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記事2003年2月3日 1879号 (4面) 
生涯通じて学習できる私大通信教育
25万人が学ぶ私立大学通信教育 特色と現状
  私立大学通信教育は学びたい人が仕事と両立させながら生涯を通じて学習できるシステムとして昭和二十二年に法政大学で初めて取り入れられ、その後、各大学に広がって、五十余年の実績を積んできた。情報化を中心に変化の激しい産業社会では、働きながら高度な新知識を吸収したいという社会人の要求が強まっているが、自宅や職場から通学できる範囲に必ずしも希望する高等教育機関がないことや、職場環境によっては通学可能な時間帯が限られるなど、地理的・時間的制約から実現に困難を感じている社会人は少なくない。そんな悩みが通信教育によって緩和されることになった。平成十四年度現在、二十七大学、十三大学院、十短期大学の通信教育で、全国で約二十五万人が学んでいる。

途中年次へ編入も
印刷教材やメディア利用で学習


 大学や短期大学の入学資格は卒業免状を取得できる「正規の課程」に入学するには、高校卒業かそれと同程度の学力を必要とされる。すでに大学や短期大学を卒業したものや中退したもの、また高等専門学校や専門学校の卒業者などに対しては、卒業証書や成績証明書など必要書類を添えて申請すれば、途中年次へ編入学する道も開かれている。多くの大学や短期大学では毎年四月(前期生)と十月(後期生)の二期を入学時期としている。入学選考は大学・学部や短期大学では筆記試験はなく原則として書類選考だけで合否を決める。
 学費は通学課程に比べると安い。平成十五年度の大学の入学時学費は、選考料・入学金・施設費などを合計した入学諸費が三〜五万円前後、授業料や補助教材費、科目試験料などを合計した教育費は十万円前後から芸術系などやや高い方で二十万円台。短大の場合には一般的に大学よりもう少し安くなっているといったところである。ほかにスクーリング費を別途徴収する大学が多い。
 大学通信教育の学習方法には(1)印刷教材等による授業(2)放送授業(3)スクーリング(面接)授業(4)インターネットなどのメディアを利用して行う授業―の四つがあると設置基準で定められている。
 印刷教材等による授業は大学通信教育の中心的な学習方法で、大学側が指定したテキストを学習し、与えられた課題に沿って学習報告リポートを作成して提出、添削指導と評価を受ける。リポートは二千字程度の論文形式を一回提出することで一単位。四単位の科目なら四回くらいリポートを提出することになる。
 こうした印刷教材による授業だけでは不十分な科目や学習内容もあるため、面接授業(スクーリング)や放送授業が行われている。卒業のためには卒業所要単位の約四分の一(大学なら約三十単位、短大なら約十五単位相当以上)をスクーリングで修得しなければならない。スクーリングには大学などへ通学して行う昼間・夜間・通年の三種類があるほか、遠距離の学習者のために地方都市で集中講義を実施したり、土・日曜日に開講する大学・短大もある。放送授業は主に放送大学が実施している授業を視聴して自分で学習する。
 メディアを利用して行う授業は、インターネットなどの普及により、通信教育の授業形態として認められるようになった。電子メールによる質問、相談の受付や回答などにも広がり、特に添削指導には最適だという評価もある。

生活や仕事に応じ
いつでもどこでも学べる


 私立大学通信教育協会が平成十三年度に行った学生生活実態調査で「大学通信教育はどういう点で優れた制度だと思うか」という質問に対して、学生は表1(二つまで回答可)のように答えている。だれでも、いつでも、どこでも、生活や仕事に応じて学べて、学費が安いと評価していることがこの表からうかがえる。
 卒業するためには、大学の場合には四年以上在学して百二十四単位以上、短期大学の場合は二年以上在学して六十二単位以上を修得しなければならない。これは通学課程と同じである。卒業直前に、多くの大学・短期大学では卒業試験を実施し、これに合格しなければならない。通信教育では社会人学生が多いため、卒業論文のテーマには、職業や居住地との関連を色濃く持つものが目立ち、指導教授にとっても興味深い論文が多いといわれている。卒業すれば、通学課程の学生とまったく同じく、大学では学士、短期大学では準学士の学位が授与される。卒業時期は毎年三月と九月の二回だが、卒業式は前年九月の卒業者を含めて毎年三月に行う大学が多い。
 自学自習を基本とする通信教育では孤独を感じることもありがちで、それを克服するには相当堅い決意を必要とする。「大学通信教育を最後までやり遂げることができると思うか」という質問に対する回答(表2)は、その意思を持ちながらも困難を予想する学生がいることを示している。そういう学生の立場を考慮して学外スクーリングを全国各地で開講しているのは、産能、中央、近畿、東洋、明星、法政、大阪芸術、日本、佛教の諸大学・短期大学など。パソコンを全員に貸与し、ITを苦手とする社会人学生のために操作指導専用のヘルプデスクを設けている例もある。学習意欲を維持させ、修了率を高める工夫をどこも凝らしている。

14大学に19研究科の設置
通信制大学院で高い資格


 通信制大学院は平成十一年から実施され、平成十四年度現在、十四大学に十九研究科(放送大含む)が設置されるに至った。大学院では筆記試験を行う方が普通。学習方法の特色は印刷教材、放送授業、スクーリング、メディアの四つがあることは大学学部・短大の通信教育と共通しているが、修士論文作成指導については教員と直接対面して行うスクーリングの実施が多い。修士課程の修了要件は基本的に大学院に二年以上在学して三十単位以上を修得したうえ、修士論文に合格することが条件となっている。通信制大学院で修士論文を合格とされれば修士の学位が得られるが、そのほかにも学部レベルより高い資格の取得も可能となった。その代表的な例が教員免許状である。一種免許状(学部卒レベル)を持つ教師が勤務先の学校を休職せずに専修免許状(修士課程修了レベル)に切り換えるためには、通信制大学院がうってつけの制度となった。平成十四年度現在、私立大学通信教育協会に加入している通信制大学院五校の入学者の年齢や職業構成をまとめた表3で現職教職員が三人に一人と高率であるのはそういうメリットの影響もあろう。全国唯一「児童学」の通信制大学院を開設している聖徳大学大学院ではその比率がもっと高くなる。
 「これは専修免許取得を狙う人ももちろん多いが、教育学、発達学、保育学の三領域から学び実践的指導力を身につけたいためだけにくる教師も多い」と言う。平成十五年度からは聖徳、日本、佛教では博士課程の通信制大学院を開設する。
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