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記事2003年5月23日 1889号 (1面) 
文科相が中教審に諮問 就学時期の弾力化
義務教育費負担の在り方、私学教育にも論議
  遠山敦子・文部科学大臣は、五月十五日、都内で開いた中央教育審議会総会で、「今後の初等中等教育改革の推進方策」について諮問した。今回の諮問は、政府の地方分権改革推進会議や経済財政諮問会議等で義務教育制度の見直しが強く求められている中で、改めて義務教育の今日的な意義や目的、義務教育における国と地方公共団体の役割等を明確化するもの。諮問後の自由討議では委員から公私の問題や受益者負担の在り方、私立学校法の見直しの必要性も指摘された。(文科相諮問理由説明4面に)

 今回の諮問では、当面検討する事項として、大きく分け(1)初等中等教育の教育課程及び指導の充実・改善方策(2)義務教育など学校教育に係る諸制度の在り方が示された。
 このうち(1)に関しては、すべての子供が共通に学ぶ内容として示された学習指導要領に加えて、それ以外の内容を加えることが可能な学習指導要領の「基準性」の明確化、また年間授業時数が標準授業時数であることについても一層明確化し、長期休業日や学期の区分などの工夫を通して年間授業日数を適切にするなど今後改善すべき点がないかを検討する。
 さらに「総合的な学習の時間」の学習活動が充実するよう、指導上の留意点、子供の理解の状況や習熟の程度に応じた少人数指導や補習的な学習、発展的な学習に関して学習指導要領上の位置づけで改善すべき点がないかを検討する。このほか平成十六年度に実施を予定している特定の課題に関する(学力)調査の実施方法、小・中学校の教育課程実施状況調査の結果分析を踏まえての指導改善、高校教育課程実施状況調査の結果分析の視点を審議する。
 一方、(2)に関しては義務教育の今日的な意義・目的等についての議論とそれを踏まえての、就学機会や就学時期の弾力化など義務教育の就学制度の在り方、多様な学校連携の在り方、これと関連して幼児教育の在り方の検討を求めている。
 また義務教育の教育条件整備の在り方、義務教育費国庫負担制度の意義役割を踏まえつつ義務教育費に係る経費負担の在り方を、さらに公立学校の民間委託等が指摘される中で、公教育としての学校の教育活動の確実な実施と充実を図る観点から、新しい時代にふさわしい学校の管理運営の在り方について検討する。
 これらの課題に関しては、中教審の初等中等教育分科会が中心となって検討することにしており、五月二十六日に諮問に沿った審議が始まる見通し。審議の区切りがついた事項から逐次答申としてまとめる。
 諮問後に行われた自由討議では、「経済財政諮問会議など教育と関係のないところで義務教育について一方的な議論が行われている。由々しき事態だ」「今の制度で国の経済が支えきれない状況があれば考えないといけない」「教育現場の問題や希望など現場の人たちの声をここに出してほしい」「私立学校に行けずトラウマを感じている生徒がいる。なぜ私学に行きたいのか議論が必要だ」「経済活動としての教育の改革だけではだめだ」「この問題では、私立学校法の在り方、教育委員会の権限なども絡んでくる。また子供一人ひとりの側から論を立てないといけない」「義務教育の実態を踏まえないと現実の改革に繋がらない」などの意見が出された。

中教審総会で諮問書を鳥居会長に手渡す遠山文科相(左)

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