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記事2003年3月13日 1883号 (3面) 
波乱少ない2003年私大入試の出願状況
来年入試の関係で国公立大に匹敵する私大へ出願増える
私大の延べ志願者は増加 一般入試 国公立大を上回る
  二〇〇三年の私立大学入試への出願状況を総括すると、飛び抜けた花形もなければ、極端な不人気もない、波乱の少ない入試の年だったといえる。
 今春の大学・短大受験生は現役七十二万六千人、浪人生は十四万人で合計八十六万六千人の実人員と推定される。これは昨年の八十七万七千人より一・三%減っている。しかし、私立大学の延べ志願者数は併願によって昨年より増えた。一般選抜入試だけについてみても一〇一・三%であり、国公立大学の一〇〇・五%をやや上回る。
 増えた原因はセンター試験の影響が大きい。代々木ゼミナールが志願者数を公表した二百十一私立大学(募集定員では全私大の七九・七%)を二月中旬で集計したところでは、昨年に比べて一〇二%の志願状況となった。志願者数の対前年比指数を分析すると、通常型入試は九八・七%と減っているのを、センター試験利用入試が一一四・六%と盛り返し、総計でもプラスとした。今春もセンター試験利用に新規参入した私大があったが、以前から継続して利用してきた大学の分だけでも一〇四・三%と増えている。センター試験の出願者六十万人という数字は、実受験生数の八十六万六千人から推薦入学者の数を差し引くと、受験生全員をカバーするといってもよいのが昨今の大学入試戦線の状況である。そのセンター試験が今年はやさしかった。これは多くの受験生に「できた!」という気持ちを一瞬抱かせた。そして国公立大学へ強気の出願となる。しかし、自分ができた時には他人もできている。自己採点を集計した予備校の合否判定で志望校合格ラインの厳しさを指摘されると「これはいけません」と、あわてることになった。しかも来年は国立大学は五教科七科目に足並みをそろえることが予想され、一浪しても合格できる保証はない。そこで国公立大学に匹敵する私立大学へ急遽出願するという図式が生まれた。私立大学出願の地区別集計を見ると、全国六ブロックのうち近畿地方だけが昨年比マイナスであり、個別大学でも関関同立の銘柄校がすべて減少している。その原因は関西の私立大学が他のブロックに比べて出願締め切りが比較的早く、国立大学の合否判定を受験生が予備校から聞いた時には出願が間に合わなかったという事情がある。東京なども個別大学では昨年比増減がばらついているが、これは試験科目による受けにくさや前年増減の反動などといった個別事情に応じたものであるのに対し、関西では銘柄校がほぼ軒並みマイナスを記録している。

花形も不人気もない 医療・保健、薬学系は志願増

 学部・学科系統別では花形も不人気も目立たないという今春の状況を象徴的に表している。しいて人気のある系統といえば職業と直結している医療・保健系が挙げられ、中でも薬学は志願者数の多さから、武蔵野女子大学が来年薬学部を新設し男女共学化して武蔵野大学に改名するなど、今後も薬学部新設の傾向は続きそうである。
 ひところ人気頭打ちの感を呈していた人文系にやや人気復活の兆しが見られるのは、どうせどこへ進学しても就職が安心といえるほどではなく、就職で選べないのなら自分の興味のある方を選んだ方がいいと、開き直り気味に原点に返るような傾向がみられる。文系では東京の私立大学はやはり強い。地方国立大学の文系学部より教授陣がそろっていて人数も多いし、キャンパスの再開発で学生生活の環境整備に力を入れていることが訪問した学生にもすぐ分かるからである。女子大学はしばらくジリ貧傾向が続いていたが、ここにきて増えるところが出始めた。女子大学は有名なわりに入学がやさしくなりすぎたのでお買い得と見られたようだ。
 昨年、法科大学院で関心を持たれた法学系の上昇機運は一年限りで、ほぼ現状キープはしているものの、あとも上がり続けるということにはならなかった。楽に弁護士になれるかと思っていたら、よく考えてみれば、大学院の入試はあるし、学部より二〜三年は長くかかるうえに学費は学部より高くつく。その後の司法試験には法科大学院の定員の半分しか受からないということが分かった。
 学費返還訴訟問題で最近、入学辞退者の授業料は返還するが、入学金は返さないという対応が私立大学側では主流となってきたようだ。その中で入学金も返すという大学も出たけれども、受験生の反応は返還によって影響は受けず、応募者数は増やせなかった。
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