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記事2003年3月23日 1884号 (1面) 
中央教育審議会 教育基本法改正等で答申
私学の重要性明確に位置付け
国際社会の一員としての意識 「公共」の精神、道徳心の涵養
家庭教育の役割規定 「振興基本計画」もなお検討策定へ
  中央教育審議会(鳥居泰彦会長=慶應義塾学事顧問)は、三月二十日、都内の東海大学校友会館で第三十回総会を開き、「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」の答申をまとめ、鳥居会長が遠山敦子・文部科学大臣に手渡した。今後は教育基本法改正案の国会提出となるが、与党の足並みが揃っていないことから今国会中の提出は微妙な情勢だ。また教育振興基本計画に盛り込むべき内容や学校教育法等の改正は今後、関係分科会等で審議される。
 この日の総会は、米国軍等によるイラク攻撃開始と重なったため緊迫した状況の中での開催となった。
 答申は、前回総会(三月十日)時の答申案と比べ数多くの箇所で字句の修正等が行われたが、基本部分は同じ。
 現行の教育基本法が掲げる「個人の尊厳」「人格の完成」「平和的な国家及び社会の形成者」など憲法の精神にのっとった理念は引き続き大切にしていくとともに、教育全般にわたり現在起きている様々な問題の解決に向け、▽個人の自己実現と個性・能力、創造性の涵養▽感性、自然や環境との関わりの重視▽社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神、道徳心、自律心の涵養▽日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養▽生涯学習の理念▽時代や社会の変化への対応▽職業生活との関連の明確化▽男女共同参画社会への寄与等を新たな理念として同法に規定することが必要としている。
 また教育に関しては、国と地方公共団体とが適切に役割分担していく重要性を規定すること、教員に関しては現行法の規定に加えて、研究と修養に励み、資質の向上を図る必要性を規定すること、家庭教育に関しては豊かな情操や基本的な生活習慣、家族や他人に対する思いやり、善悪の判断などの基本的倫理観の育成など家庭教育の役割について新たに規定することなどを求めている。
 宗教教育に関しては、宗教に関する寛容な態度や知識、宗教の意義を尊重することが重要と規定すること、ただし国公立学校における特定の宗教のための教育や宗派的活動は引き続き禁止すべきだとしている。

振興計画のあり方にも私学振興を

 私学教育に関する記載内容は、前回総会時と同じで、学校の役割を規定する際には、私立学校が幼稚園から大学・大学院までの学校教育全般にわたって、わが国の公教育の重要な一翼を担い、その果たしている役割を考え私学の重要性についても十分に踏まえる必要があるとしている。
 一方、教育振興基本計画に関しては、おおむね五年間の計画として、「確かな学力」の育成、(少人数指導や習熟度別指導の推進等)、良好な教育環境の確保(学校施設の耐震化・老朽化対策等)、教育の機会均等の確保(奨学金制度の充実等)、私立学校における教育研究の振興(私学助成の拡充等)、良好な就学前教育環境の整備(幼稚園と小学校、幼稚園と保育所の連携・推進等)などの整備について方向性を明確にしていく必要があるとしている。答申では具体的な政策目標例(四十三項目)も示されているが、この中には「私立学校における独自の建学の精神に基づく特色ある教育と多様な教育研究の振興を図る」との記述が載せられている。二十日の総会では答申に関して委員から「法律は人の心を律するものではない。今回の答申は改正ではなく改悪だ。振興基本計画も数値目標がない」として異論を唱える意見も出された。

遠山文部科学大臣(右)に答申を手渡した鳥居・中央教育審議会会長(左)

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