こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2003年2月3日号二ュース >> VIEW

記事2003年2月3日 1879号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向 学部学科17分野設置届出に
設置基準改正
構造改革特区支障なければ校地面積減可能
入学定員超過率1.3以上認めぬ
  中央教育審議会の大学分科会(第十四回)が一月二十三日、東京都内の三田共用会議所で開催された。審議会では「大学設置基準等の改正について」の答申案が決定した。

【大学分科会】

 そのなかで「構造改革特別区域においては、地域の集積が高い等の特別な理由があって、大学・大学院の研究に支障が生じない場合は、校地面積を減ずることができる」とされた。
 また、大学設置基準に関わる告示に関する事項のなかで「申請年度から過去四年間の入学定員超過率の平均が学部単位で、当面一・三以上(現行は一・五)の場合は、原則として大学等の設置及び収容定員増は認めないこと」としたが、経過措置を講ずる必要があるとの委員の発言があり、経過措置について今後も検討することとした。
 さらに「認可」ではなく「届出」で学部・学科等の設置が可能な分野として、文学関係、教育学・保育学関係、社会学・社会福祉学関係、法学・政治学関係、経済学関係、理学関係、医学関係、歯学関係、薬学関係、保健衛生学・看護学・医療技術関係、工学関係、農学関係、家政学関係、美術関係、音楽関係、体育学関係、獣医学関係の十七の分野が決まった。また既存の学部・学科等を基礎として、新しい学部・学科等を設置する場合の取り扱いについて、当該学部・学科等の教員から、新たな学部・学科等の教員基準の二分の一以上が移行する場合は「届出」とすることが決まった。

特色ある教育の大学支援

 平成十五年度から予算が付く「特色ある大学教育支援プログラム」についての案が新たに提出された。
 これは個性的な大学作り、国際競争力の強化、教養教育等の充実が求められるなか、各大学が教育改善に取り組むことを一層促進し、この事業により、教育改善の取り組みについて、各大学のインセンティブになるとともに、他大学への参考になり、各大学の取り組みが活性化することが期待されている。
 このプログラムは国公私立大学(短大も含む)の特色ある教育の取り組みを、実施委員会(仮称)が選定し、さらなる充実のために資金を交付するというもの。
 原則として、これまでの取り組み実績のあるものが対象となるが、これを契機に体系化したり、より発展させようというものも対象になる。運営体制は、大学基準協会を中心に、国公私立の大学関係者、専門家、有識者からなる実施委員会が当たる。これについての関連支援経費は、百三十七億円を予定している。今年四月に実施委員会を発足させ、六〜七月ごろには公募を開始する予定。九月には選定結果を発表し、十〜十二月には支援経費を配分したいとしている。平成十六年の初頭には実施委員会によるフォーラム等の開催も予定している。

【基本問題部会】

教育基本法、宗教教育審議
日本宗教連盟、中西・京大教授から意見聴取

 中央教育審議会は一月二十二日、東京・千代田区のグランドアーク半蔵門で第二十二回基本問題部会を開いた。中間報告「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」に関連して、財団法人日本宗教運盟と中西輝政・京都大学総合人間学部教授から意見聴取を行った。日本宗教連盟は学校における宗教に関する教育の重視を訴え、中西教援は戦後、教育基本法が前提としてきた日本の社会は同法の理念を大きく逸脱、同法は機能してこなかったと批判した。
 日本宗教連盟からは新田邦夫理事長(教派神道連合会理事長)が出席。新田理事長は、信教の自由を保障する政教分離原則は堅持しなければならないが、同法九条二項に「特定の宗教のための宗教教育」とあるのは、内容的には「特定の宗教のための宗派教育」のことであって、宗教教育全般を禁止すべきではないとの考えを示した。そのうえで、今後の中教審の審議においては「特定の宗教のための宗派教育」といった表現を用いるなど同法の改正を含めて十分な審議を尽くすよう求めた。また、宗教に関する教育は人間にとって重要だと強調し、教員資格取得課程および教員養成課程で国内外の宗教について幅広く学ぶことができるカリキュラムの導入など、教員の養成や充実した教材開発ができるシステムを早急に整備する必要性を指摘した。
 中西教授は現代日本の精神状況は三つの点で大きくバランスを欠いていると指摘。これらのバランスがある限度を超えていずれかに傾いた時、その文明全体の衰退が始まると述べた。一点目はモノと心、物質と精神のバランスをどう保つかが問われているとし、二点目には進歩と伝統とのバランスを挙げた。三点目には個人と共同体のバランスを挙げ、現行の教育基本法はなぜこの点に言及しなかったのかと批判。個人と共同体、家族、郷土、人類社会との関係、また、個人を超えた人間の絆について、日本の教育の根本的な理想について、法律の中に明示的に謳われなければならず、直接的な表現を盛り込むべきだと求めた。また、グローバル化の進展の中では、国家という国民共同体の重要性が高まるとし、国家をどう考えるかが今日の日本の改革課題となっていると述べた。
記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞