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全私学新聞

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記事2003年5月23日 1889号 (1面) 
株式会社等の設置学校へ私学助成は本末転倒
全私学連合、規制改革会議に意見書
教育制度の瓦解速やかな撤回要請
教育的考慮なし
  政府の総合規制改革会議で現在、「株式会社やNPO法人等による学校経営の全国的な解禁」「株式会社やNPO法人の設置する学校への私学助成」「大学・学部・学科の設置等の自由化」が重点事項として検討されているのを受けて、全私学連合(代表=安西祐一郎・日本私立大学団体連合会長、慶應義塾長)は、五月十四日、これら事項の推進は我が国教育制度の瓦(が)解(かい)につながるものとして、速やかな撤回を求めた意見書をまとめ、翌十五日、与党・自民党に提出した。(3面に意見全文)  
 
 全私学連合は、日本私立大学団体連合会、日本私立短期大学協会、日本私立中学高等学校連合会、日本私立小学校連合会、全日本私立幼稚園連合会で組織する団体。
 意見の中では、はじめに教育関連事項が経済的な観点のみで議論され、教育的な観点は全く考慮されていないこと、人格の完成を目指し、個人の能力を伸長し、自立した人間を育てるという使命と、国家や社会の形成者たる国民を育成するという教育を、他のサービスと全く同一に論じ、消費者の選択に任せ、問題があっても自己責任で対処すれば良いという考え方は我が国の将来を誤らせるものと言わざるを得ないなどと指摘。
 そのうえで株式会社やNPO法人等による学校経営の全国的な解禁については、「(営利を目的としない、他の事業を行うことを前提としないなどの)要件を満たさない学校法人以外の者に、子供たちの教育というやり直しのきかない重要な役割を担わせることは、極めて慎重に検討すべき事柄で、自己責任の名の下に拙速に全国化することは到底認められるものではない」としている。
 また株式会社やNPO法人の設置する学校への私学助成については、「私学に対する公的支援が認められるのも、それらが私的利益に繋(つな)がらないシステムが確立しているからで、必要な規制を受けたくないがために株式会社等のまま学校を設置することを選択した者に対し私学助成を行うことは本末転倒であり、憲法違反に他ならない」としている。
 続けて「営利法人に公金を支出することなどは、血税を納めている国民からも納得の得られるものではない」とし、また「現在行われている宗教系の学校に対する私学助成こそが違憲の疑いがあると主張するなど、偏った議論が行われている」と指摘している。
 さらに大学・学部・学科の設置等の自由化については、「学校は学生・生徒等の人格の形成を担う機関であり、(市場原理により)淘(とう)汰(た)される大学に通っていた学生の人生を考えれば、完全に事前規制をなくすことは不適切」としたうえで、「ただ闇雲に規制を撤廃するのではなく、教育の質を向上させるためのバランスの取れた規制改革の推進」の必要性を強調している。
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