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記事2003年2月13日 1880号 (4面) 
ユニーク教育 (115) ―― 金光藤蔭高等学校
「人を大切に」の精神
福祉教育と教員研修を充実

藤島校長

  「本校では大阪市内の生野キャンパスに合わせて香芝市関屋の二上グラウンドを中心に香芝キャンパスを構築し、万葉の里の『歴史と文化』や『自然環境と民俗』を活用した体験学習や、科学の実験など新たな教育活動を行っています」
 金光藤蔭高等学校(大阪市生野区)の藤島清一校長は淡々と語る。
 万葉文化と自然あふれる、広さ約五千坪あるこのグラウンドはクラブハウスをはじめ、サブグラウンド、テニスコート、夜間照明、自炊用かまどなどが設備されている。この香芝キャンパスでは体育祭、新入生の入校訓練、学年行事、各クラブの練習・合宿、耐寒登山などが実施されている。
 同校は平成十一年、学校改革の一環として、男女共学にするとともに、教育条件の整備に努めてきた。「人を大切に」の建学の精神の下に、「基礎学力の充実」「創造力を豊かにし、個人の能力を高める」「自分や他人を大事にする気持ちを養う」この三つの教育方針を掲げ、社会に柔軟に対応できる人間の育成を目指している。
 同校の建学の精神が最もよく表れているのが、福祉教育だ。同校は平成十年四月から大阪府の「訪問介護員養成研修事業」の初めての指定校となり、福祉コースを選択すると、二年で訪問介護員三級、三年で訪問介護員二級の資格が取得できる。そして、夏期休暇中に大阪府立特別養護老人ホームの各施設で三〜四人に分かれて実習を行い、在宅介護の実技指導を受ける。生徒はここで介護実習の基本を学び、介護の持つ深い意味を味わうことになる。また併設大学の関西福祉大学の協力で、福祉に関連する専門教科の指導を受けている。
 介護実習室、入浴実習室、リハビリ実習室、調理室を完備し、車いすや各種リハビリ用機器も設置されている。
 「福祉教育は人間教育の基本であり、人間は社会的存在として尊重され『共に生きる』という思想がある」と藤島校長が指摘するように、この思想は生徒たちに浸透し、生徒たちは確実に変わり始めた。
 同校の二年生の生徒が、第四十八回大阪府青少年読書感想文コンクール「特選」に入賞した。その生徒は視野狭窄や体力的なことで友達への迷惑を考えて、つい引っ込み思案になっていたが、「朝の読書」など読書を通して、その本から勇気をもらい、チャレンジ精神に目覚めていったという。この変化を、「教育は制度の改革というより、心の改革」と大平節・関西金光学園理事は説明する。和太鼓部が開催している鼓響コンサートも大好評で、各地の老人ホームなどに招待されて大活躍している。
 生徒の変化は、生徒の教員に対する信頼感に基づいているといっていい。藤島校長は「『教育は人なり』『最大の教育条件は教師である』を実践し、優秀な情熱あふれる先生を育成しています」と力説する。
 そのために特に若い教員に対する研修を充実させている。『自由と規律』『法とは何か』『モラトリアム人間の時代』『現代教育の思想と構造』『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』といった著書を読み、何を言おうとしているのかをまとめ提出させることにしている。論理的に説明するための訓練と、将来生徒や保護者から頼りにされる教員になることを目的とするところにこの研修は、意義がある。

福祉実習室で介護の基本を学ぶ生徒

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