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記事2003年4月23日 1887号 (1面) 
起業教育重要 社会経済生産性本部が報告
「生きる力」育成強調 問題解決能力や学習意欲を向上
  財団法人社会経済生産性本部の「創業・ベンチャー国民フォーラム」(会長=江崎玲於奈・芝浦工業大学長)はこのほど、「動き始めた教育現場〜地域と一体となったたのしい起業教育」と題する報告書をまとめた。この報告書は、国公私立小学校・中学校・高校・高等専門学校で「生きる力」を育成する教育として、「起業教育」を取り上げ、全国アンケートで調べた各学校の取り組み状況や課題、課題の解決策、教育の成果、実践校の具体的取り組み等をまとめたもの。報告書によると起業教育を実践している学校では問題解決能力や学習意欲が向上したなどの成果が見られ、「生きる力」を育み、「人間力」を引き出す有効な手段であることが分かったとしている。この調査研究は、経済産業省の予算を受け行われたもの。
 この調査研究事業は、同本部の「創業・ベンチャー国民フォーラム調査委員会」(委員長=松田修一・早稲田大学大学院アジア太平洋研究科委員長)が行ったもの。
 現在、経済・産業の抜本的な構造改革が進む中では、新学習指導要領の「生きる力」にも通ずる「自立性」「自己表現力」「創造性」「新しいことに挑戦する勇気」「知識探求力」「柔軟な思考力」などの起業家精神を醸成する教育の充実は必要不可欠と指摘。そうした状況の中で、学校における、会社活動を含む実社会の擬似体験を重視した新しい試みについて教育現場での実態や導入に当たっての問題点、課題等をアンケート調査した。対象は国公私立小・中・高校・高専の校長、教員三千四百二十六件、うち六百二十一件(一八・一%)から有効回答を得た。
 調査結果によると、新しい試みとしては、「職場体験(インターンシップ活動)」「会社活動の擬似体験(生産者サイドからのモノづくりから販売に至る体験活動)」「キッズマート活動(対面販売活動)」「バーチャルカンパニー(インターネット活用の販売活動)」等が見られた。会社活動の擬似体験等を行っていた学校の五三・一%は実際の紙幣等を使用していた。
 そうした実践の結果、「本物体験によって表現力が豊かになった」「子供の職業観や生活空間の幅を拡(ひろ)げることができた」「体験学習のグループ活動を通して、子供同士で教え合うなどの行動が見られた」「経済の学習のほか、人間関係や責任感、プレゼンテーション能力、コンピュータの使い方を学ぶ点が多い」などの成果が見られた。

総合的学習の活用 他教科、地域と連携も

 一方、課題としては「体験学習の内容をどう組み立てれば起業教育の趣旨が達成できるのかといった不安」が最も多く、次いで「地域企業等との連携や工場実習の受け入れ」「指導者・人材(教員、民間)の不足」「予算面」等が多く見られた。
 これらの課題に関しては、地域の商工会や商工会議所等への相談や社会人講師、民間の教育関連事業者の活用などが有効としており、授業時数の確保では、総合的な学習の時間の活用、他の教科との連携、予算面に関しては商店街等との連携、OBの活用、修学旅行への組み込みなどの事例を紹介している。
 起業教育を導入する第一歩を踏み出すためには、(1)起業教育の導入目的、ねらいを明確にすること(2)教育現場で実践する教員自身が起業家精神を発揮すること(3)ボランティアや地元商店街の協力を得るなどがポイントと強調している。
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