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記事2003年11月13日 1915号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向 5歳児教育のカリキュラム作り必要
幼稚園教育要領も議論の対象
小学校への接続焦点に
【幼児教育部会】
 中央教育審議会の初等中等教育分科会幼児教育部会(部会長=田村哲夫・渋谷教育学園理事長)は、十一月六日、東京・千代田区内の会館で第二回会合を開き、前回に引き続き学校教育の始まりとしての幼児教育の在り方等を中心に自由討議を行ったほか、同部会委員の河邉貴子・立教女学院短期大学助教授が幼児教育の基本について、また山口茂嘉・岡山大学教授が子育て支援での幼稚園の役割についてそれぞれ意見発表した。自由討議では幼稚園と小学校との連携をめぐって、保育者の力量に大きく依存する保育ではなく、保育者の力量に関わらず、保育が成り立つためのカリキュラムづくり、評価の在り方の研究の必要性等が指摘された。また現行制度にとらわれず、抜本的に議論していくこと、幼稚園教育要領も議論の対象とすることを確認した。次回(十二月一日)は自由討議で出された意見等をもとに、部会長と事務局(文部科学省)がまとめる今後の検討課題等について話し合う予定。
 このうち河邉助教授は、実践例を示しながら、遊びを通しての総合的な指導充実の必要性を強調。遊びの質を高めていくために保育者には幼児と環境(遊び・活動・教材等)を理解する力が必要で、より高い専門性が求められるとした。保育者の専門性向上には研修の拡大・保障が必要だとした。また現在広がりつつある幼保一体化施設についてはカリキュラムの検討が遅れていること、保育時間の多様化で豊かな遊びが確保できない恐れなどを懸念した。さらに幼稚園でしっかり遊んだ子供は小学校での総合的な学習の時間でも力を発揮していることを強調した。
 これに対して小学校長の委員は、授業中にじっとしていられない子、人の話を聞けない子が増えていることを報告、五歳児教育の見直しの必要性を指摘した。
 この点については別の委員は、子供から我慢する力がなくなった背景に少子化、多動性の子供の増加を挙げ、小学校低学年の教育の在り方の改善の余地も指摘した。
 幼稚園での五歳児の教育については、カリキュラム作りの必要性が複数の委員から指摘された。
 一方、山口教授はさまざまな機会や手段を使っての子育て支援の必要性や預けられる側(=子供)の論理の重視などを指摘、幼稚園での子育て支援をバックアップするシステムの創設を求めた。
 このほか委員からは、地方自治体のポテンシャルを引き出すことのできる施策や、幼稚園での実践を支援していくカリキュラムセンター等の必要性などが指摘された。


数の拡大から質の向上へ
日本人大学生高校生を海外へ


【留学生部会】
 中央教育審議会大学分科会の留学生部会(部会長=木村孟・大学評価・学位授与機構長)は十月七日に都内のホテルで開いた中央教育審議会の総会で、留学生政策の中間報告を河村文部科学大臣に提出した。十万人を目指して留学生の受け入れを拡大した従来の政策から変化し、中間報告では質の向上と日本人学生の海外留学などへも視野を広げている。
 中間報告「新たな留学生政策の展開について留学生交流の拡大と質の向上を目指して」によると、新たな留学生政策の基本的方向は(1)留学生交流の一層の推進(2)各大学等の取り組みを基本とした交流の拡大(3)日本人の海外留学への支援(4)留学生の質の確保と受け入れ体制の充実(5)日本学生支援機構設立等による支援体制の強化を柱とする。
 このうち(3)については、国際貢献するため受け入れを重視したこれまでの政策から踏み込んで、双方向での留学の拡大を提言した。国際競争力を強化し、世界的な社会で活躍できる人材を育成するため、多くの日本人学生が海外留学を経験することが望ましく、国として推進する必要があるとしている。
 具体的には留学相談の充実や貸与制の奨学金などの支援、海外の大学で学位の取得できる長期留学制度、短期留学の推進などの対策を挙げている。また、派遣と受け入れとの間に地域的な偏りがあるため、アジアへの派遣と欧米からの受け入れを推進するなど、均衡に留意することも求めた。
 大学生と比べて受け入れ・派遣の規模の小さい、高校生の留学の拡充にも言及。短期留学の推進や安全に配慮したホームステイ先の確保などを求めた。帰国後の大学入試への不安を解消するため、大学の入学者選抜で留学経験を積極的に評価するようにも述べている。
 (4)では、留学生の増加に伴い留学生のかかわる事件が起きていることから、質の確保を検討した。大学等に通学せず不法に就労する留学生もいるとの指摘もあり、大学等での安易な受け入れを戒め、在籍管理の徹底を求めた。成績不良者への奨学金の打ち切りも提案している。このほか、日本語教育機関で学ぶ者の七割が高等教育機関へ進学することから、就学生への支援を要望した。
 政府は昭和五十八年に「十万人計画」を策定し、留学生政策に取り組んできた。以後、留学生の受け入れは増加し、平成十四年五月には九万五千五百五十人に達した。本年度中にも十万人を超え、今後三年間でさらに三万人程度増加すると予想される。十万人計画達成後の新たな施策を探るため、大学分科会では昨年十一月に留学生部会を設置。今後五年間の方策として中間報告をまとめた。


コミュニティ・スクール 義務教育になじまぬ
質の保証はモニタリングで評価を


【教育行財政部会】
 中央教育審議会初等中等教育分科会の教育行財政部会(部会長=木村孟・大学評価・学位授与機構長)は十月二十九日、東京・霞が関の会館で第十回部会を開き、学校の管理運営のあり方を議題に、地域が参画する新しいタイプの学校運営や、公私の協力による学校運営の方式、公立学校の包括的な管理運営の委託などについて検討を進めた。
 地域が参画する学校については、保護者代表や地域住民代表などでつくる「運営協議会」が学校運営に参画する新しいタイプの公立学校(コミュニティ・スクール)について話し合った。
 委員からは「公立の義務教育の使命の一つは、国家や国民としての統一性を図ることだ。教育の基礎や文化について教え、子どもの個性を伸ばすことは、多様化する社会の要請でもある。コミュニティ・スクールでの義務教育はなじまない」「学校評議員制度がやっと始まった状態。評議員制度の結果を検討した上で、方向性を見いだした方がよい」などの意見があった。また、コミュニティ・スクールの評価については「義務教育の公平性や公共性などを担保するには、評価の観点や項目も重要。モニタリングについても議論する必要がある」などとした。
 公立学校の管理運営の委託については「文化施設では指定管理者制度が導入されているが、貸し館業が主で、文化事業などはあまり行っていないのが実情だ。学校のような教育施設に、指定管理者制度を当てはめることができるのか」との意見があった。また最終的な責任については「教育委員会が持つべきだ」とされた。このほか「給食など現行の委託についても点検する必要がある。部活動やクラブ活動は地域のスポーツ団体に委託して学校の施設を使用することも考えられる。現行の中で委託した方が望ましいものは委託してもよい」とする意見があった。委託の対象とする学校種としては「通常の義務教育では包括的な管理委託は難しい。不登校児童を対象にした学校など、特別なニーズに論点を絞ったほうがよい」「現場の取り組みにより、近年では不登校児童や校内暴力は沈静化しつつある。学校関係者の努力が実っているのになぜという現場の戸惑いが予想される」などの意見があった。
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