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記事2003年4月23日 1887号 (3面) 
修学旅行の今昔
交通事情や教育内容で変化
体験旅行が増える傾向
  新学期を迎えて学校行事の年間計画が各校で練られる時になって、修学旅行を予定通り行うかどうかで悩みの種が生まれている。イラク戦争、伝染性の強い肺炎の発生……中には欧米への飛行機での旅行の予定を変更する例などが伝えられる。昔と違って修学旅行はどう変わってきたか、今後の方向はどうなるのか、修学旅行の研究財団・全国修学旅行研究協会にうかがった。

 修学旅行は昔に比べて変わってきたが、(1)交通機関の発達や交通事情による影響(2)教育の流れに沿っての変化という二つが大きい要因である。交通機関の発達や交通事情による変化としては、昔は中学の修学旅行は例えば一学年十クラスがバス十台を連ねて京都市内見学といったやり方がよく見られたが、近ごろの混雑・渋滞の中で十台の列をつくって進むのは不可能になった。そこで目的地までは一学年がまとまって列車で行くが、到着後は五〜六人程度の班に分かれて自主的に見学や行動するやり方が主流になった。修学旅行期間の長さについては公立小学校では一泊二日、中学校では二泊三日、高校では三泊四日が多いが、旅行先や交通手段の選択は、教育委員会の規制も緩やかになりつつある。
 平成十二年度において公立学校の航空機利用を許可している地域は、小学校では福島、徳島、鹿児島、沖縄の四県、中学では秋田、福島、富山、石川、和歌山、岡山、鳥取、徳島、愛媛、香川、長崎、宮崎、熊本、鹿児島、沖縄の十五県と福岡市、北九州市の二政令指定都市、高校では名古屋市以外の全てがオーケー。海外への修学旅行についても公立高校ではほとんど許可されている(許可されていないところは茨城、栃木、埼玉、長野の各県と、横浜市、名古屋市。試行は東京都、千葉市。検討中が神奈川県、札幌市、川崎市)。
 教育内容による変化は「体験重視」型旅行の流行である。都会の子が農山漁村へ行ってクワで土を掘ったり、林に苗木を植えたり、地引き網を引いたりする。あるいは京都で八ッ橋をつくり、舞妓さんの着物を着る、友禅を染める、素焼き茶わんに絵つけ、愛知から東京へきた子は墨田区の中小企業の仕事場でガラス細工の伝統工芸を体験するなどといった調子で体験内容は千差万別だ。
 規制緩和で拡大されてきたのが時代の流れといえるが、ここにきて修学旅行費用の見直しが図られている。一例として、東京都は一人当たり三泊四日、八万五千円の都立高校の国内修学旅行の基準を今年度の契約から七万六千円に切り下げた。
 イラク戦争の影響はどうなるか。三月の春休みに任意参加の語学研修を予定していたところでは少し延期や中止が出ている。本格的な秋の修学旅行については「具体的に確定した計画を立てるのは新学期に入ってからですから、まだ分かりませんけれども、九・一一NYテロの時より余裕をもっていろいろな検討がなされているのではないか」と柳川達郎同協会理事は言っている。NYテロの十日後の二〇〇一年九月二十一日付の調査を文部科学省がまとめた「米国多発テロによる海外修学旅行の動向」調査結果によれば千二百二十三件の海外修学旅行計画のうち「実施」と回答したのは七百四十二件、「国内旅行に変更」したのは二百十七件、「中止」を決めたのは二十六件。そして九・一一(テロ)〜九・二一(文科省調査)の間でまだ「検討中」だったのは二百三十六件だが、この中には海外修学旅行を見合わせた学校も多かったのではないか。とすると全体で計画した数字の六〜七割に落ちている。翌〇二年の数字は出ていないが、「テロ後に落ち込んだ時よりはかなり回復しているでしょう」と推測している。

ホームステイなど教育旅行 海外では中国が最多

 イラク戦争の影響については「各校とも親の意向も聞きながら計画を練るが、前回文科省調査の数字が一つの参考例であり、様変わりの変化とまではならないのではないか」と予測している。高校の海外修学旅行先国別人数(文部省調べ)ではテロ前年の二〇〇〇年度は(1)中国四一、六九五人(2)韓国三七、六六三人(3)アメリカ二六、七三八人(4)オーストラリア二二、七六九人(5)シンガポール二〇、九四六人(6)マレーシア一六、六四三人が五桁で、その後の調査はまだ出ていない。近くて費用が安く日本文化のルーツを探りに行く意味で多い中韓両国やアジア諸国には影響は少なそうだが、最近の肺炎流行もあり、イラク戦争とともに今後の展開次第で変わってこよう。修学旅行に対する今後の傾向の予想や対策アドバイスとしては「修学旅行以外に、ホームステイとか体験学習などの教育旅行が、日程面などでの規制も少なくて増えてきている。一生の思い出に残る修学旅行は伝統行事として残しながら、体験学習的な自由な旅行をもっと増やしていったらいい」ということだった。
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