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記事2003年1月23日 1878号 (2面) 
中教審、今後の教育の在り方で野依教授見解表明 国際水準の大学院へ
能力主義へ転換必要
教員の教育能力と学生の意欲向上
【基本問題部会】

 教育基本法の見直しと教育振興基本計画の検討を続けている中央教育審議会の基本問題部会(部会長=鳥居泰彦・日本私立学校振興・共済事業団理事長)は、一月十五日、都内で第二十一回会合を開き、ノーベル賞受賞者の野依良治・名古屋大学教授から今後の教育の在り方についての考えを聴取した。
 野依教授は、自身の様々なエピソードを披露しながら子供の心に火をともす教育の大切さやリーダー育成の遅れなどを指摘、また右肩上がりの経済成長、量的拡大の時代が終わり質向上の時代を迎えていること、何事でも質の向上を怠れば劣化は免れないことを指摘し教育充実への一層の努力の必要性を強調した。
 このなかで野依教授は、人生とは、(1)「ヒト」としての生命維持であり、また(2)「人間」としての自己実現で、自己と他との関係については、人間は他(人や自然環境など)と対峙あるいは順応して生きていくもので、そう考えると、今、子供たちを取り巻く環境が劣悪な状況となっていること、あこがれ、感動、志が教育にとって大切で、それらは何かのきっかけで生まれるものとし、自らの体験を紹介しながら、子供の心に火をともす教育の大切さ、その中では教師が重要な存在であることを強調した。
 また国民の理科離れに関しては、化学が3K(汚い・危険・きつい)といわれていること、生徒や学生の学力が低下していること、理科の教師の科学リテラシーが欠如していること、教科書検定などが原因とした。
 高等教育に関しては、学部教育は国内水準でもよいが、大学院に関しては国際水準を満たすことが必要で、そのためには教員の格段の教育能力の向上、学生の学力と意欲の向上、業績主義から能力主義への転換が重要と指摘した。さらに自然科学の研究は新たな問題をつくり、それを解くことで、上から降ってくる問題を解くことに汲々としていてはだめだとし、評価に関しても思想、権威を持ってもっと謙虚に行うよう求めた。
 意見聴取の後は、昨年十一月三十日の東京会場を皮切りに全国五会場で実施された「一日中央教育審議会」(公聴会)の実施状況が文部科学省より報告された。それによると公聴会では、高校教師、医師、主婦、会社員、大学生ら様々な職種の国民四十六人(応募者数は三百五人)が意見発表し、傍聴者は千二百四十五人(応募者数二千五百五十七人)を数えたこと、発表された意見の概要などが報告された。公聴会での意見について鳥居会長は、郷土や国を愛する心や公共心、男女共同参画社会などが重点的に取り上げられていたこと、とりわけ家庭教育に関しては、考えていたよりも強い反応が寄せられたこと、教育現場の体験の中から出された話については興味深く耳を傾けたことなどを明らかにした。
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