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記事2003年11月13日 1915号 (4面) 
私大の教育費負担に対する保護者意識
教育費の公的負担強化望む
教育サービス当初の考え上回る満足度
学費調達に預貯金
  私立大学の教育サービスについて卒業生保護者は満足しているが、その学費負担については「重い」と感じて、「公的負担の強化」を求める意見が強いという実態調査が九月二十日に開かれた日本教育社会学会大会で明らかにされた。

 この調査は濱名篤・関西国際大学教授ら六人が共同で科学研究費補助金を受け、六私立大学の協力の下に、社会科学系学部学科の二〇〇三年三月卒業生の保護者を対象に行ったもので、調査票二千二百七十四枚を配布し四百三十七枚(一九・二%)を回収した。
 卒業した大学の教育サービスについて、保護者の満足度は七七・三%、保護者が想像した卒業生本人の満足度は八二・九%だった。大学入学の際にはどのようなことが考慮され、その考慮されたあり方に対して卒業時にはどの程度満足したかを尋ねた結果は、すべての項目に対して当初考慮した程度を上回る満足度だった。
 学費についてみると、初年度納付金の平均は百二十三万八千四百四円。保護者の世帯の年収分布は一千万円未満四六・五%、一千万円以上が五三・五%で、最も多いのが一千万円〜一千二百万円未満の層となっており、平均的な世帯と比較するとやや高収入層に偏っている。母親が専業主婦(無職)である比率は全体では三九・六%だが年収階層によって異なり、年収一千万円未満では四〇%に満たないのに対して、一千万円以上では四〇%以上が専業主婦である。母親がパートで働いている比率は年収八百〜九百万円と九百〜一千万円の階層で最も高く、それぞれ四四・四%、四二・一%となっている。年収に占める教育費の比率は、一〇〜二〇%未満と二〇〜三〇%未満が中心的であるが、それ以上の比率を占める家計も少なくない。年収七百万円未満の層では教育費二〇%以上の家計が八四・七%を占めるのに対して、七百〜一千万円未満では五六・三%となっている。
 教育費比率に大きな影響を与えているのは、在学中の子ども数と自宅、自宅外の違いであり、教育費比率二〇%以上の家計は自宅通学では四五・〇%で、自宅外では七九・二%にのぼる。
 子どもが私立大学に進学した家庭では教育費が大きな負担になっていることがこうした数字から分かるが、次にこの費用をどうやって調達したかという質問に対して「特別な方策を必要としなかった」ものは五・九%だけ。学費調達方法(図参照)をあげた中で最も多かったのは「教育目的以外の預貯金や蓄え」五四・五%、次いで「教育目的の貯蓄(財形貯蓄・学資保険等)」四九・九%だった。これらに比べて「日本育英会の奨学金」一四・〇%、「祖父母からの借り入れ」一二・八%、「銀行ローンや大学の貸与奨学金」一二・六%は低く、多くの家庭では預貯金の取り崩しによって教育費を賄っていることがわかる。これらの方策一つだけで足りたのは四八・七%、二つ組み合わせて調達したのは三四・八%となっている。

国公私立の授業料格差大きい
公費、税制優遇に期待


 これらの費用負担について保護者はどう思っているかを尋ねる自由記述欄を調査表に設けたところ、この欄への記入率は四三・五%と自由記述では異例の高率になった。
 「地方の子供を大学に通わせるための仕送りが大変でした」「教育にかかる費用があまりに高すぎる。都内にアパートを借りて就学させると、四年間で八百万くらいの金が必要になる。私の家では二人の子供が同時に私立大学に二年間通っていたのでとても大変だった」「(二人の娘を首都圏の大学と大学院に通わせる費用は)地元群馬県では小さい家が二軒買えます。子供の合格が決まった時の嬉しそうな顔、入学後本当に楽しそうな姿を見て納得させています」「四年間大学に行かせ何百万という大金を子供に与えるということはぜいたくかもしれませんが、親からの大きなプレゼントと考えています。本人も社会に出てその意義を感じてくれることを期待します」。このように負担の重さに悩みながらも子供への贈り物にがんばる姿が浮かび上がる。しかし、国公私立の教育費の格差を見るにつけても「国公私立の授業料格差はないのが望ましいと思う」「まだまだ国立との差がありすぎる。そんな時代が早く終わってほしいと思います」「費用負担は親にとって大変なので、税制面での優遇措置も政府に考慮してもらいたいと思う」と公的負担強化などによる平準化を望む切実な声が多く紹介された。

子供の大学進学は親にとって大きな負担

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