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記事2003年3月3日 1882号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向 英語教育の拡充と大学の魅力アピール
教育の根幹に触れる留学政策
増加する留学生の受け入れ
  留学生部会では留学生政策の包括的議論が続いている。すでに十万人を超える留学生が日本で学んでいるにもかかわらず、その実態は中国、韓国、台湾からの留学生がほとんどで、欧米からの留学生は極めて少ない現状にある。日本の大学の魅力の喪失、大学のアピール不足、受け入れ態勢の不備、大学での英語による授業の未整備などが議論の対象となっている。一方、日本の学生の英語能力の不足から、海外へ留学しても現地での交流や異文化体験に積極的になれない現状もある。日本人の海外への留学、海外からの留学生の受け入れ問題は実に多岐にわたるが、それは日本の教育の根幹に触れる問題でもある。

【大学分科会留学生部会】

 中央教育審議会大学分科会留学生部会(第三回)が二月二十六日に文部科学省別館で開催された。今回は、第二回に引き続いて七人の委員からの発言をもとに、自由討議がおこなわれた。
 内永ゆか子委員は、留学生政策について、受け入れ側の問題もさることながら、日本から海外へ留学するケースについても、しっかりした政策を考えなければならないとして、追跡調査や、さまざまな留学先の国の相対比較、失敗例などを把握して、現状を分析する必要があり、さらに留学生にとって魅力ある大学を広く海外にアピールすることが大切だと述べた。
 鳥飼玖美子専門委員は、英語教育改革と留学について、高校生の留学機会が拡大するなかで、語学学習だけが目的となり、異文化理解に消極的なこと、また日本の高校自身が留学(派遣・受け入れ)に消極的なことも問題だと指摘した。大学留学に関しては、英語力不足の学生が多いこと、さらに教員研修のための留学をさらに推し進める必要があると述べた。
 下村満子専門委員は、自身の留学経験から、学生寮、学生相談窓口の必要性、さらに留学生を支えるホームステイやボランティア制度の必要性を指摘し、留学生の受け入れ体制の制度化とともに、日本人が留学生を自然体で受け入れられるような、国全体の体質改善を推し進めることが大切だと述べた。
 宮田清藏専門委員はODA予算を教育支援に投じるべきとして、現地での留学生試験の実施、留学生の生活支援策の改善、学位の取得を国外・国内両者で認めることや、海外でのインターンシップ制度の確立などを提言した。
 さらに森泉豊榮専門委員は中国人留学生が急増しているなかでの留学生政策の中長期的課題について、また森田嘉一専門委員は、留学生受け入れの現状と問題点について述べた。
 自由討議では、英語教育にはどうしてもネイティブの教員が必要なのに、英会話の教科だけで受け入れ可能で、しかも特別非常勤講師という処遇しかできないという規制はすべきでない。大学や大学院で英語で授業をしようとしても英語ができない留学生が増えて、日本語教育に加えて初級英語のコースまで必要になっている。
 残念ながら英語が世界標準のことばである以上、子供のときから理屈抜きで英語教育をする必要性があり、まず日本語ができてから外国語を教えるべきだという意見があるが、子供の能力は二、三カ国語同時でも十分対応できる。
 高校生のなかには英語圏以外のマレーシアやタイなどに留学して、非常にインパクトを受けて、成長して帰国する生徒もいるが、欧米以外の国への留学はまず親が反対してしまう。教員の海外派遣についても、都道府県の予算や人員の補充の問題で応募者自体が少ない。夜間大学で社会人を受け入れる大学が増えているが、留学生は夜間コースでは認めないのはおかしい、といった多方面にわたる議論が活発になされた。

【大学分科会】

佐々木東大総長会長、副会長に奥島早稲田大学事顧問
評価機関の認証基準検討

 中央教育審議会は二月二十五日、東京都港区の三田共用会議所で第十五回大学分科会を開いた。今回は二期目の中教審となって初の大学分科会のため冒頭、分科会長の選任が行われ、分科会長に佐々木毅・東京大学総長が、副分科会長に奥島孝康・早稲田大学学事顧問が選出された。
 この日の分科会では主に、平成十六年度から大学に義務として課される「第三者評価」に関して、評価を行う機関の認証基準について審議した。また、「今後の高等教育の展望及び高等教育政策について(グランドデザイン)案」についても一部検討されたが、具体的な審議は次回以降に持ち越しとなった。
 さらに今後、平成十三年に当時の町村信孝・文部科学大臣から諮問があった「今後の高等教育改革の推進方策について」のうち「短期大学・高等専門学校から大学院までの高等教育制度全体の在り方について」を審議していくこととなった。
 「第三者評価」を行う評価機関の認証は文部科学大臣が行うものだが、この日の分科会に文部科学省から「認証基準の細目案」が提示された。
 それによると、細目案には、「評価結果を決定するに当たり、大学の教員以外の者の意見も反映させるよう配慮していること」「大学評価基準、評価方法、評価体制等に関する自己情報を公表していること」など細かな規定があることから、委員からは「評価のプロセスにまで立ち入るのは公平ではない」「市場原理に任せるべきだ」など評価機関への国の関与しすぎを懸念する声が聞かれた。
 これに対し同省の工藤文部科学審議官は、「大学が自主性をもち、よりよくなっていくためのもので、こと細かく国が関与したいわけではない。国民に対し信頼を得なければならない。大学人の自省を促しオープンにして、評価者も評価したい。審査を受ける側の不安もあるため、具体性を押さえている。審査する側もされる側もわかりやすいものにするための議論をしていただきたい」との考えを述べた。
 また大学の教員以外の者の意見を反映させることへの配慮を求めていることに関しては、委員から「大学の教員以外の意見の反映は実質的な決定に至るプロセスにあればよいのか」「評価員の名前を示さなければならないのか」といった質問が出された。
 これについて文部科学省は、「評価員を公表する必要がある」との考えを示したが、複数の委員から「行き過ぎではないか」「評価員の届け出は難しいのでは」といった意見が出された。
 さらに評価員の人的数量についての質問もあったが、文部科学省は「明確な数量基準は設けていない」と答えた。
 「第三者評価」とは、大学設置に際して設置認可を弾力化する一方で、国の認証を受けた評価機関が定める評価基準に基づき大学を定期的に評価し、大学の自らの改善を促すためのもので、昨年の中教審で答申されたもの。
 次回の大学分科会は三月六日に開かれる。
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