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記事2003年3月23日 1884号 (4面) 
法科大学院の取り組みを聞く (1)
早稲田大学法学部部長 加藤 哲夫氏
高度な専門職業人育成
国際公務員など法曹資格もつ専門家

早稲田大学
法学部長
加藤哲夫氏

  ―早稲田大学の法科大学院設立に当たっての基本的な考え方、目指す方向性についてお聞かせください。

加藤学部長 本学部は明治一五年(一八八二年)に東京専門学校法律学科として創立されて以来、今年で百二十一周年を迎えます。その間、高い理想と進取の精神を持った多数の優れた法曹を育成し、社会に輩出させてきています。現在では、日本の司法の一翼を担っているという意味で、本学としても積極的に法科大学院における法曹養成に携わっていこうと思っています。それが社会的責任と考えております。本学の法科大学院は高度専門職業人としての法曹(裁判官・検察官・弁護士)にとどまらず、これからの日本の社会が要求する法曹資格を持った法律専門職(国際公務員、国家公務員・企業法務担当者など)を志望する人材の育成も目指します。

―法学部と法科大学院との関係はどうなるのでしょうか、法学部の改革はどのように進めているのでしょうか。

学部長 法学部と法科大学院との関係は、現在法学部を持っている大学は全国で九十前後ありますが、学部と法科大学院の位置づけを区別しなければならないという非常に重要な問題があります。基本的には法学部で法律的な基礎知識を身につけた者が、法科大学院に進学するということが理想的な形と考えております。この点で、幅広く人材を育成するという法学部としての色づけが後退するのではないかというという意見もありますが、法学部の果たして来た役割を考え、法学の基礎的教育を徹底して行ってきたことを考えると、その役割は決して後退していません。
 次に、法学部の改革ですが、カリキュラム改革を現在行っているところです。国際教育学部が立ち上がりますが、全体として千人を超える学部定員をそれ以下に抑え、二〇〇四年度から法学部は七百人の定員にします。法学部で基礎教育をきちんと行うにはどうしたらよいかという点ですが、少人数教育を行っていく予定です。方向としては、特にゼミではそうですが、学生一人ひとりの顔がみえるシステムを考えたい。四年間でバランスの取れた一貫教育を行い、教員が積極的に学生にアプローチするようにしたい。

ショッピングモール方式 知的財産、環境の分野で特徴

―法科大学院のカリキュラム上での特徴はどんな点ですか。

学部長 学生が将来の進路との関係で求める専門的知識を得ることができるように、多くの専門分野を備え、そこから自由に科目を選択できるような「ショッピングモール方式」を考えています。スタッフは七十人ほどになります。その中でも、知的財産、環境などの専門分野で特徴を出し、専門性を生かして、早稲田らしいものを展開していきたい。附属の公益法律事務所を設置し、臨床法学教育(リーガルクリニック教育)にも力を入れます。実務家と研究者が一体となって、生のケースを見ながら、困っている市民の目線に立って考えることのできる教育のあり方を検討しているところです。

―法科大学院入学者の選抜方法はどのようなものになりますか。

学部長 入り口の問題として二つの考え方があります。一つは、本来、入り口は一つで基準は三年コース。これは二年で修了したい希望者は法学既修者認定試験を受け、十分に既修者としての能力があると認められた者については、履修免除をし、既修者認定するという方法です。もう一つは最初から既修者と未修者とに分けて、二年(既修者)と三年(未修者)の両コースを併設するもので、入り口は二つになります。いずれの制度設計をとるかは、なお検討の余地があるかと思っています。
 選抜試験は、一次試験で法科大学院が用意する進学調書、統一適性試験の成績、ステートメント(これまでの学業経験、動機などを記したもの)、推薦状、学部成績、語学能力など学生がアピールしたい資料で書類審査を行う。合格者に対して、二次審査で面接試験を実施し多面的な能力をみる予定です。

―法科大学院の定員はどうなっていますか。

学部長 定員は一学年で三百人(収容定員九百人)です。このうち、社会人は三割程度が目標と考えています。

学費の格差を考慮 奨学金の増額など

―専任教員・実務家教員の割合はどうですか。

学部長 専任教員は約七十人です。このうち、二割を実務家教員として確保しています。

―法科大学院の授業料は。

学部長 来年四月から国立大学が独立法人化しますが、これを受けて私学との学費の格差を考える必要がありますが、一つは学費の格差がないように各大学が同じ条件で出発できる環境を整える必要があります。二つ目は学生にとって経済的負担が伴うので、奨学金の充実が考えられます。本学では学生に不安を与えないようにと、独自の大隈奨学金や小野梓奨学金があります。これらの奨学金を充実させ、学費に見合った授業の質を高めたいと思っています。

―ところで、このほど開かれた法科大学院協会の総会で決まったことを教えてください。

学部長 この協会の設立準備会の中に「入学選抜に関する検討委員会」があります。この委員会でスケジュールなどについてアンケート調査を行いましたが、協会としは各大学の入学試験のスケジュールについては、情報交換する必要があるかと思います。
 また、統一適性試験について現在、その実施団体として大学入試センターと日弁連法務研究財団が研究と分析を行っています。両団体の説明を聞いて検討した結果、協会としては大学入試センターを推薦するということになりました。しかし、最終的な判断は各法科大学院の自主性に任せるということになると思います。
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