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記事2003年10月23日 1910号 (1面) 
単独インタビュー 文部科学大臣 河村 建夫氏
人間力向上目指す教育改革
教育基本法改正案、次期国会にも 私学の支援体制強化


  九月二十二日に発足した小泉第二次改造内閣の河村建夫・文部科学大臣に当面する課題等についてお考えを伺った。
(編集部)


−− 今後、重点的に取り組みたい課題は何ですか。
河村文部科学大臣 大臣就任に当たって総理からいくつかの指示を受けた。その一番目が知・徳・体に加え食育を重視して人間力向上を目指した教育改革をしてほしい、というものだった。人間力を育てる中では学力低下があってはならないが、同時に日本人が誇りを持ってきた道徳観や倫理観も高めていく必要がある。それを基盤に科学技術創造立国、国際貢献等もある。国づくりは人づくり。そのことを高めなければならない。「食」といっても範囲が広くて、主食である米を大事にしていこうという発想にもなるし、日本の食文化にも考えがいく。学校現場では学校給食の位置づけは意味があるし、学校栄養職員の皆さんにも教壇に立って頂いて、しっかり指導してもらいたい。それが栄養教諭の話。食育は積極的に取り上げたい。

−− 教育の構造改革・規制緩和では、多くの教育関係者は先行き不安感を募らせていますが。
大臣 教育における構造改革・規制緩和は小泉内閣の一つの観点で、民間でできることは民間に、また地方でできることは地方に、さらに規制緩和という方向については、教育効果をあげるものについては思い切ってやったらいい。
 義務教育段階でいえば、義務教育の根幹は国が守るという憲法上の要請もある。それを放棄してまで財政に協力するのでは本末転倒。やはり教育論で考えてほしい。財政論だけではだめだ、ということを今後も強調していきたい。

−− 今、学校現場で起こっている問題の背景には大人社会の問題、経済第一主義、自己中心主義があると思うのですが。
大臣 日本は、第二次世界大戦以降、豊かさを求めてきた。それに教育も一緒になってやってきた。いい学校にいって、いい会社に入ってという思いがあった。しかし人間の幸せはそれだけではないということが分かってきた。心の教育を取り戻さなくてはいけない。日本の教育をもう一度考える必要がある。そういう意味で教育基本法を取り上げることは国民に教育を根本から問い直すきっかけになると思う。日本人としての誇りも大事だし、故郷、国を愛する心を育(はぐく)むこと、公のために自分はどう貢献したらいいかということ、また現行法では具体的ではない家庭教育の問題、宗教教育の問題なども議論し、具体的な教育振興基本計画を立てていくことが大事だと思う。国が押しつけるのではなく、国民的な議論として湧(わ)き上がってこなければいけない。国会で議論することによって国民の関心が高まってくると思う。政府としては、答申をいただいた以上、国会に持ち込む準備をしなくてはいけない。与党内にもいろいろな考え方があるが、選挙が終わったら、精力的に進めていただきたい。それは総理から指示も受けている。

−− 来年の通常国会に提出のお考えですか。
大臣 そのつもりで取り組まなくてはいけない。

−− 教育振興基本計画策定には教育予算全体のパイを増やすべきだとの思いもあったと思うのですが、今、財政的には厳しくなっておりますが。
大臣 教育振興基本計画というのは分かりやすくいえば教育のマニフェストだ。ここまでこうしますということを具体的に提示していかなければいけない。
 国民は皆教育が大事だと思っている。どういう点が大事で何を必要としているのか明確にしていくうえで教育振興基本計画は生きてくると思う。答申でも、教育振興基本計画は教育基本法に位置づけてきちんとやっていく、と提言されているので、基本法の与党間協議の状況を踏まえつつ、今後、中央教育審議会でさらに協議して頂きたいと考えている。

−− 公設民営、株式会社等の学校設置等がでておりますが、私学振興をどうお考えですか。
大臣 NPOでも例えば不登校児を専門にやるとか努力しているところもあり、そうした取り組みは支援したらいい。まず特区でやっていただいて実績を見ようということになっている。株式会社立の学校を真剣に教育のために活用するというのなら取り組んでもらってもいい。そこに学ぶ人が自己責任を伴うし、本当の人間力向上の教育が出来るか、我々は注視しなければいけない。
 ただ学校法人と同じに私学助成という話もあったが、それは憲法の精神からいってもおかしいと思う。特区の精神は新たな財政負担を伴わず、知恵を出してやっていこうというもの。
 日本の教育を考えたときに幼児教育と大学教育ではその多くを私学が担っている。私学抜きには考えられない。担った分をどう評価し、どう支援するか、これからも強化しなければいけない課題。今回、法科大学院についてはできるだけ公私の格差をなくして競争できるように配慮した。私学助成についてはこれから強めることはあっても弱めることはないと思っている。
 ただ少子化時代になってきて学生確保等で苦労する学校も出てきた。中身のある、力のある私学が求められるようになってきた。
 厳しい状況になる私学をどう支援し、学生が困らないよう大いなる関心を持っていきたいし、私学経営の在り方を支援する協議会の活用なども図っていきたい。ただ大学を出ればいいという時代ではなくなってきているので、大学教育はもっと学生に実力をつけて自信を持って卒業させてほしいし、力のある大学を目指す方向へ舵(かじ)を切ってもらいたい。これこそ国民が求めていることだと思う。トータルで考えると一番心配なのは学ぶ意欲の低下だが、この問題への対応は人間力向上にも繋(つな)がっていく。

−− 今後、中教審に諮問したいとお考えの課題はございますか。教員の問題などしばしば指摘されておりますが。
大臣 先日、新たに大学入学資格検定のあり方を諮問したところ。教員免許の高度化や教育に特化した専門職大学院なども研究してはどうかと思う。
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