 日本語教育機関と就学生に対する支援について文科省は、現在、就学生学習奨励費を給付、日本語教育振興協会の実施する諸事業への支援も行っているとしたうえで、引続き支援していきたいとの考えを、また、日本語教育機関の内申書等を活用した入学選考の推進も必要との考えを示したのに対し、「予備教育段階での奨学金支給は画期的でぜひ続けてほしいが、医療費の面も検討してほしい」「日本語教育機関こそが学生をよく理解しているのだから、大学は内申書等をより活用すべきだ」との意見が出された。さらに在留資格については、就学ビザと留学ビザを同等に扱ってほしいとの要望もあった。
 日本人学生の海外留学については「留学後の受け入れ体制が十分でない」「日本と海外両方の大学を卒業できるデュアルディグリー制度等が必要」など様々な意見が出された。これに付随し五百旗頭眞専門委員は、いまの日本は日本人の外国への留学を国家的事業として重視していないと説明、独立行政法人を設けたうえで、大学・大学院卒業後五年以内の者を各分野の先端的教育が行われている海外の機関へ、二、三年間で百人ほど留学させ、学位取得を基本に、学位取得後の応用活動も可能にすべきだとの「21世紀人材計画」と題する資料を提示した。

【総則等作業部会】
7月下旬まとめ 総則等作業部会を新設
総合的学習の充実策審議


 中央教育審議会初等中等教育分科会の教育課程部会に新設された「総則等作業部会」の初会合が六月十六日、東京・港区内のホテルで開かれた。中教審への諮問事項の一つである「総合的な学習の時間」の一層の充実について、上野健爾・京都大学教授、奈須正裕・立教大学教授から意見聴取などを行った。
 今後は、専門的な見地から週一回程度のペースで個に応じた指導の充実策や必要な学習時間の確保、学習指導要領の基準性の一層の明確化等の検討を進め、審議のまとめを作成して七月二十八日に予定されている第六回教育課程部会に報告する予定。
 教育課程部会には総則等作業部会のほかに教科別の専門部会が設置されている。総則等作業部会の委員九人は次の通り。(専)は専門委員、(臨)は臨時委員を示す。
 ▽赤田英博・社団法人日本PTA全国協議会長▽浅田匡・早稲田大学人間科学部教授(専)▽安彦忠彦・早稲大学教育学部教授(臨)=主査▽今井英弥・船橋市立旭中学校教諭(臨)▽小栗洋・東京都立新宿高校長▽小久保茂昭・社団法人中央青少年団体連絡協議会理事(専)▽中許善弘・ジュニア・アチーブメント本部専任理事(臨)▽西村佐二・東京都目黒区立中目黒小学校長(臨)▽船津春美・福岡県中間市教育委員会教育長(臨)
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