こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2003年3月23日号二ュース >> VIEW

記事2003年3月23日 1884号 (2面) 
中央審議会の審議動向 外国人学校卒者に大学入学資格
【大学分科会】
欧米系限定に再考促す声も 私大の半数は既にアジア系を認める

 文部科学省は三月六日、大学入学資格を新たに国内の外国人学校の一部にも認める方針を明らかにした。同日開かれた中央教育審議会の第十六回大学分科会(分科会長=佐々木毅・東京大学学長)で提案・了承された。米国・英国の認定機関から一定水準の教育を行っていると認定された学校に限って認めるもので、これにより欧米系のインターナショナルスクール修了者は大学入学資格を与えられる。
 認定機関は「WASC」(本部・米国)「ECIS」(本部・英国)「ACSI」(本部・米国)の三団体で、いずれも国際的に実績のある団体。
 今回、各認定機関が認定した国内のインターナショナルスクール十六校が大学入学資格の付与対象となる。ただし十六校はすべて欧米系の学校であり、アジア系の学校は含まれていない。そのため、朝鮮学校などアジア系外国人学校の卒業生は従来通り、大学入学資格検定(大検)に合格する必要がある。大学分科会の委員からは「アジア系の学校を排除したという印象を与える」「一定水準を満たしていれば認めるべきだ」との意見が出されたが、同省は「引き続き検討する」と述べるにとどまった。同省は今年度中の告示を目指すが、すでに公・私立大のほぼ半数は独自の判断で朝鮮学校などの卒業生に入学資格を認めていることから、同省への反発は必至の情勢で、今後の成り行きが注目される。この日はまた、前回に引き続き(1)文部科学大臣が第三者評価を行う機関の認証基準(細目)(2)高等教育政策(グランドデザイン)(3)国立大学法人法案(4)国立大学再編統合などについても審議された。
 認証基準(細目)については、前回の審議で複数の委員から出された意見を踏まえ部分的に修正されたものが提示され、了承された。主な修正点としてまず評価体制のうち、評価のプロセスにおいて「評価の決定」にあたり大学教員以外の意見も反映し得るよう配慮するとした案を、「評価の過程」においてと修正した。また評価員については具体的な表現がされていなかったが「大学の教育研究活動に関し識見を有するもの」による評価と具体的に明記された。評価方法については、「書面および実地の調査」としていたが、「実地調査の実施その他の適切な方法」と改められた。また、「法科大学院の認証評価機関の認証基準(細目)」についても併せて提示された。


【初等中等教育分科会】
理科教育設備基準等を承認 教員評価の改善を審議

 中央教育審議会は三月十七日、東京・千代田区の霞が関東京曾舘で第九回初等中等教育分科会を開催した。この日は理科教育等設備基準と産業教育施設・設備基準の改訂案、私学審議会の在り方の改正案(1面に詳報)、高校通信制課程におけるインターネット等の活用案(2面に詳報)などが文部科学省から提案・説明され、いずれも原案通り承認された。
 また三月五日、教員養成部会で審議し文科相に答申された平成十四年度の大学教職課程認定、そのほか学校評価制度の現状や指導力不足教員への対応と教員評価システムの改善状況などが報告、審議された。
 このうち理科教育設備基準に関しては、高校(中等教育学校の後期課程を含む)、盲・聾・養護学校の高等部で平成十五年度から新学習指導要領が実施されるのに合わせて、重視される体験的・問題解決的な学習、また学習意欲を引き出す取り組みに必要な機器等の整備等を行うもの。基準自体の改訂は行わず、理科教育のための設備の基準に関する細目が改訂される。この細目案では、「乾燥用具」「冷却用器具」「電気定温用具」を合わせて「定温器」とするなど品目名の統合、「数学的活動支援用具」の追加、性能向上による数量の減少、パソコンの削除等(別途整備計画があるから)が行われている。
 また産業教育施設・設備基準に関しては、十五年度から始まる専門教科「情報」、「福祉」の促進や、社会の変化等を反映する改訂で、「産業教育施設・設備基準細目一覧案」の審議が要請された。今回の改訂では例えばハードウエア基礎実習室の追加やリハビリテーション実習室等が追加される一方、時代に合わないワープロや蚕体模型等が削除される。
 両細目案とも原案通り承認されたが、中教審委員からは「理振、産振(補助)があり、施設設備を整備していることをもっと社会にアピールすべきだ」との意見も出された。
 この後、高校通信制課程におけるインターネット等の活用案、私学審議会の在り方の改正案が提案された。このうち私学審議会に関しては、「なぜこの時期にこうした話が出てくるのか」「当然のことだし良いことだ」との意見があった。
 教員の評価に関しては、平成十八年度の公務員制度改革をにらんで文部科学省の委託研究や教育委員会での取り組みの現状などが説明されたが、「評価した結果が公表されているかどうかが重要だ。公表しない評価は意味がない」との意見も聞かれた。
 次回の分科会は四月中に開催の予定。


【教育過程部会】
学力等の分析結果報告 部会長に木村氏、教科別部会設置

 中央教育審議会は三月十七日、東京・千代田区の霞が関東京曾舘で第四回初等中等教育分科会教育課程部会を開催した。第二期の中教審発足以降、初めての部会のため、部会長、副部会長の選任が行われ、部会長には木村孟・大学評価・学位授与機構長が、副部会長には横山洋吉・東京都教育委員会教育長がそれぞれ就任した。
 この日は昨年一、二月に実施された小・中学校教育課程実施状況調査結果のポイントや分析の途中経過が報告された。
 これを受けて同部会内に教育の改善を検討する教科別の部会を設置することが木村部会長から提案され、了承された。
 教科別の調査結果の分析途中経過については、国立教育政策研究所の各教科調査官が報告した。
 報告によると、小学校国語では、目的や相手、場面に応じて書くこと、文学的な作品に関しては児童の関心が低いことから興味関心を高める工夫が課題であること、小学校理科では、児童が見通しや仮説を持ちながら実験を行い、決まりを見出し、それが簡単に表現できるものであることについて、理解する過程の指導を重視することが課題であることなどが明らかになった。
 また中学校数学では複数の段階を踏んで考えを進め、解答しなければならない問題、長文の問題に苦しんでいる傾向が見られたが、指導に当たっては反復指導と合わせて公式等がどのような性質に基づいて成立しているかといった意味指導の充実が課題とされた。
 中学校外国語では書くことの指導の重要性が指摘され、聞くこと、話すことの活動の中でも文構造に配慮する指導が重要としている。
 こうした報告に対して、委員からは、「外国語でコミュニケーション能力の重視は文法を軽視することではない」「勉強が好きだとの比率が低い。問題ではないか」などの意見が出された。
記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞