こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2003年2月3日号二ュース >> VIEW

記事2003年2月3日 1879号 (4面) 
トップインタビュー 教育はこれでよいのか
元日本学術会議会長・(財)国際科学技術財団理事長 近藤 次郎氏
強い精神力で目標達成
世の中の動きや真理探求の態度 最後の学習が人生の決め手


  ―日本国際賞に対する近藤理事長の思いは。
 近藤理事長 日本国際賞は近く二十周年を迎える。この賞は最初からノーベル賞のように国籍や人種、宗教などによらない純粋な自然科学の成果を対象とした。科学の進歩に貢献するという点はノーベル賞と共通であるが、その成果が応用され人類の幸福や世界平和に貢献したという実績を重視する点が異なる。
 それでも百年以上続いているノーベル賞のことは常に意識の中においている。実際、ノーベル賞と日本国際賞の両方を取得した受賞者は五人いる。ノーベル賞が日本国際賞をある程度意識しておられるということも分かっている。

 ―日本の教育について何が問題か。
 理事長 戦前の教育は、教育勅語が中心であった。昭和二十二年五月三日に公布された教育基本法が基礎となっている。現在、憲法そのものの改正案が国会などで議論されているが、憲法がすべての基本であるから、もし新憲法ができれば当然教育基本法はそれに倣うように改正する必要がある。
 古い教育勅語では“もし戦争が起こった場合、命を捨てて国のために尽くすべきである”と明記されているが、その点は国会でも議論が尽くされていない。結局、憲法の改正の議論がされているにもかかわらず、一方では教育の方の議論が進んでいないという現状がある。このような状況下において、基本的な問題についての意見が時代とともに変化し、社会現象とともに移っている。例えば基本的人権とか、個人の財産権というようなものがどこまで保障されるべきかという問題や、その優先順序、また国連安保理事会の決議に従って戦争行為を行うということになると、憲法九条によって一切の戦争を放棄している我が国ではそこに矛盾が生ずる。一方、日々の行動の基準としては昔の修身が生きている。今はそれを口にすることすらできない。学校の中でもいじめや不登校、教師に対する暴行、器物破損が後を絶たない。嘆かわしいことである。

 ―次代を担う青少年に望むことは。
 理事長 どんな時代でも自分自身が一番大事である。まず、健康であること、しかしただ体が丈夫であることだけでは十分ではなく、いろいろな苦労に耐え得ることが重要である。つまり、強い精神力を持つことである。嫌なことでもつらいことでも我慢をして、最初に決めた目標を達成するということが大切である。
 さらに、一生にわたって付き合うことができる親友を持つことも大切である。青少年に少しでも良い環境をつくることは、私たち年配者の責任であり、また政治家の責任でもある。

 ―ご自身の人生哲学は。
 理事長 強いていえば、若いときに勉強した数学というものが一生離れなかったような気がする。私はいろいろなことを経験してきたが、数学モデルという数式にしそれを解き、それを使って世の中の動きや根本の真理を知ろうとする態度、それらを貫き通していたのではないかと思う。これから大学へ入って勉強しようとか、専門学校へ行こうとか考えている人たちは、最後に受ける講義や実験、卒業研究などがその後の人生の大きな決め手となると思う。少なくとも高学年において学習したことが、そのまま自分の頭の中に残り困難を乗り越えていく基本となるのではないであろうか。

 
 「日本国際賞」 財団法人国際科学技術財団が科学技術分野で独創的・飛躍的な成果を挙げ、科学技術の進歩に大きく寄与し、人類の平和と繁栄に著しく貢献したと認められた人に与えられる。受賞者には賞状、賞牌および賞金五千万円(一分野に対し)が贈られる。
記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞