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記事2003年11月13日 1915号 (1面) 
教育費負担の 軽減に奨学金を重点に
政策的な整備も必要
大学分科会
  中央教育審議会の大学分科会(分科会長=佐々木毅・東京大学長)は十月二十七日、東京・霞が関の文部科学省別館で第二十八回分科会を開いた。これまでに討議した高等教育の将来構想(グランドデザイン)の中から、高等教育に対する財政措置などを取り上げた。このうち奨学金については、広く学生に貸与する方向と、優秀な人材を養成するための戦略的な整備とに意見が分かれた。

 日本ではヨーロッパと比べて、高等教育に対する私費負担の割合が高いことから、奨学金のあり方について重点的に検討した。フランスやドイツでは大学での教育にほとんど費用はかからず、学生納付金が必要なアメリカでは学部生の約七割が何らかの奨学金を受けている。日本では、日本育英会の奨学金を受ける学部生は約二割で、生活費の約七割を家庭からの仕送りに頼っている。
 日米を比較し、委員からは「アメリカでは貧困層への社会保障的な奨学金と、大学院など優秀な人材の育成を目的とした奨学金など意図がはっきりしている。日本の奨学金制度は政策性が弱い」という意見があった。
 「地方には、苦しい生活をしながら大学へ通う学生も多い。現行の奨学金には制限があり、特に私学の学生にとって十分とはいえない」「大学院には給付ではなくフェローシップ(研究奨励制度)を進めるべきだ。努力した学生は返還を一部免除することで、奨学金を受ける側のモラルを引き出すことができる」という考えを述べる委員もあった。
 個人を支援するバウチャー制については「全面的にバウチャー制度を導入すれば、経営に行き詰まる私学も出てくる。機関支援との兼ね合いが重要だ」とする意見があった。また「奨学金だけの問題ではなく、国の公的な教育支出が低いことが根本にある」「約五割の進学率を将来、何パーセントとするのか。ほぼ全員が進学する状況を目指すのか。それによって奨学金の性質も異なる」など国の姿勢を問う意見があった。
 学生の生活については「携帯電話や車など、学生の生活が変化し、生活費が増加している」「アルバイトは遊興費を稼ぐための手段であり、学資を目的とする学生は少ない」など疑問とする意見があり、「子育ての文化にかかわる問題だ。欧米では高校を卒業したら自分のことは自分でする。日本では戦前、比較的裕福な家庭が大学へ進学したことを引きずっている(ので、仕送りに頼っている)」「学生が自分の力で生活することは重要。志ある若い人に貸与する仕組みは教育的だ」とする意見があった。
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