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記事2003年12月23日 1920号 (4面) 
国際貢献 広陵学園がネパールに小学校寄贈
生徒会・同窓会・法人役員が協力
新校舎移転記念事業に現地で温かい歓迎
小学校足りず通学に片道で2、3時間
  広陵学園広陵高等学校(二宮義人理事長、森本弘志校長、広島市安佐南区)は、現在地に移転して今年で三十年になるのを記念して、ネパールに小学校を三校贈った。八月二十五日に現地で行われた完成式典には、二宮理事長、前生徒会会長の濱本正之君、生徒会顧問の山崎敏夫教諭、広島経済大学学生部長の松田実氏らが出席、温かい歓迎を受けた。ネパールはまだまだ小学校が足りず、広陵学園では今後も三年ごとに最低一校ずつ贈る予定だという。
 広陵学園がネパールに小学校を贈るきっかけとなったのは、「学校が足りない」という二宮理事長の知人の松田氏の言葉だった。広島経済大学学生部長の松田氏は十年前から学生らボランティアや現地の人たちと小学校建設に取り組んでおり、ネパールは小学校がまだ千校ほども足りないのだという。子供たちは遠い学校に通うために、片道二、三時間かかることもまれではない。そのため労働力でもある子供たちはなかなか学校に通うことができない。もう少し近くに学校があれば学校で勉強ができる。あるいは学校の建物がないまま、青空の下で学ぶ子供たちもいて、強風の日や雨の日は学校が休みとなるのだという。
 今回、広陵学園が学校を贈るにあたってとった方法は、用地は地域の人から提供してもらう、労働力はボランティアと現地の人たちが提供する、というもの。学校ができれば教師は政府が派遣してくれるという。この方法だと資材費の約五十万円のみで学校が一つ建つ。しかもどこにどんな学校を建てたのか、ネパールの地域の人たちからいえばだれが建てたのか、お互いに相手の顔が見える。こうしたことを松田氏から聞いた広陵学園は、校舎移転三十周年記念事業として、ネパールに小学校を三校贈ることにしたのである。そして、一校当たり五十万円、一校は生徒会が中心となって集め、一校は同窓会が、あと一校は法人役員が集めることになった。それが、平成十四年のことである。
 早速、十四年五月から生徒会が中心になって資金集めを始めた。文化祭のバザーの収益や教職員たちから寄付を募った。そして三校分を、ネパールで活動している松田氏に届け、資材購入に当て、建設作業を続けてもらった。そして今年八月、無事に完成をみたのが、ネパール南部のヘトウダのプロガティ小学校とラジュデビ小学校、ピラトナガルのシンハデビ小学校の三校である。校舎はいずれもれんが造りの平屋建て、三〜四教室、収容人数百人ほどの建物である。
 広陵学園は八月二十五日のプロガティ小学校完成式典をはじめ、そのほかの小学校の完成式典にも招待を受け、学園からは二宮理事長と昨年、生徒会長として資金集めの中心となった高校三年生の濱本正之君、生徒会顧問の山崎敏夫教諭が出席することとなった。
 二宮理事長はじめ一行は前日の二十四日にロイヤルネパール航空便で日本を出発。九時間半後、カトマンズに到着。翌朝、カトマンズから、十一時開始の式典に合わせて車でヘトウダに向かうはずであった。しかし、ちょうどネパールは雨期。川が溢(あふ)れて道路を土石流がふさぎ、ヘトウダヘの直行道路は不通になってしまった。そのため、遠回りをすることとなり、結局、プロガティ小学校に着いたのはカトマンズ出発から八時間後、まもなく午後五時になろうとしていたころだった。とっくに式典も終わっているとあきらめていた。ところが、子供たちやその家族、近隣の人たちが二宮理事長らの到着を待っていてくれたのだ。そして大歓迎を受けた。夕やみが迫る中で、完成式典が無事に執り行われた。
 二宮理事長はその時のことを「子供たちは手に手に自分たちで摘んできた野の花を持ち、それを次々に私たちに手渡してくれ、私の腕の中はかわいい花でいっぱいになった。貧しいためにレイの花を買うお金もないけれども、野の花を用意して待っていてくれたその気持ちがうれしかった」と話している。
 二宮理事長はプロガティ小学校の完成式典に出席したあと帰国。山崎教諭と濱本君はラジュデビ小学校の完成式典にも出席した。しかし、現地の治安状況が悪化し、三校目のシンハデビ小学校へは行けず、帰国することとなった。
 山崎教諭は、豊かすぎる日本で育った濱本君にとってはいろいろな意味で、衝撃を受けた旅行となっただろうと語る。
 その濱本君は、この体験を持って広島修道大学のAO入試に臨み、無事に合格した。将来は福祉関連の仕事に就きたいと話しているという。
 社会科教師の山崎教諭も、さっそく撮ってきたビデオや写真、式典で使ったものなどを授業で使っている。リアリティーのある教材に、生徒たちも熱心に聞き入っているとのことだ。
 広陵学園では、今後も三年ごとに一校ずつ、ネパールに小学校を贈る予定だ。現地の人たちとボランティアが力を合わせて造るこの方法は、費用も安く、国際貢献のあり方としてもより良いものではないかという。絶対数が足りない小学校を少しでもたくさんつくるため、私学のみなさんに呼びかけたい、と二宮理事長は話している。
 連絡先=広陵高等学校 電話082(848)1321二宮義人理事長もしくは山崎敏夫教諭

プロガティ小学校の完成式、左から3人目が二宮理事長


完成したラジュデビ小学校
歓迎を受ける濱本君(中央)と山崎教諭(左)

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