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記事2003年3月23日 1884号 (8面) 
立教大学のコミュニケーション能力育成教育
立教V-CampusベースにIT活用
  全国の教育機関におけるIT(情報技術)の導入は自覚ましいが、教育の現場ではこれをいかに実際の教育・研究活動に取り入れ、きめの細かい教育に利用していくのかという模索が続いている。立教大学(本部・東京都豊島区)では、早くからITの教育分野への利用に着目し、インターネット技術を使った教育・研究用情報基盤を整え、池袋キャンパス、武蔵野新座キャンパスに次ぐ「第三のキャンパス」として「立教V-Campus」(立教バーチャルキャンパス)をスタートさせるなど積極的な活用に取り組んでいる。本紙では同大学のIT活用教育の一端を、武蔵野新座キャンパスにあるコミュニティ福祉学部と観光学部で取材した。


【教育ツールとしてのIT】
情報化、グローバル化に対応 学内外へ情報発信の基盤に

立教大学では1999年度から、ITを活用した多彩なコミュニケーション環境と効率的な情報提供を通して、教育・研究活動支援、生涯教育支援、コミュニティ形成支援を目的とした「立教V-Campus」(立教バーチャルキャンパス)をスタートさせた。この「立教V-Campus」は、それまで研究用として運用してきた学内のインターネット利用を学生、教職員、校友までを対象としたネットワークに拡大するとともにイントラネットと融合した同大学独自の情報環境を実現したものだ。
 同大学ではこれからの社会人に必要なスキルを「情報化とグローバル化に対応できる豊かなコミュニケーション能力」であると考え、ITを利用しながら21世紀に対応できる学生の育成に取り組んでいる。
 「立教V-Campus」では、学生と教職員の全員が電子メールアカウントと、ホームディレクトリを持つことが可能で、教育・研究への活用のみならずサークル活動などの正課外活動においても、学内や学外に対する情報発信の基盤とツールを活用できる仕組みになっている。このようなバックグラウンドを持つ教育実践活動の一環として行われているのが埼玉県新座市にキャンパスを持つコミュニティ福祉学部と観光学部におけるコンピュータ活用授業だ。
 コミュニティ福祉学部は「人間の尊厳のために」という理念を掲げ、福祉を軸とするコミュニティ福祉の形成を目指している。一方、観光学部はわが国の観光教育の中心的存在として、学際的教養、豊かな国際感覚、確かな専門知識を兼ね備えた人材を育成している。
 現在、武蔵野新座キャンパスのコンピュータ教室ではOS(基本ソフト)はUnix、Windowsに加え、マッキントッシュ(以下マック)のMacOSも使用されている。
 マックのマシンはこの4月に最新型のiMacが導入される予定で、さまざまなOS環境を活用した教育の実践は新しいステージに入る。


コミュニティ福祉学部・観光学部 学生個人のホームページ制作

小林悦雄教授の話

 本学では「立教V-Campus」をプラットフォームとして学生全員がeメールアカウントと、サーバにディレクトリを持てるようになっています。このような環境のなかで私が教えている学生はコンピュータ教室に設置されているマックを使って個人のホームページを作っています。これは英作文や英語のリーディングの授業の一環ですが、できあがったホームベージは一覧にして、だれでも見られるようにしています。このようなマルチメディアを取り入れていなかった時代の英作文の授業は、教師が読んで添削するだけになりがちでしたが、ホームページにアップすることによって学生同士で閲覧することができるようになりました。文章だけでなくイラストなども取り込んで楽しいページになっているのでクラスの仲間もクラスメイトの英文を読んでみようという意欲につながっているようです。
 また、こうした学生の作品データを大学のサーバに保存しておけば、卒業後にも閲覧でき、インターネットで世界に向けた情報発信にも使えますし、イントラネットを使えばキャンパス内だけの情報発信に使えます。
 こうして、自分が勉強したことを公開することによって、より洗練された独創的な作品が生み出されていきますが、このような実践的な活動が、情報化時代、グローバル化時代に対応できる能力を高めることにつながっていくのではないかと考えています。

音声加工できるコンピュータ 教材づくりに活用

 実用的な語学にはリスニングと、実際に声に出すということが大切なことはいうまでもありません。テープに録音したネイティヴの発音を聞き、自分の発音もテープで聞くという学習方法は今でも有効な方法ですが、コンピュータで音声・ビデオファイルとして扱えるようになってからは、簡単に繰り返し使用ができるようになり、教育方法は格段に進歩しつつあります。
 私自身は、1990年の初頭から音声加工ができたマックは大変魅力的で、ハイパーカードでプログラミングをして、ディクテーションなどのドリルを作ったり、テストに使ったりしました。
 その後ホームページの作り方を勉強し、テキストベースのデータをサーバに送ってアップするようなことをしていましたが、これも授業に利用できると思いました。
 そこで、学生にワープロで英作文を書かせ、添削を行ったうえでサーバに送らせ、学生自身がウェッブページを作るような活動を始めたわけです。当時はまだ大学全体のV-Campusシステムが整備される以前で、個人的に使っていたマックサーバに学生自身のディレクトリを作ってやって学生自身でページをアップできるようにしたり、情報処理の長島忍教授にメールで文書を送るだけでホームページを作ることのできるシステムを開発していただき、これを使っていました。
 この活動は学生の興味を引き出すことに成功しただけでなく、学生間、学生・教授間のコミュニケーションのルートを多く持つことによってインタラクティブな利用を進めることができ、結果として学習の習熟度を深めることができたと感じています。特に外国語教育においては、教員だけでなく、学生自身が自分の外国語のスピーチを録画し、それを見たり聞いたりすることによって、発音や表現を向上させることが重要です。
 また、卒業後、外国語でプレゼンテーションをする機会もこれからはますます増えることが予測されますので、そうした教育に対応するためにはマルチメディア関係のハード、ソフトを新たに買い足さなくても、発表用の映像、音声資材作成が簡単に、しかも美しくできる機種が求められています。さらに現在はe-learningの時代になってきており、音声とビデオを組み込んだオンライン学習用のコースウエアを簡単に作れ、テストがコンピュータ教室で容易にできるような、e-learning用教材開発にも容易に使えるコンピュータが、学校で要求されていくことになるでしょう。


iMovieを使って取り込み、編集 ホームページを動画化

ハーバート・ドノヴァン講師の話

 私は立教大学の観光学部で環境教育と英語教育を担当しています。私がマックを使って授業を行うのは一言で言うと大変使いやすいからです。英語のクラスでは数人のグループをつくってそれぞれにテーマを決め、ディスカッションをしたうえで英語によるプレゼンテーションを各人が行いますが、その様子をデジタルビデオカメラで収録し、マックのiMovieを使って編集し、ホームページで公開しています。
 iMovieを使うと、これまで動画を扱ったことのない学生でも、授業の最初の一時間で撮影してマックに取り込み、次の一時間で編集して作品にするまでが容易にできてしまいます。出来上がった動画で見ると自分のトークがネイティヴのそれとどのように違うのか、かなり近いのかがはっきりと分かります。また、しぐさや姿勢、目線などがどうなっているのかも具体的に分かり、仲間との比較もできます。
 グローバル化の波にさらされている日本で観光にまつわる仕事を目指す学生は、外国語できちんと表現できる能力を獲得することが非常に大切です。また、プレゼンテーションの表現力を高めて動画や写真、音声などを多彩に、豊かにデザインできる能力を身につけておくことも重要です。マックにはiMovie、iPhoto、iTunesなどの動画、写真、サウンドの取り込み・加工が簡単にできる機能が最初から備わっているので、いちいち理論や操作のレクチャーをしなくても、すぐに創造的な作業ができるので教育の場面で使うにはうってつけだと思います。
 環境教育ではフィールドワークも盛んに行いますが、今後はそのような活動の様子も動画や写真、イラストなどで表現された作品として制作していきたいと考えています。また、ポスターやプレゼンシートなどの紙ベースの制作活動にもマックを活用していきたいと思います。4月から入るiMacには大きな期待を寄せています。


OS環境は三通りのプラットフォーム
教育・研究支えるうえで有効


 今回取材した立教大学の情報環境にはUnixとマック、Windowsの三通りのプラットフォームがある。この4月から導入されるiMacにはUnixベースに開発されたMacOS Xが搭載されており、Unix、Windowsとの共存が非常に楽になり、より幅広い使いこなしが可能となる予定である。
 総合大学としてさまざまな学部、研究室のニーズに応えていく必要性から、異なるOSのプラットフォームの設置は不可欠だが、お互いにデータなどを共有し活用できる環境がそれぞれのOSでサポートされてきていることはこれからの教育・研究活動を支えていくうえで大変有効だ。
 システムを管理しているメデイア事務室では「今後は、MacOS Xとウィンドウズが、アクティブディレクトリの下での統合された運用が可能となるので、これまで蓄積されてきた資源の共有が容易になる。Unixを含めた三つのプラットフォームの得意分野をうまく利用して、よりよい環境にしていきたい」と考えている。

簡単、安心が教育現場に重要
高品質で多彩な表現活動が可能に


 同校のマックに対する評価のポイントは「ユーザーインターフェースの良さ」と「安定した動作」「セキュリティの高さ」だ。ブロードバンド時代を迎えて動画や音声をネット上で配信したり、プレゼンテーションにおいても、より多彩で洗練された表現が求められる時代において、コンテンツ作成が容易に行え、かつ安全にネットワークの運用ができるハードウエアとソフトウエアは必須の条件だ。MacOS Xの安定性については各方面からの高い評価があり、もともと大学で使用されてきたUnixの系譜にも乗っている。また、こうした、ネットワーク上における大学のシステムはセキュリティの面でも注意が必要だ。UnixベースのOSとしてIPv6、IPSec、SSL、SSH2といったネットワークとセキュリティの標準機能がサポートされているのは心強い。管理の容易なマックは、教員が教育・研究に専念できるという意味においても貴重な存在だ。
 新年度に導入される新型のマックには前述したMacOS Xが搭載されているほか、動画、写真、音声を簡単に取り込んで加工できる各種のソフトウエアがプレインストールしてあるので、高品質で多彩な表現活動をスムーズにこなすことができ、各種のコンテンツ制作に、教える側も教えられる側も本来の目的である教育に集中することができると考えられている。このような環境で新年度をスタートする立教大学コミュニティ福祉学部と観光学部では、現在行われているクリエイティブな教育研究活動がより高いレベルで展開されるであろうことは想像に難くない。

独自の教材作り高レベルの教育

 私立学校では大学に限らずその学校独自の教材を作って、より高いレベルの教育を目指す学校が多いので、これまで蓄積されてきたノウハウをデジタル化してコンテンツとし、さらに加工したり共有したりしながらよりハイレベルな教育へと展開していく必要があるだろう。また、児童、生徒、学生の創造性を伸ばして個性的で多彩な表現力を身につけさせることの重要性が盛んに語られる今日の教育機関において、パソコンを教えるのではなく、パソコンを使って何を教えるのかに集中できるシステムの選択も重要であることを確認することができた。


アップルコンピュータのアカデミックサービス

 アップルコンピュータ株式会社(本社・東京都新宿区)では教育機関に所属する大学生、教職員の個人購入用特別価格を設定した窓口を開設している。アップル製品は全国のショップや大学生協などでも購入できるが、これらを利用しにくい大学生、教職員のためにApple Store for Education(アップルストア フォー エデュケーション)と呼ばれるサービスを展開している。この窓口を利用すると、電話とインターネットで最新のマックが学校、自宅に居ながらにして購入できる。特別価格の対象となる商品はアップル社のマッキントッシュおよびディスプレーなどの周辺機器で、更に自分の好みにカスタマイズすることも可能だ。また、最新のOSであるMacOS Xに対応した各種周辺機器、ソフトウエアやアクセサリーも同時に購入することができる。この窓口では購入の際いろいろと相談ができるのも非常に便利だ。
 「アップルストア フォー エデュケーション」の詳細については次の通り。

・特別価格の対象
 購入製品を実際に使用する学生、教職員個人。

・取り扱い製品
 マッキントッシュ、周辺機器及びソフトウエア。更に最新のMacOS Xに対応したサードパーティー製アクセサリーやソフトウエア。

・支払い方法
 クレジットカードと銀行振り込み、コンビニエンスストアでの払い込みをはじめ、個人向けにはオンラインで申し込み可能なアップルローン、法人向けにはリースや後払いにも対応しているので、顧客のニーズに合わせた支払い方法が選択できる。

・最新情報
 製品を購入しないユーザーでもアップル ストアに登録すると新製品やキャンペーンの最新情報がメールで入手することができる。

・受け付け
 製品に関する問い合わせや、購入には電話で平日の朝9時から午後9時まで(土曜日も朝9時から午後5時まで)受け付けている。またインターネットでは24時間体制で対応している。

・問い合わせ・申し込み先
 アップルストア フォー エデュケーション(0120-27753-2)アナウンスに続いて「5番」を押す。
WEB:http://www.apple.co.jp/Store/education2/
 なお、学生、教職員個人でなく学校の予算で購入を検討している場合はアップルビジネス・エデュケーション営業や法人向けの購入窓口アップルストア フォー ビジネスも設置している。

・問い合わせ先
 0120-27753-1(0120-APPLE-1)

・キャンペーン関係の情報
 ・Microsoft Office v.X特別限定モデルキャンペーン
 期間中、Microsoft Office v.X(ワード、エクセル、パワーポイント)付属の特別モデルを提供中。4月7日(月)まで。
 ・ダブルメモリキャンペーン
 期間中アップルストアでマックを購入すると搭載メモリ容量を割引価格で2倍にカスタマイズするサービスを実施中。3月28日(金)まで。

コンピュータ活用授業が進む
立教大学武蔵野新座キャンパス


現在のマックは4月から最新のiMacに更新される


立教大学コミュニティ福祉学部教授小林悦雄氏の
ホームページ


観光学部1年・千葉將満君のホームページ


観光学部講師・ハーバート・ドノヴァン氏


4月から導入されるiMac

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