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記事2003年3月23日 1884号 (3面) 
15年度の事業計画決めた全専各連総会
経常費助成実現、専修学校制度改正を
100万人の学生生徒に技術技能教育
大卒、社会人の入学増加

鎌谷 秀男氏


弦本 英一氏

  全国専修学校各種学校総連合会(鎌谷秀男会長=修成建設専門学校理事長)は、三月五日、都内のホテルで第四十八回定例総会・第九十五回理事会を開き十五年度の事業計画と収支予算を決めた。事業計画では経常費助成の実現と新たな教育制度の創設を含む専修学校制度の改正を最重要課題として実現を目指すことになった。

 国による経常費助成に関しては、これまでも専修学校関係者の中にはその実現を期待する声があったが、専修学校等の活性化につながる一条校との格差是正や大学等との相互乗り入れ制度の整備が優先されてきた。
 しかし専修学校と各種学校の学生生徒数が合わせて約百万人となり、とりわけ専修学校の学生生徒数は約七十七万人(平成十四年度)、その中でも高等教育段階である専門課程(=専門学校)には約六十六万人が学ぶなど高卒後の進路として大きな期待を集め、また社会人や大学卒業者の再教育機関としても大きな役割を担うようになったことから、国による助成実現を求める声が改めて高まってきたもの。大学等を卒業して専門学校に入学する学生は、平成十四年度で約二万六千人に上り、専門学校への社会人入学も約一万八千人を数える状況だ。しかし国の財政事情の悪化等助成実現をめぐる環境は厳しい。そのため今後は、調査研究を行い国庫補助実現の裏づけとなる理論の調査研究を進めていく方針。
 一方、設置基準に関しては専修学校制度の中に専門課程(高等教育)、高等課程(中等教育)、一般課程(生涯学習)と三つの課程があり、分かりにくいことや、大学・短大が度重なる設置基準の弾力化(認可から届け出制への移行)等でこれまで以上に新たな学習ニーズに迅速に対応できるようになったこと、専修学校等の設置基準が今後、教育の活性化に足かせとなりかねないことなどから改正を求めていくもの。
 専修学校制度の改正に絡んでは、高度な実践的専門職業教育の要請に応えるため、インターネットの活用を含めた通信教育課程の創設や、専門大学制度の創設等を進めていくことにしている。
 平成十五年度事業計画のうちそのほかの助成関係では、施設設備助成の拡充や、地方交付税の大幅な増額による地方自治体からの助成措置の拡充等を重点目標としている。地方交付税による財源措置では平成十四年度、総額で十八億二千万円が措置されているが、実際、都道府県から専修学校等に対しては総額百五億円を上回る助成が出されており、こうした実態を反映した地方交付税措置が求められている。
 中央教育審議会に関しては、今後、高等教育のグランドデザインを審議する大学分科会や、教育基本法の見直し、教育振興基本計画の在り方を審議してきた基本問題部会に対して、また今後の学校教育法等の見直しなどでも、教育制度上、職業教育の明確化など積極的に専修学校としての要望実現を働きかけていく。

中高年離職者の再訓練 留学生への奨学金改善

 このほか厚生労働省所管から委託されている中高年離職者に対する再就職訓練に関しては、引き続き失業率が高い水準で推移していることから、事業の拡充を要請していく。十三年度では全国で二十三万三千人の委託訓練が実施されたが、そのうち専修学校、各種学校への委託訓練は約十万人に上ると見られている。
 また教育訓練給付制度でも平成十四年十月現在、専修学校で四百五校・二千六百四十六講座、各種学校では三十八校・三百三十三講座が指定を受けている。合わせて公共職業訓練施設との役割分担の明確化、無認可校との区分を明確にする施策の推進等にも取り組んでいく。具体的にはNTTの「タウンページ」で認可校と無認可校が一緒に掲載されていることの改善を求めていく。
 さらに留学生への奨学金や日本育英会の奨学金では大学との間に格差があり、激甚災害法の適用でも一条校との間に格差があることから、それらの早期の是正を関係機関に働きかけていく。
 このほか全専各連の課程別設置者別部会である全国学校法人立専門学校協会、全国高等専修学校協会、全国個人立専修学校協会、全国各種学校協会、分野別専門部会である全国工業専門学校協会、全国語学ビジネス観光教育協会、全国服飾学校協会、全国美術デザイン専門学校教育振興会、全国予備学校協議会、全国専門学校日語教育協会、全国専門学校情報教育協会と連携して、専修学校、各種学校の振興を図ることにしている。


職業教育担う専各 設置基準改正、重要な位置に
全国専修学校各種学校総連合会会長鎌谷秀男氏

 昨年の十二月十三日、中央教育審議会の基本問題部会から全専各連に対しても教育基本法改正等の中間報告に対する意見陳述の機会が与えられ、私と中込副会長、福田副会長の三人が出席し全専各連の考え方を述べた。
 申し上げたことのポイントは、職業教育が戦後教育の中ではあまりにも欠けていた。
 それに対して、まずは職業観の育成、職業教育を教育基本法の中に柱として入れてほしいとお願いした。
 当然、職業教育の中心になるのは専修学校、各種学校である。実際に成果を上げているし、それだけの責務があることを強調してきた。
 職業観の育成、職業育については専修学校、各種学校が担っていき、それを通じて社会に認知されていかなければならない。今日は、それら基本方針を盛り込んだ平成十五年度事業計画案、その裏付けとなる予算案をお諮りしたい。
 事業計画の中では特に、「経常費助成の実現」と「設置基準の見直し」をメーンに考えている。
 経常費助成については、実現するかどうか難しい問題だが、どんな方法をとれば成果が上がるのか、いろいろな考え方があると思うので、そのため調査もしていきたいし、そういうことを通じ理論構築をし、きっちり取り組んでいきたい。
 また設置基準に関しては様々な問題がある。専修学校制度一つをとっても、分かりづらく一般の人から認識されにくい。この点についてきちんと整備してもらい、社会の人にスムーズに受け入れられるような形を考えたい。分野の問題についても調査研究を重ねながら進めていきたい。
 議案を見て頂いたらお分かりのように重点目標がいろいろと並んでいるが、今までの問題点を整理した。今日、議案を決めて頂いたら、具体的にどういう方法でどうしていったらいいのかを鋭意考えていきたい。
 急ぐもの、長期的に考えていかなければいけないもの等を整理しながら、進めていきたい。
 要するに、専修学校、各種学校が職業教育を担い、日本の教育界の中で重要な位置を占めていることは事実だ。
 半面いろいろな問題もあるので、“戦う全専各連”として不都合な部分は改正するよう努力していきたい。


多くの学生生徒学ぶ機関に発展 先進的教育研究に新規補助計上
文科省生涯学習政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室長弦本英一氏

 皆様方のご努力により専修学校、各種学校は多くの学生生徒が学ぶ機関として発展している。
 文部科学省としては、制度的なものを順次やってきているが、会長のお話にあったようにこれからも改善を図らなくてはいけないものはあると思う。長期的に、あるいは短期的に取り組むもの、大きい方向のもの、もう少し小さなもの、いろいろあると思うので、優先度を勘案し、全専各連と相談をしながら進めていきたい。
 平成十五年度の文部科学省の専修学校関係予算に関しては、新たに「専修学校先進的教育研究開発事業」を作った。この事業は、社会が求める即戦力となる人材の育成を図るため、eラーニングの活用や学校間の遠隔教育等、緊急に対応すべき課題に迅速に応えるための新しい教育方法等の開発研究を行うもの。
 この研究開発事業は委託型の事業なので、わが校が受託したいという時は手を挙げて頂きたい。(1)教育方法の研究開発(2)学生ケアのシステム化(3)実践体験授業の推進の三つの領域があり、どの領域をとっても構わない。新しい教育方法の研究開発では、例えば教室外におけるeラーニングの活用、通信制の導入を見据えた新しい教育方法等の実証的研究などを考えているが、通信制でこれからやるとすれば、どうやって実技・実習の部分を、スクーリングの短期間に評価していくのか、ということをクリアにする必要がある。学生ケアのシステム化は、キャリアカウンセリングにだけとらわれず、専修学校の学生が社会人、大学卒業者など多様化しているので、そうしたことに対応した就職指導等も可能だ。
 実践体験授業の推進は、今のインターンシップが短期間、学校の外に出かけ、参加人数も限られるので、授業の一環として疑似体験的なものを取り込めないかというもの。
 例えば企画から販売までのプロセスを取り入れたものを長期の授業として行う。また授業の中で各種コンテストに取り組んでいく。学生が自発的にテーマを探して自由に実践していく授業等が考えられる。

 委託型の事業には、「専修学校社会人キャリアアップ教育推進事業」「専修学校ITフロンティア教育推進事業」「専修学校先進的教育研究開発事業」があり、これらは複数の学校で組んで行う事業。申請代表者は学校法人立の専修学校にしたいと考えているが、組む相手は個人立専修学校、各種学校、高等専修学校も可能だ。
 委託事業に関しては、四月十一日、設備関係補助金に関しては、四月二十五日を、都道府県から文部科学省への申請の締め切りとしている。したがって都道府県の締め切りはもう少し早くなる。早めに都道府県に希望を出してほしい。
 中央教育審議会に関しては、大学分科会で高等教育のグランドデザインを検討することになっているが、まず大学分科会でしばらく方向を検討してからその後、制度部会、将来構想部会に審議を下ろすということになる。
 専門大学構想に関してはまだしばらくまとまるには時間がかかると思うが、今日の議案の中にも大学院レベルの専門職業機関の検討などがあったが、実現できるところは実現できるように工夫していきたい。
 個人立の税制改正は引き続き十六年度に向け、取り組みたいと考えている。


【全国学校法人立専門学校協会が定例総会】

高等教育機関として地位確立 大学との格差是正専門大学制度を創設

 全国学校法人立専門学校協会(鎌谷秀男会長)は、三月六日、東京・千代田区内のホテルで定例総会を開き、十五年度の事業計画等を決めた。
 十五年度には中央教育審議会の基本問題部会や大学分科会などに働きかけて、専門学校の高等教育機関としての地位を確立する。具体的には教育基本法、教育振興基本計画に職業教育が大きな柱として位置づけられることと、今後審議が予定されている高等教育に関するグランドデザインで専門学校の確固たる位置づけを図る方針。
 また専修学校制度の見直しに関しては、設置基準上で高等教育機関としての使命や目的を明確にし、更に職業教育の分野で実績を上げ、大学との格差是正を図る方針。その際、専門大学制度の創設、専門学校における通信教育の制度化、専門学校卒業生や大学・短大の卒業者を対象に高度な実践的専門職業教育の要請に応える大学院レベルの「高度職業教育機関」の導入研究など新しい制度の提案を制度全体の見直しの起爆剤にしていく考え。このうち専門大学制度の創設に関しては、総会前に行われた同協会の常任理事会で協会内に設置されていた専門大学推進委員会から「専門大学に関する答申」が提出された。答申を受け取った鎌谷会長は、「全専各連と合同で正副会長会を開き、内容を検討していきたい」と語り、具体化に向けて新たな委員会の設置等も視野に入れて歩を進めていきたい考えを強調した。
 専門大学に関しては昨年七月、同委員会の発足段階で運営形態を学校法人として理事会、評議員会を設けるほか、産業界の声を取り込む産業評議員会(仮称)の設置、第三者機関による客観的評価・認定等が構想されている。また専門学校における通信課程の創設にも全力を上げて取り組んでいくことにしている。
 さらに全専各連と足並みを合わせて国の経常費補助金等の実現を目指す。この経常費助成が実現すると、現在、都道府県から出されている地方交付税を財源とする運営費補助金はなくなることになる。そのほか留学制度や日本育英会の奨学金支給学生数での大学との格差是正を求めていく。雇用対策に呼応した社会人教育の推進も関係官庁等に働きかけていく。

全専各連総会で課題実現に向け強い決意を語る鎌谷会長


総会では通信教育課程創設の必要性も確認された


総会前の常任理事会では専門大学に関する答申が鎌谷会長に提出された

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