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記事2003年10月23日 1910号 (3面) 
新世紀拓く教育 (10) ―― 東海大学付属相模中学・高校
科目履修生として体験留学
出前講義などで大学と連携
  卒業生の約八五%以上が東海大学・短期大学に進学する東海大学付属相模中学校・高等学校(山崎晃資校長、神奈川県相模原市)は、付属校のメリットを生かし、生徒たちに少しでも早く大学の雰囲気に慣れてもらおうと、四年前から、高校三年次後期の十月以降の半年間、東海大学(湘南校舎・伊勢原校舎)へ科目履修生として体験留学を実施している。対象者は高校三年生のみ、留学先は進学予定の学部・学科である。このため、志望学科が確定していること、その学科に進学可能な成績を三年次前期までに獲得していることが前提となる。その上で、希望者を募り、成績や生活状況全般を見ながら内部選考を行い、東海大学の各学科当たり二・三人ずつに絞りこんで、体験留学生として送り出している。この制度を始めた最初の年は総数で二十人程度であったが、昨年は三十七人、五年目にあたる今年もほぼ同程度の人数になるという。留学人数は特に決まっているわけではなく、その年によって変動する。
 日程としては週に二日間、生徒は私服で大学に通う。大学の授業についていくためには自宅学習が欠かせないこともあって、ほとんどの生徒は四〜六講座(二〜四科目)を受講するのが限度である。何を受講するかは大学(学科)から提示される「受講可能科目」の中から学科と本人が相談の上で決めているが、志望学科に関する専門科目をとる生徒が多い。東海大学はセメスター制をとっているため、生徒たちはちょうど大学後期の授業をとる形となり、体験留学で履修した科目の単位は、大学入学後に申請をすれば、大学の単位として認定してもらえる。大学側も体験留学生が講座をとりやすいようカリキュラムに配慮している。
 東海大学体験留学は生徒たちに好評で、行ってよかったという意見が大多数だ。寄せられた感想文からも、高校とは雰囲気も授業の様子も違う大学生活を楽しんでいる様子がうかがえる。同校としても、大学生活に対する不安が少しでも軽減されれば、大学進学のための準備が十分できるのではないかと考えている。それだけでなく、体験留学した生徒たちが高校で自分の体験を話すことによって他の生徒たちに大学の具体的な情報が伝わるという波及効果もある。体験留学を経験し、今年の春、卒業して東海大学に進学した伊藤さんは、「希望する学科へ体験留学生として相模から行くのは私一人と聞いたときはやめようかと思いました。しかしせっかくのチャンスだからと思い参加しました。大学では、心配だった友達もすぐにでき、自分がやりたい英語を高校とは違った形で学べ、とても刺激になりました。高校生でも特別扱いされることはないので、本当の大学生活を体験することができました」と述べている。これまでこうした体験留学を経験した生徒は全員卒業後、東海大学の志望学部・学科へ進学しているとのこと。
 進路指導の下川光男教諭は、大学体験留学は進学したい学部・学科がきちんと決まっている生徒が対象で、成績その他の条件が整っていても進路を迷っている生徒に無理には勧めないと話す。「候補にのぼっても、迷っている生徒にはじっくり考えてもらえばいい。なかには残りの高校生活を楽しみたいという生徒もいましたし、海外留学に行く生徒もいます。あくまで希望する生徒が対象です」と語る。ただ、東海大学に体験留学生として送り出せる人数には限界があるため、そのほかの生徒たちにも大学の雰囲気を少しでも味わってもらおうと、東海大学の教員に依頼して高校に来てもらい、理系志望の生徒には理系の講義を、文系志望の生徒には文系の講義をクラス単位で行っている。またオープンキャンパスなどにも行くよう勧めている。
 同じ高校三年次後期に、卒業までの数カ月間に実施しているのが「長中期海外留学」である。その一つは東海大学関連のハワイ東海インターナショナルカレッジ(HTIC・アメリカの認可を受けた短期大学)への留学で、このハワイ留学にはSHIPプログラム(八十日間)とFESTプログラム(六カ月)があり、SHIPプログラムはハワイ東海インターナショナルカレッジ内での寮生活やホームステイを行いながら、総合英語、スピーチコミュニケーション、ハワイアンカルチャーなどを学ぶとともに、ハワイの生活文化を体験してくるというもの。FESTプログラムの方は、一般留学生と一緒に授業に参加する本格的な留学プログラムで、アメリカの大学の授業をじかに体験できる。このFESTプログラムの方は参加者に奨学金が給付される。もう一つは一月から二カ月間のニュージーランド留学で、ホームステイしながら現地の学校で学ぶというものだ。生徒たちは、高校生活最後の数カ月間、親元を離れ、日本の高校とは違う授業や宿題の多さに驚きながらも、仲間や現地の友達との密度の濃い生活に充実感を味わって帰国する。いまの学校制度では科目履修生としての大学体験入学が限度だが、将来、現在の飛び級・飛び入学制度が一般の生徒にも適用できるような制度となってくれば、大学への早期入学ということも可能となるのではないかと同校では考えている。こうした大学との連携について下川教諭は、今後も生徒たちの希望を実現できるよう、いろいろ工夫しながら、大学側へ働きかけ、できることは実施していきたいと話している。

高校3年後期に東海大学体験留学を実施している

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