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記事2003年11月13日 1915号 (4面) 
新世紀拓く教育 (12) ―― 博多高校
看護5年一貫教育
大学教員や看護師らが講師
徹底指導で看護師試験合格率100%
  医療系の人材養成校として長年の実績を持つ博多高等学校(横山賢一校長、福岡市東区)は、准看護師を養成する衛生看護科(三年)と看護師を養成する専攻科(二年)を統合・発展させて看護科・看護専攻科(五年)とし、平成十四年度から五年一貫教育で看護師を養成するコースとして新たなスタートをきった。
 きっかけとなったのは、准看護師廃止問題である。
 もうひとつは准看護師資格取得のための所定の時間が千五百時間から千八百九十時間に増え、高校の三年間ではカリキュラムが非常に窮屈になったことである。
 一貫教育を行うことによって、衛生看護科と専攻科で重複していたカリキュラムを整理した結果、総授業時数が三千八十時間から二千八百七十五時間に減少、そのゆとりを使って高校三年間は普通教科を充実させて基礎能力を高め、同時に人格形成に力を注ぎ、専門分野の学習に振り向けて質の高い看護師を養成することとしたのである。
 生徒たちにとっては、高校卒業時に准看護師の資格取得はできなくなったものの、五年間で看護師の資格が取れるだけでなく、希望すれば高校三年修了時に他の進路選択も可能である。看護専攻科を修了した生徒については、さらに専門の学校に進学することによって助産師、保健師の資格取得も可能となる。博多高校としては将来は、専攻科を修了した生徒の四年制大学の四年次編入の道も開きたいと考えている。看護科に入学してくる生徒たちは、看護師という具体的な目標を持つ子供たちである。それだけに、学習意欲も高く、学習態度も真摯(しんし)である。そうした生徒たちを、「こころ」を大切にする、感性豊かで創意工夫の意識を持った、科学的思考のできる看護師に育てるのが同校の目標だ。主事の村田幸雄教諭は「本校の看護科に入ってくる生徒は、どちらかといえば中学では成績が中くらいの子供が多い。しかし、ぎりぎりの成績で入学してきても、卒業時にはトップクラスで卒業する生徒を何人も見てきました。基礎学力があれば、あとは看護師という目標に向かって自分がどれだけやるかにかかっている。高校看護科のなによりの長所は、十五歳の純真なこころで取り組み、五年間という短い時間で看護師になれることです」と話す。入学定員は女子六十人。入試の実質倍率は約二倍、定員のほとんどは専願入試の合格者で埋まってしまうという。
 新しいカリキュラムでは、普通教科を充実させたが、なかでも最も基礎となる国語が大切と考え国語教育に多くの時数を振り向けている。同時に看護に対する心構えをつけることに力点をおき、マナー教育や礼法、手話学習、講演会などを行っている。専門分野の指導にあたるのは教員資格を持つ医療現場を体験した看護師である。専任教員は高校看護科で六人、看護専攻科で五人。特に看護専攻科は、教科によっては医師、大学教員、現場の看護師などが講師として授業を行う。医療現場の、しかも最先端の技術や情報を生徒たちに学んでもらおうと考えているからだ。こうした外来講師は六十人から七十人にも及ぶ。
 専門分野を学ぶ一方で、生徒たちには大量の実習が課される。実習は、高校一年生で二週間、実習先は高齢者福祉施設である。二年生では三週間、病院で基本的なことを学ぶ。三年生では六週間一人の患者を通して看護過程の基礎を学ぶ。四年目にあたる専攻科一年生は集中的に専門教科を学習する。
 五年目はほとんどが実習で、五月から十一月まで夏休みを除き六カ月間、八百四十五時間の実習が行われる。この長期にわたる実習が生徒にとっては最も過酷であるが、看護専攻科の集大成でもある。
 現在の専攻科の生徒たちの例を見ると、看護実習の場合、前日に翌日の実習内容をレポートにまとめて指導看護師に提出し、当日は午前八時から病院に入って実習を行い、夜帰宅するとその日の実習をレポートにまとめる。これが深夜十二時、一時までかかることもある。
 こうした毎日が続くのである。しかも、専攻科のこの最終実習は指導が殊に厳しく、生徒に容赦ない叱責が飛ぶこともしばしばである。泣きだす生徒、やめたいと言いだす生徒が出るのもこの段階だという。
 こうした厳しい勉強と生徒たちの日々の努力が実るよう、教職員も徹底したサポートを行う。
 勉強が遅れた生徒に対しては教員が残って特別指導をしたり、国家試験のための模擬試験を行ったり、きめ細かい指導を行う。
 その成果が表れたのは、昨年度の看護師の国家試験である。専攻科の生徒四十九人が受験し、全員が合格。この時全国平均は九二・六%、全国専攻科平均は九〇・七%であった。
 このように一〇〇%の合格率に加え、クラブ活動やボランティア活動にも活躍する看護科・看護専攻科の生徒の姿を、最近、全国放送のテレビ番組で紹介されたこともあって、中学校からの問い合わせが増えた。遠くは京都からも問い合わせの電話があったとのこと。注目を浴びる中、学校としてもそれに見合うものを提供しなければいけない。そのうえ、来年は国家試験合格率一〇〇%のプレッシャーもかかる。
 高校看護科について、高校生では理解が難しい専門知識をむりやり詰め込んでいるのではないかという批判が一部にある。しかし、村田教諭は「生徒たちはそのレベルに追いつこうと一生懸命勉強する。レベルの高いものにチャレンジしていくことによって、看護意識も高まり、学習レベルも一気に伸びていく。卒業生が、みんなに慕われる素敵な看護師さんになっているのを見ると、うれしいですね」と話す。

5年目はほとんどが実習、
厳しい時期を乗り超えて看護師へと成長していく

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