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記事2003年3月3日 1882号 (1面) 
中教審基本問題部会 課題の整理ほぼ終了
教育発展に私学の役割大きい
国私立を問わず意欲等に応じ支援を
  中央教育審議会は二月二十四日、東京・千代田区内のホテルで二十七回目となる基本問題部会(部会長=鳥居泰彦・慶應義塾学事顧問)を開き、私学振興を新たに教育基本法に規定することの是非などを討議した。委員からは「国公私立といった設置者のいかんに関わらず、学校の意欲や能力等に応じた支援(イコール・フッティング)の実現を」といった意見や、「私学が自由に活動できることは民主主義の一つの表れ」といった意見が出されるなど、私学振興を教育基本法に位置づけることに異論を唱える意見はなかった。この日をもって残っていた課題の整理が終了したことから、次回三月三日の部会では、答申案等の検討が行われる予定で、新しい教育基本法に私立学校の振興が規定される可能性が高くなった。
 この日は中教審が昨年十一月に「中間報告」を公表して以降、検討すべき課題として残っていた学校の役割、大学など高等教育の位置づけ、私立学校の振興、教育を受ける者の責務などについて討議した。
 このうち私学振興に関しては、私立学校が国公立大学に比べて大きな役割を果たしていること、アメリカの場合、私立大学と州立大学とでは公的資金に違いがないことなどを上げ、イコール・フッティングの実現を求める意見や、「私立学校の存在そのものが日本の教育システムの中で非常に意義があることを理念として出してほしい」との意見が聞かれた。
 また「私立大学は振興されすぎている。むしろ義務教育段階の私立小学校を振興すべきで、憲法二十六条の規定を制限している教育基本法第四条の第二項を再検討すべきだ」との意見もあった。
 この意見に対しては、「GDP(国内総生産)に占める高等教育に対する公財政支出がわが国では米国の三分の一であることをみても、いかに私立大学の頑張りで国は高等教育費を安上がりに済ますことができたか」とする意見が出され、さらにこの意見に対しては「それは逆だ。日本の場合は公的な大学を作らなくても済んだ。公費が出ていないのは確かだが、公費を私学助成に出すのか、国公立大学に出すのかという政策的な選択肢がある。私学の重要性はわかるが、先進諸外国と比べいかに公的な機関が貧弱かを考える必要がある」との意見も聞かれた。
 さらに私学の振興に関しては、田村哲夫委員(渋谷教育学園理事長)から、高等教育や就学前教育等で私学は重要な役割を担っていること、初等中等教育では戦後、私立学校が「中高一貫教育」「帰国生教育」「体験学習」等、常に新しい教育を創造し、国公立学校の刺激となってきたこと、その一方で教育費では国公私立間で大きな格差が存在し、今後更なる学校教育の発展のためにも、今回の教育基本法改正に際して、「私学振興を明確に法規定に明文化する」ことが大変重要だ、との意見書が鳥居会長にあてに提出された。

教育受ける者の責務など討議

 このほか新しい教育基本法で高等教育の位置づけを明確化することに関しては、高等教育だけを取り上げるのはどうか、との意見が出されたが、それに対しては複数の委員から「高等教育の位置づけは今回の改正の目玉だ」「高等教育のことを明確に謳うべきだ」「現行法は明らかに義務教育中心だ。何らかの形で高等教育のことを書いた方がいい」「学問の自由のところに書いたらどうか」など意見が出された。
 また教育を受ける者が、教員その他の指導に従って、規律を守り真摯に学習に取り組むことはもとより、関係者はその趣旨が学校現場で実現されるように努める必要があることを教育基本法に盛り込むことについては、「教育基本法ではなく学校教育法に書くべきだ」「責務より姿勢とした方がよい」「抽象的にふわっと書いた方がよい」「学校教育に子供たちも参画してルール作りをするなど『新しい公共』を作る第一歩にしたらどうか」などの意見が聞かれた。
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