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記事2003年1月23日 1878号 (2面) 
株式会社の教育参入大いに疑問 全国高校長協が意見書
日短協、中高連等も対等検討へ
  全国高等学校長協会(千田捷熙会長=東京都立両国高校長)は、一月八日、「利潤の回収を主眼とする株式会社が、直接学校を設立し経営を行うことの必要性と可能性については大きな疑問がある」との意見書を遠山敦子・文部科学大臣に提出した。教育関係者の間にこの問題に対する危機感が広がってきており、日本私立短期大学協会や日本私立中学高等学校連合会等でも、株式会社の教育参入は、現行の学校法人制度を根底から覆すものとして深刻に受け止めており、今後の対応などの検討を進めていくことにしている。中央教育審議会が昨年十二月十七日に行った全私学連合からの意見聴取では、全私学連合の清成忠男・私学教育振興基本問題検討委員会委員長(法政大学総長)が、「(株式会社の教育参入は)望ましい問題ではない。学校法人(制度)が参入規制をしていることはなく、今の制度で特に問題はない」と表明していた。
 この問題を所管する文部科学省は、株式会社の教育参入は利益第一主義に陥る恐れがあるなどと反対の姿勢を続けているが、政府の総合規制改革会議は産業の活性化などを目指し、株式会社等による学校経営の解禁を強く求めており、同会議が昨年十二月十二日にまとめた「規制改革の推進に関する第二次答申」の中では、「会計制度などによる情報開示制度、第三者評価による質の担保およびセーフティーネットの整備等を前提に、教育の公共性、安定性、継続性の確保に留意しつつ、特に大学院レベルの社会人のための職業実務教育等の分野について、その在り方を検討すべきである」と提言、平成十五年度中に検討し、結論を出すとしている。
 こうした状況の中で全国高等学校長協会の意見書が提出されたもので、意見書の中では、「教育への投資は、私企業の利益を目的としてなされるものではなく、その受益者は教育を受ける児童・生徒・学生と、やがて彼らの一人ひとりがその役割を果たすことになる社会であると考える。つまり仮に利潤があがっても、それは投資家に返戻するのではなく、未来社会のために再投資されるべきもの」とし、学校法人の設立条件が緩和される方向にある現在、株式会社による直接の学校経営の必要性、可能性については大きな疑問があると指摘している。
 ただし特定分野における知識・技能の習得や体験的学習に対して、学校がその主体的な教育計画の下、民間企業や地域の教育、文化機関等との連携・協力による補完的な教育サービスの提供を受け、学校教育の質的向上を図ることは、望ましいとしている。
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