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記事2003年4月13日 1886号 (2面) 
21世紀の教育考えるテーマにシンポ 日本経済調査協議会
教育力の向上で提言
社会力の育成が急務
学校の裁量権拡大、学習の充実
  社団法人日本経済調査協議会(橋本徹理事長=みずほフィナンシャルグループ名誉顧問)はこのほど、「二十一世紀の教育を考える――社会全体の教育力の向上に向けて」と題する提言を公表した。この提言は、同協議会の諸井委員会(委員長=諸井虔・太平洋セメント相談役)が討議、まとめたもの。これからの教育を考えるに当たり昨今の若者が希望を持てずにいることを糸口に、社会や教育が抱える問題点や問題解決の具体的改善策等をまとめた。その中では、教育は大人社会の問題の反映で、それ自身の改革を含め「社会全体の教育力」の向上が重要と強調している。
 提言では、わが国の戦後教育での「いきすぎた平等・自由」が、子供たちを一律的に扱わせ、勉強についていけない子供には学校生活への意欲を失わせ、勉強のできる子供には受験勉強型、詰め込み暗記型に向かわせ、創造力涵養(かんよう)という教育本来の目的が達成されなくなったと分析。また閉ざされた教室の中で、他者への関心が薄い子供は自己中心的になりがちで、授業を受ける礼儀や学校の規律を守れない傾向すら出ており、勉強する内容が、世の中でどう生かされているかとの視点に欠けていた点も問題と指摘している。
 こうした状況の改善にはまず「社会力」の育成が必要としている。社会力とは、文部科学省が新学習指導要領のねらいとする「生きる力」とほぼ同義。
 具体的改善策については、一律的な授業を避け、習熟度に応じたきめ細かい指導の充実、学ぶ内容の社会的な「意味」や「位置づけ」を会得させうるような学習体系、指導方法の確立を求めており、また自立した判断力、公共への責任感などリーダーとなるための資質の涵養、教養教育の重視、家庭でのしつけ・自分で考え努力し自己達成する力の養成、教育委員会の抜本的見直し、学校の自由裁量権の拡大、企業による人材要件の明示とインターンシップ制度の拡充、生涯学習への積極支援を求めている。
 この提言を受け三月二十四日には提言を取りまとめた委員らによる「二十一世紀の教育を考える」と題するシンポジウムが東京・大手町の経団連会館で開かれた。同協議会の主催、文部科学省の後援。パネリストは諸井委員長のほか、門脇厚司・筑波大学教育学系教授、鳥海巌・丸紅相談役(東京都教育委員)、大星公二・NTTドコモ相談役、小野元之・日本学術振興会理事長(前文部科学事務次官)の五人で、木村孟・大学評価・学位授与機構長がコーディネーターを務めた。この中で諸井氏は企業も受験競争や経済第一主義等を生み出した責任があるとして、教育荒廃の責任をなすり合うのではなく、それぞれによる改善の重要性を強調した。鳥海氏は人事権、配置を含め校長への権限移譲を今後どう進めていくかが課題で、都教委では短期間に異動しすぎるとの批判のある教員の異動についても見直す計画を明らかにした。門脇氏は教育が荒廃した原因は、日本社会の変質にあるとし、教育の再生には大人や教師の社会力も高める「総合的な学習」の成功が不可欠とした。大星氏は初等中等教育段階での感動教育が重要で、学校の中からもっと社会に出て行くことが大切と強調した。小野氏は教員の質は低くない、モチベーションこそ大事で、教員にもっと自分のやりたいことをやらせるべきだと指摘した。フロアからは「教員の評価ではポジティブ評価こそが大事だ」などの意見が出された。
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