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記事2003年12月23日 1920号 (8面) 
ユニーク教育 (123) ―― 品川エトワール女子高等学校
出前授業で中高連携
分かる喜び・知る楽しさ

重政校長

  品川エトワール女子高等学校(重政文三郎校長、東京都品川区)の「エトワール プロジェクト in 矢口中学校」と題する出前授業が十月十日、大田区立矢口中学校(山田佳子校長)で行われた。
 「世界史A」を担当した大森隆弘教諭は広島・長崎原爆投下を教材に「日米の歴史的な解釈の違い」を授業、歴史の事実(原爆投下)について日米の教科書の記述を紹介し、生徒にその違いを考えさせる。生徒は「日本の教科書は詳しく説明している」「亡くなっている人の数が、日米の教科書で違っている」「アメリカの教科書は長崎のことを書いていない」など反応を示した。
 「出前授業はここ数年増えていますが、中学と高校の連携が大切と思い、本校でも行ってみようと思った」(重政校長)のがきっかけだ。同校は「品位・品格を身につけ、心豊かで国際感覚に富んだ人材の育成」を教育目標に掲げ、生徒が新しい知識に感動し、「分かる喜び・知る楽しさ」を味わえるような「授業の充実」を目指している。
 「品川エトワール高校さんの出前授業の内容が一番明確で、きめ細かくできているので、進路指導にも役立つと思い、来ていただくことにしました」(山田校長)と、この日は同校だけの出前授業となった。
 十一時三十分から始まった出前授業(中学三年生対象)は大森教諭の「世界史A」のほか、「国語」(不二山律子教諭)、「英会話」(スティーブン・ケラー専任講師、西村唯史教諭)の三教科。「国語」は「漢字の成り立ち」を、「英会話」は「食べ物の数え方」を勉強した。
 不二山教諭は、プリントを使用しながら、日本語と英語のアルファベットの文字を比較した上で、 「安」の漢字から「あ」のひらがなが、「阿」の漢字から「ア」のカタカナができてきたというように漢字、ひらがな、カタカナの文字のそれぞれの由来を丁寧に説明していた。また、漢字には一つ一つ意味があり、漢字の要素には「形」「音」「義」があることを教えていた。
 また、「英会話」の授業では、ケラー講師は例えば、ガムを見せながら「a piece of gum」、コーラを見せながら「a bottle of coke」と発音を繰り返させていた。それを踏まえたうえで、「What do you have?」と生徒に質問すると、生徒が「I have a〜of〜」の形で答える練習をしていた。ケラー講師のジョークを交えながらの授業は、生徒の関心を引きつけた。
 同中学の生徒から寄せられた感想文の中には、「むずかしい」という感想はゼロで、「分かりやすかった」という感想がほとんどだった。「“分かる”授業を目指しているので、歴史に興味を持ってほしいという目標は達成された」と大森教諭。「どの授業も生徒は話を聴く態度ができていると思った」と、品川エトワール女子高校・渉外部の玉川匡彦教諭は実感した。
 これに対して、「原爆投下という一つの事実にもさまざまな見方があることが分かった」(世界史A)、「高校では自分で調べて、自分で勉強するところだなと思った」(国語)など、生徒にとっては高校教諭の授業はものの見方、考え方で刺激になったという。
 「今年十一月から『授業研究会』を行い、外部の中学や高校の先生方にも授業を公開し、意見交流を通して中学と高校の連携を図っている」(重政校長)と、多くの教科で 「授業研究会」を始めており、授業研究交流会が持たれている。

具体的な物を見せながら授業するケラー講師

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