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記事2003年10月23日 1910号 (1面) 
中教審、私学団体等から意見聴取 公設民営導入には反対
株式会社への委託目的が不明確
私学振興こそ教育の活性化
  中央教育審議会初等中等教育分科会教育行財政部会(部会長=木村孟・大学評価・学位授与機構長)は十月十四日、東京・千代田区の霞が関東京會舘で開いた第八回会合で、私学団体を含む教育関係五団体から公立学校の管理運営を民間に包括的に委託することの是非などについて意見を聴取した。この中で私学団体は、公立学校を民間に、特に株式会社を想定して委託が提案されていることの目的や意義が明確ではないなどとし、公設民営方式の導入には反対の意向を明らかにした。

 この日、意見を述べたのは私学関係では、日本私立中学高等学校連合会(堀越克明会長=堀越高校長)、日本私立小学校連合会(平野吉三会長=啓明学園理事長)、全日本私立幼稚園連合会(三浦貞子会長=青森・白ゆり幼稚園長)の三団体。
 そのほか全国都道府県教育長協議会と全国市町村教育委員会連合会が意見発表を行った。
 このうち日私中高連では久保田宏明常任理事と吉田晋常任理事が意見書に沿って意見を述べたが、「公設民営」構想については、教育委員会等を中心に学校の活性化策等が進められつつある今、なぜ公立学校に「公設民営」が導入され、その内容が検討されなければならないのか、しかも公立学校の運営について委託を受ける対象としてなぜ株式会社が想定されているのかわからない。学校の管理運営に関しては門外漢であるはずの株式会社に改革の一端を委ねなくてはいけないほど、公立学校は疲弊し、空洞化しているのか、と疑問を投げかけた。
 また教育特区での実験的な取り組みに関してもそもそも教育の成果を一年という短期間に評価できるのかとし、さらに公費支出の重点化を図ることによって教育全体を活性化させるのであれば、国民各層からの期待度等によって裏打ちされ確実な社会的需要のある私立学校の振興に公費を向けることがより効果的と指摘した。
 日私小連では平野会長と大森隆實副会長が意見を述べた。同連合会では公私が車の両輪のごとく競い合ってきた関係を株式会社の参入や公設民営の論理で壊されるとしたら、犠牲になるのは子供たちとして、公立学校の民間委託には賛成しかねるとの考えを表明。教育の荒廃の原因が大人社会のモラルの低下、自己の利益優先の生き方にある以上、家庭、社会の在り方を真剣に見直す必要があると訴えた。
 全日私幼連では田中雅道副会長と北條泰雅常任理事が意見を述べた。同連合会も公立幼稚園の民間委託の目的が不明確、単に名前だけ「公立」を残す民間委託よりも、地域の実情に応じ設置運営そのものを実績ある私学に委ねることも検討されるべきだなどと訴えた。
 また一部であっても株式会社に委託することへの危惧を表明、幼稚園教育で八〇%の子供が通っている私立幼稚園への補助をしっかりと考えるよう要請した。
 一方、全国市町村教育委員会連合会は一部ならともかく、包括的な民間委託については適切ではないと表明、また私立学校との関係において、民間委託導入の意義・役割が不明で客観的に相当な効果が保障されるかどうかに懸念があるとした。
 全国都道府県教育長協議会は包括的委託について明確な是非を明らかにしなかった。
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